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大聖堂、光る

トリノに聖ヨハネ大聖堂というところがある。

そこにはイエス・キリストが十字架刑で没したあとその遺体を包んだ布

「聖骸布」が保管されている。

それは平和な世界の中厳重にかつ安全に保管され、時に信奉者のために

公開され信仰の象徴とされていた。そう、平和なまでは・・・。


しかし平和は終わりを告げた。星の意志によって裁きが下った世界、

様々な国が総力を挙げ裁きにより生み出された生物との戦いを

繰り広げていた。

国の保有する軍隊、自衛隊等、各国政府の機能段階で出た命令を最速で

行動しても悪魔たちの進行は着々と毒が広がるように

その国々を蝕んでいった。

食欲、殺戮欲の強い猛獣にも似た姿をしたものや人のような姿をした悪魔は

目先に映った人間にただ力に任せて襲った。悪魔たちの出処は主要五カ国の

五都市で起こった核爆発による爆心地から出てきていた。

かつて星の意思といった男は太平洋上にオーストラリヤ大陸ほどの大陸を

突如として出現させた。そこからも悪魔は出てきていたが悪魔は

その爆発のあった都市の中心からも出てきていたのであった。


イタリアはトリノ。この街にも悪魔の手は忍び寄っていた。

イギリスで起きた核爆発事件。その騒動冷めやらぬうちに

今まで見たこともないような、伝説上の獣や悪魔が目の前にやってきては

いともたやすく人の体を切り裂き、噛み砕き齧り付く。

悲鳴は混乱を呼び抗おうとも力の差は明らか。国からの軍隊が来るまでの

犠牲者は路上に血の海ができるほどだった。その軍隊を前線に

民間のあいだにも立ち向かおうという姿勢が生まれつつも

その情勢は決していい訳ではなかった・・・。


場所は変わって地中海に面した海岸線道路の際、テトラポッドの間で

全裸の男は白いコートを着た両目を閉じた男に今まさに

突き殺されそうになっていた。

「やめなさい!クルースニク!十字の士よ!!」

背後から少年の大きな女性のような声にため息をつき

引き絞っていた刀を持った腕をおろした。

「セラフよ、何故に止められるのか?この男はあなたの力を利用して

現世に逃れ今サタンの口からもいやしくも逃れようとしている」

「そこから逃がしたのは私です。我らが主イエス様よりの命です」

そこで初めてクルースニクは驚いた表情で少年に振り向いた。しかし

未だ男の両目は閉じている。

「それは本当ですか?なぜそのような・・・」

「私にもわかりません、ですがこのユダという男こそあの星の意志に

対することができる唯一の可能性。主はそうおっしゃっていました」

クルースニクは再び振り返る。すると

「う、うう・・・ん」

全裸の男はとうとう腕に力を入れ体を起こし始めた。

「ユダ!!」

少年は明るい表情を浮かべた途端体全体が光りだす。すると

光が上半身だけになるとその光がまるで吸い込まれるように

ユダの左腕にうつった。セラフが少年から離れたのである。

少年は動かない。が寝息が聞こえていた。

『セラフの言うことは正しいだろう。魔界からこちらに来る前に

天界が星の意志なる男に隔離されたと聞いた。その後我々の意識に

誰かわからぬ重い声で「人の世に魔界と同じ大気を施した。

魔力ある者は好きにするがいい。魔の存在を人間に思い知らせてやれ」

という声が聞こえ、その通り体の具現化はもちろん。

好きにいろいろできるようになっていた。その後色々聞くに

人を根絶やしにしろという命令をくだされた者、好きに現世で暴れる者、

そして、地獄から逃げたユダを捕まえる者。と情報を得た。

俺としては十字を背負う者として主、イエスを裏切ったこの男を再び

サタンの口に八つ裂きにして戻してやるつもりだったが・・・」

「こ、ここは・・・?あ、あの・・・あなたは?」

ゆっくり顔を起こすユダ。目の前の男を見つけ声をかけてきた。

振り返るクルースニク。だがそれでも目を閉じている。

「せっかくだ。聞きたいことを聞かせてもらおう・・・」

「?」

ユダは膝を立てながら体を座る姿勢に変える。

あたりを渡す。見たこともない石でできたもの。海の匂いに砂の感触。

先に見える少年の着ている服の構造がわからない。場所も知らない。

そもそも自分はどうしてここに?自分はどうしていたのか?

様々なことを考えていると

「お前はイスカリオテのユダで間違いないな?」

目の前の男は凄みのある口調でユダに問いかけた。

「イスカリオテのユダ・・・そう私はユダ」

繰り返した言葉に自分の納得する記憶を見つけ

自分に言い聞かすように繰り返した。

「今はお前が生きた時代より2000年の時が経っている」

「2000年!?どういうことですか?なぜそんな・・・それにここは」

「お前が知る必要はない。それより質問に答えろ」

男の凄みある怒声が怖いわけではない。ユダは今を理解する手段として

流れに逆らわない方法を見出した。

「お前が人生を終わる前、お前は最愛の師を裏切った。それはなぜだ?」

「?師を・・・裏切った・・・?」

「お前の師であったわれらが主、イエス・キリストのことだ!!」

「・・・主・・・?」

一瞬、たった一瞬だがユダの表情に力が入った。

あまりの微妙さにクルースニクは気づかなかった。

「裏切った相手にどれほどの愛を注がれようと

所詮そういう目で見ていたのか?我らが神の子イエスに

敬意も持てないのか!愚劣な罪人め!」

「神の子・・・?それは話からして我が師イエスの事を言っているのか?」

ユダはここで膝をたて初めて立ち上がった。

今まで寝ていたこともあるのだろう。

立ち上がってふらついた。が持ち直した。

クルースニクと対峙したユダ。内心驚いたのはクルースニクの方だった。

『・・・空気が変わった。この男を取り巻く雰囲気、なんだ?

天界の者の持つ魔力・・・ああセラフの・・・いや!セラフの意識は

感じてこない!寝ているのか?ということはこの力はコイツの・・・。

どういうことだ?こいつは主イエスを十字架にかけ自分も地獄に落とされ

長きに渡り魔王の口で永劫の苦しみを受けていたはず。

それがなぜ・・・?』クルースニクの思考は長くはなかったがそれを

遮るようにユダは声を大きく出した。

「人と話す時は目を見て話しなさい!!」

あまりの正論さに外側から声が漏れた。恐る恐るも覗いていた大人たちだ。

しばらくして嫌な気配がなくなり危険を警戒しながらも近づいてきていた。

その声にクルースニクも赤面し目を開けることにした。

青い透き通るような瞳だ。

「あなたの言葉に自分を思い出しました。忌まわしきその後も少し、

私はユダ。かつて師イエス・キリストと神と人への愛を説く旅を

していたものです」

「その師をなぜ裏切ったのか?私はそれが聞きたいのだ」

「裏切った?私はそれがわからない」

「お前がイエスを官憲に売り渡したのであろう!!

その後自責の念に耐え兼ねてお前もその身を滅ぼした。違うか?」

「・・・なるほど。周りの方々の衣、あなたの衣、知らない建物、

2000年という年月がどれほどかはわかりませんが私の知らない世界だ

というのはわかりました。人々は長きに繁栄を続けているのですね」

「質問に答えろ!!なぜ裏切った!!」

「答えるとしたら・・・私は裏切ってはいない」

「どういうことだ?地獄に落とされた分際で自己弁護か?」

「私は私の意味を成しただけです!」

「裏切ることをか!?愚劣極まりない男だ!!」

「私はイエスの弟子、イエスの福音を守る者」

「自分の師を裏切ることがか!?」

「違う!!」

「イエスの説く愛は神への、人への愛。神を恐れず愛するという崇高な

愛です。人が神への愛を語ることがどれほど尊いことかおわかりか?」

「その崇高な師を官憲に売り渡すことがお前の福音を守ること

だったというのか?詭弁すぎだな!」

「私も辛かった!しかしそれ以上に・・・」

「殺したのはお前だ!」

「人間です!!」

ゴオ!

言い返すユダ。その声と同時にユダから凄まじい圧力の魔力が

あたりに吹きすさんだ!

草木を揺らすほどの圧力ながらなにかに破壊が及ぶことはなく突風のように

砂を舞い上げる程度だがその風は暖かく爽やかささえ感じるものだった。


その突風とほぼ同時刻、イタリアはトリノ。

軍の動きも膠着し街も疲弊し始め人の心も荒み始めた。

悪魔に感化されたのか、環境が人をそうさせたのか、避難所となっていた

聖ヨハネ大聖堂周辺でも人が悪魔になりはじめていた。

沈黙深い大聖堂の奥、一人の女性が今まさに襲われていた。

まるで誰もいないような聖堂内・・・女性の叫びだけが響いていた。

「いや、いやああ!」

「へへ、へへへ!どんなに騒ごうが誰も来ねぇさ!ここらの連中は

みんな死んじまった!俺とお前しかいねぇ!好きにやろうぜぇ!」

「ま、まだ生きてる!父さん母さんがきっと!」

「死んでるに決まってんだろ!俺が殺したんだからよぉ!!」

「え・・・?」

「へひゃひゃひゃひゃ!怖がるフリして避難して背後から乱れ撃ちだ!

楽しかったぜぇ!無防備の背中を何十人と蜂の巣だ!

逃げた奴も掛かってきたのも皆殺しよぉ!そのあとでお前を見つけて

一緒に避難して・・・今って訳だ!」

「そんな・・・そんな事って・・・ぅうぇぇ」

「ぃい~い顔するじゃねぇか~!さぁ楽しもうぜぇ~!

飽きたら親のとこに確実に連れてってやるからなぁ~!

生きながら食ってやるぜぇ!!ひゃひゃひゃひゃひゃ」

「い、いやああああああああああああ!!」

絶叫がこだました瞬間、二人のいた通路行き止まりの重要機密物である

「聖骸布」を保管している部屋から扉の隙間を一筋の光が漏れた。

その光は刃のようにちょうどその直線上にいた男の体を焼き切ったのだ。

女性はカスリ傷や打撲を負ってはいたが重大な怪我をする事は無く

事無きを得た。

「か、神様・・・」

その光に触れてしまってはいた女性だったがその光に暖かさを

感じるだけだった。その光の中で女性の体は自然と祈りの姿を

形どっていた。光はどんどん強くなり建物の壁など関係ないほど強くなる。

魔力の光なのか建物を透過するように祈る女性はおろかすべてを

光に包み込んだ。ユダの叫びの風とほぼ同時に起きた聖骸布からの

大聖堂を包んだ光、因果はわからない、しかし、

全てはここから始まろうとしていた。


お待たせしました。続きです。ここからかなり生々しく

宗教臭くなります。が自分はあくまでフィクションかつ

自分の発想に基づいて作っていくつもりです。

矛盾や違和感もあるとは思いますがどうか温かい目で

読んでいただける方はよろしくお願いします。


ユダの真意は何なのか?聖骸布とのつながりは?

その続きは次で!ではまた ノシ

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