ー裁きへの秒読み−2
・・・!ボザーン!!ドカーン!!ズァババーン!!・・・日本領海内太平洋上6○Km付近。
異様な戦場と化していた。
大島を背に何百という戦艦から弾幕、魚雷、ミサイルの雨。しかし、その全てが対象に当たる寸前で起爆。
爆炎を起こしながらも全く影響を与えていないのである。・・・・
「はっはっはっは・・・」 「ふふっふふふ・・・」
その攻撃対象達は笑っていた・・・。その笑い声とは明らかに違う笑い声も聞こえている・・・。
「へへぇ・・・えへへへ・・・」 「・・・ゆ、夢だ・・・こりゃぁ、夢だ・・・」
対象の一人が立っている戦闘機を箒状に繋げたような物体から聞こえてくる常軌を逸した声、そして・・・・・・
タ――ン!!!海面上に爆炎と轟音の中、とても軽く、そして響く音が男の耳に届いた。
ガバッ
「誰だ!!!どうしたぁ!!!」
「おっ!一人目か?」 「ふうん。しぶとかったですね」
「どうしたんだ!!なにがあった!!」
「そいつこそしぶといな、はは」 「全く・・・まだ正気みたいで・・・」
「やい!おまえら!今の音は!何の音だ!」
問い掛けた男はコックピットの中で外の二人に怒鳴る。
顔を見合す海面上の男と、怒鳴った男の機体に立つ男。しれっと機体に立つ男が言う
「想像通りですよ。あなたから後ろ3番目の人が自殺したんです・・・。」
「!!!」
「まっ!当然か。実際この爆炎のなか、もう何百回と死んでるはずだしな!!ははは」
「いやはや、残念な事を・・・あとでいくらでも死なせてあげたものを・・・」
そして、その一人をきっかけに、 タ―――ン・・・タタ―――ン・・・
正気を保っている男の背後から銃声の連発が聞こえた・・・。
・・・仲間が死んでゆく・・・。男の意識も徐々に崩壊していく・・・その時だった、
『隊長・・・た、隊長・・もう自分もだ、駄目です。駄目です!!』
「!!!」
男の意識を一瞬にして引き戻した。それは訓練中よく耳にした男の泣き言だった。その途端。
「やかましい!!!!!黙れ!クズ野郎!ディック!おめぇはそれしか言えんのか?!
軍人はなぁ、自分から絶望しちゃいけねぇんだ!!」
「!」 「!」
機体に立つ男はそのコックピットの中をまじまじと見つめた・・・。
『こいつ・・・・たいした心を持っている・・・この絶望的な中、自殺するしかない状況下で部下の一言で蘇るとは・・・』
男の見つめるコックピットの中、目に力を取り戻した男。途端。 バスン!!
「!!」 「!!」
コックピットカバーが勢いよく打ちあがった事に男たちは驚いて、上がったカバーに気をとられた瞬間、
ガバ!! バゴバゴォ――ン!!!
二発の銃声が爆炎と共に起こった。・・・機体に立っていた男はその一発をうけて吹っ飛んだ。もう一人の核弾頭を担いだ男も一発を受けて海面下へと消えていく。核弾頭もまた沈んでゆく・・・。
コックピットに立つ男・・・重そうな銃をおろし、虚を見つめている。
「へ・・・へへ・・・ザマぁ見ろ!・・・なぁ、ディック・・・。ディック?!・・ディ・・・。」
男はそのままコックピットを抜け出し機体を歩き、後ろのディックのであろう機体を見て・・・絶句した・・・。
そこにはコックピットカバーの側面が真っ赤になったディックのメット、を被った男が物言わず、ただ座っていた。
それをまえに男は立ち尽くした・・・。
「・・・やるじゃないですか。」
「!!」
真後ろから聞こえた声。振り向けない男。
「お忘れですか?化け物ですよ?我々は、ね?」
コツコツ・・・機体を歩く足音。
「もちろん、彼も無事、ですがね。マグナムっていうんですか?10ミリ以上の弾丸を受けたのははじめてですよ・・・
彼もそこに面食らってました。お返しがしたいといってたんですがね、仕事中ということをお互いコロッとわすれてました。
はは。あなたの一発で目が覚めましたよ。その点を差し引いても感謝したいくらいです。」
男は化け物の言葉を無視しながら歩数で距離を測っていた。
『ここだ!』
その刹那!右足を軸に反転し銃を構えようとした時!
ズバァ!!
銃を持っていた利き腕だろう左腕を肩口から切り裂かれた。銃弾を受けた男は差し出した左手の指先から糸のように細い光を出していた。
切った正体はそれかもしれない。
「・・・ぐあああ!!!」
「凄い人ですね・・・。近づきながら恐怖することなく反撃しようとしてたとは・・・」
ゴッゴロゴロゴロ・・・ボチャン・・・。
硬直していたのか銃を握ったままの左腕が機体から転がり落ちてしまった。二人はそれを見届けていた。
腕のない男も激痛のなかであろうも顔色一つ変えず・・・。
しかしその時からか、化け物の「心」に変化が訪れようとしていた。