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目覚かける男

「ぎゃああああああ!!」けたたましい叫びが響き渡る。

あまりの大きさに数本のテトラポットにヒビが入る。

獣の爪が少年に刺さる瞬間。なんと少年は突然その先端の指に

爪を回避しながら抱きついてきた。

しがみつかれた瞬間、少年の体がひときわ光り輝き、

獣の指はいきなり焼け始めた。

ユダを持ち上げその高さの少年をつかもうとした獣の高さは

周りの大人たち、道路の祖父たちも見えている。

道路の山側の森の中の気配も・・・。

火傷にたまらずユダを離し少年のしがみついている手を

必死に振り回し離そうとする。

獣は周囲のテトラポットに目を向けた。体を閉じるように振りかぶり、

少年付きの手をテトラポットに叩きつけようと振り抜いた。

しかし少年はその瞬間一気にしたに転がりおりた。

少年の体は未だに強烈な光を発している。

瞬間瞬間でしか発しなかった光を少年は長く、強く発している。

持ち上げられた際に見た少年が光る様、その光がテトラポットの影から

漏れているのを大人たちは心配そうに覗き込み・・・。

「タ、タランくん?」

「くるな!まだいる!」

大人たちの誰かがかけた声を少年は叫んで止めた。

その声は少年の声と女性のような声が重なって聞こえた。

少年の声の違和感に気づいたのかどうかは分からないくらい

ビクビクしながら後ずさる大人たち。

光る少年の視線は腕を叩きつけその痛みなのか光での火傷の痛みなのか

手首を持ちながら片膝をついて悶えてる獣に向けられていた。

「ぐぅおおおおおおおぁぁああああああ。ガ、ガキ・・・

の中になんでお前なんかが・・・。いや、ユダの中にお前がいた。

ってことなのか・・・?」

「この少年の心が私を引っ張ってくれた・・・。

主、イエスの教徒なのも幸いしたのかもしれない。

この少年の心は居心地がいい。

ユダを守りたいという心に引っ張られこの少年の体に入ったのだ」

「天使、しかもかなり上位級だな。

しかもキリスト教圏のか・・・。

なぜそんな天使がイエスを裏切った男の中に入っていたのだ?

くくく、お前も裏切ったのか?」

「そんなわけ無いだろう!なりゆき。とだけ言っておく」

問答のさなか、立ち位置はユダ―獣―少年(天使)となっている。

天使は獣の先のユダが視界に入っていたことでユダの動きに気づいた。

「・・・う、うう・・・」

横たわる全裸の男の体が呻きと共に動いたのだ。

『動いた!ユダ!』

少年の表情の変化と獣の聴覚が捉えたかすかな後方のうめき声に

獣もユダに気づいた。そして

「ひっひっひ・・・ともあれもうお前はユダから離れた!

ということはユダはただの全裸な人間だ!

光を持つことはおろか抵抗すらねぇ!

ふん、まぁあった所でどうってことないがな。

天界隔離の話は聞いてるぜ。つまりお前はどこにも行けねぇんだ。

何を迷ってあんなのの中にいたのか知らねぇが

人間の中に入るのって天使ですら大変なんだろ?

威光を保つのもそろそろ限界だろう?

ユダを食ったらあとでガキとセットで食ってやるよ!」

そう言うと獣は完全に少年の前に立ちふさがり、

ユダに急旋回して振り向き後ろ足で砂を巻き上げた。

海岸道路沿いのテトラポット設置用の砂浜とは言え砂浜である。

大量の砂の幕が少年に襲い掛かる。

「しまった!ぶ、」

とっさに身構え、かかる砂や充満する砂埃に身を守るだけで手一杯の少年。

ユダはおろか獣の姿も確認できなくなる。

『このままではユダが・・・!』

天使の心に焦りが沸き起こった瞬間、

その直後に天使の背中に強烈な殺意の混じった妖気が突き刺さった。

物理的に射抜かれたかのような感覚に襲われたのは天使だけじゃない。

むしろ、その殺意は・・・

「な、なんだ?・・・あ、ぎゃぼ」

ユダにあと数センチまで迫った獣は差し向けた爪をピタっと止めて、

天使ではない高さから自分にめがけて刺してくる

殺意に反応して振り向いた。方向は天使のいる更に後方。

道路を越え山間部の生い茂る森の中。殺意の主の姿を確認した瞬間。

獣の視界は白い刃のようなものが目の前に広がり・・・

それが獣の見た最後の風景となった。

キュン!・・・ズドーン!!

天使の頭上に甲高い通過音が響いた瞬間、目の前の砂埃が一気に晴れた。

晴れた砂埃の先に獣の巨大な体躯は確認できなかった。

その残骸であろう、右膝、左膝からそれぞれ下を残して。

強烈な破壊の衝撃であったにもかかわらず

周りの波、砂浜、テトラポットは

静かに風や波に流されるくらいに動いていただけだった。

ゴクッ・・・

天使が息を飲みこんだ音。視線の先、獣の残骸の先、

倒れ込んでまだ目を開けないユダの首筋数センチに

日本刀のような片刃だが直刀で、鍔というより手を保護する部分のついた

ブレードのような武器が砂浜に突き刺さっていた。

「ユダ!!」

少年は発していた光を弱くしていきながら

危うく攻撃の巻き添えをくう所だったユダに駆け寄る。が、

ユダに駆け寄り膝をつこうとした途端、ドタっと転んでしまった。

「う・・・く・・・力が」

「人間の中に意識が二つ入っているからです。

その子供の意識が元に戻りたがっているのと、

あなた自身、力を使いすぎたせいですよ。セラフ様」

ふいに声をかけられた。が周りの大人たちはまだ近づいていない。

倒れた少年の中の天使はその声に納得しながら、

となりにまで近づいてきたその声の主の顔を見ようと頭を上げた。

「直接狙ったつもりだったんですがね、外してしまってましたか・・・」

声の主は獣の残骸を通り過ぎユダの下までやってくると、

そばの武器に手を伸ばした。

「外した?おかげで助かりましたが獣を消滅させたではないですか・・・」

と助かった上での感謝と言葉の真意を聞こうとした少年の表情が固まった。

『こ、この魔族は・・・よりによって彼がここに・・・!』

「ユダの体からあなた様が分離する機会をうかがってはいたんですが

まさか獣が邪魔で外してしまうとは、まだまだ修行が足りないようです。

ともあれ先に片付けましょうかね?あなた様の件は

そのあとでよろしいですか?」

「な、なぁクルースニクよ。片付けるとはまさか・・・?」

「ええ、我らが主、イエスキリストを裏切ったこの男を

再び地獄に送り返すんですよ」

剣を振りかざし少年の方には一切顔を向けず

表情を変えることなくクルースニクと呼ばれた男は冷淡に応えた。

ユダはまだ動かない・・・周囲一連の騒ぎの原因は

その騒ぎを連鎖させながら目覚めの時をまだ待っている・・・。

久々の更新です。遅くなりました。ユダまーだ目覚めません!いつ起きるんですかね?自分でもわからなくなってきた。でもそろそろ起きますよ!きっと。多分。

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