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裁きの幕開け 2

その日のその時、世界の5つの都市で同じ瞬間、同じような光に包まれた。

日本の信軸、アメリカのヌーヨーク、イギリスロンゾン。オーストラリアシロニー。

ドイツのフランクリンフルト。それぞれの場所には信軸にあった核弾頭とほぼ同じ型のものがあり、

それを持ってきた人(?)もろとも爆発した。ということである。場所によっては夜。

その光はひときわ眩しかったろう。


凄まじい揺れはスミスのいる海面にも起こった。それは今、スミスと対峙している光る男の

行動によって起こったものと判断するに十分な現象だった。

スミス「何をした!お前!」

男「さっきも言ったろう。裁きの余興。前準備。といったほうがいいか」

スミス「だから何をしたかと聞いているんだ!・・・うっ」

問いただすスミスだがその直後恐ろしい程の悪寒に襲われる。

男はスミスから距離をとっている。10m離れた今の距離くらいからスミスの体は

自由を取り戻していた。男を見上げたスミスは一瞬その神々しく輝く男に息を飲んだ。が、

直前の『イカれた男』という認識を思い出しファイティングポーズをとり叫んだ。

スミス「お前がこの悪魔達を連れてきたのか!目的は何だ!」

男「そうだな、しいて言えば・・・裁きの前の余興。かな」・・・というやりとりがあった。


悪寒は激しくなりスミスほどの大柄な男でさえ震えで身を縮めた。

男「お前のような大きな男でも寒さに震えるんだな」

スミス「なんだと!、しかしこの寒気はなんだ・・・?

寒いとは感じないが何かが近づいてくるような・・・」

男は更に離れていく。そこはもう足場はなく海面だがそのまま歩いている。海面は波が激しく

波が波を食いつぶすようなうねりが起きていたが、

男の足元の海面は波そのものが避けているような穏やかさだ。

男「このあたりにしよう。悪魔とその男よ。そろそろお互いの目にも慣れたろう。

私の後ろに何があったか分かる頃じゃないか?」

スミスは男の声に目を意識した。するとさっきまで感じなかった違和感があったのを感じた。

無意識に見ていた目に映った光景はなにかしらぼやけていたが次第に視界が開けてきたのだ。

それはメフィストの視力とスミスの視力の差がお互いの適正視力に変わったのを意味していた。

そしてスミスはそのまま男の後ろ・・・に出ているきのこ雲に目が奪われた。その後に直感した。

スミス「あの地上からの雲・・・まさかあの・・・!」

男「そういうことだ。それが、世界の5つの都市で同時に起こった」

スミスは5つの都市と聞いて男に問い詰めようと悪寒に襲われる身を奮い立たせて体を起こす。

スミス「5つの都市?日本以外にも同じようなことがあったというのか!?」

男「そういうことだ。これから裁きの最終段階をはじめる。会話は終わりにしよう」

スミス「待て!お前は何をしようと言うんだ!?お前は何者なんだ!?」

男「悪魔と交わるような男と交わせる最後の会話だ。聞くがいい。私は星野聖。

と名付けられた魂。この星そのものだ。これからこの場所に魔界を降ろす」

スミスの口を借りてメフィストが叫んだ。

「この場所に。ですか!?」

聖「そうだ。せっかく出てきたことと、時間もちょうど頃合だからな」

スミス『なんだ?魔界を降ろす?』口をメフィストに奪われ動かせないので

意識の中でメフィストにスミスが聞いた。

メフィスト「この方は人間への裁きとして我々悪魔をお前達人間の世界に降ろし、人への粛清として

襲うように仕向けられた。その最終局面として世界の5つの都市に核弾頭を持込み、同時に爆破して

その場の人間たちの命を生贄に魔界を降ろそうとしているのだ」

スミス『魔界を降ろしてどうするんだ?

それにあいつ自分で星そのものとか言ってるぞ?本当なのか?』

メフィスト「我々に星がどうのというのは解らない。だが、

この方には絶対に逆らえない。ということだ」

聖は上空を見上げ片手を上に掲げた。

スミスの悪寒の原因がスミスの視界のいろんな方向から近づいてきた。

乳白色の光を帯びた物質には見えない何かがゆらゆら中空を伸びてきていた。

目的地は聖の掲げ上げた手のようだ。それは遠くに見える日本の岸からも伸びていて全部で5本あった。

一本の帯はスミスの真上を通っている。スミスは悪寒に慣れてきていたが、その光の帯を見ながら

その美しさのなかの正体の恐ろしさに息を飲んだ。

スミス「この光・・・要するに核弾頭で死んだ人達の・・・」

聖「そう、魂だ。人口過密量の高い都市を選んだが場所によって夜間だったのが問題だったな。

ついそこからの量は多いが一番遠くからのはそんなに多くない。もっと欲しかったな」

最後の言葉にスミスは怒りを覚えた。その瞬間スミスの体の悪寒は消え、

スミスの体温は急激に上がった。力がみなぎり今までおそれすら感じていた神々しい男に殺意を抱く。

「許せない」スミスはこの言葉を抱くと一足飛びに男に向かって走り出した。

戦闘機の残骸の端を飛び男に飛びかかるように殴りかかるスミス。がその拳が届く前に

バアアァァァ―――ン・・・。ばしゃぁん!

弾丸のような勢いでスミスの拳は男に届きそうだったが届く直前にまるでトラックに

正面からぶつかるようにスミスの体は向かってきた方向に弾きとんだ。

戦闘機を越え海面に落ちそのまま沈んでいく。

聖「ふ、やはり人間か。感情の昂ぶりは急激なものだ。弾いて正しかったな。頭が冷えてればいいが」

沈み続けるスミス。意識は戻っている。体に力が入らないわけではない。考えていた。

スミス『あいつはなんなんだ・・・?何をしようと・・・魔界を降ろす・・・?』

メフィスト『おい!何をしている!溺れ死ぬぞ!魔力を足に集中しろ!海面にたてるイメージを持て!

魔力で接地面の固定化をができる!早く上がるんだ!』

メフィストの言葉で上がる。というわけではないが意を決したようにスミスは体を返し

勢いよくクロールで海面に上がる。上がると海面をまるでプールサイドのように持ち、

体をあげそのまま立った。スミスの目は聖に向いている。聖もスミスを見ている。

スミス「魔界を降ろしてどうするんだ?」

聖「私が死ぬ準備だ・・・」

スミス「お前は星そのものだろう?お前が死んだら星も死ぬんじゃないか?」

聖「そのつもりだ」

スミス「なぜ魔界を降ろすんだ?」

聖「質問が堂々巡りだな。私は生きるべきでなかったという結論を得た。その結論に従い私は私を

終えようと思っている・・・」

スミス「だったら勝手に死ねばいいだろう!そうすれば・・・」

聖「そうすれば確かに地球はそのまま死ぬ。が、私がなぜこの結論に達したかわかるか?

これがその答えなのだ。

スミス「どういうことだ?」

聖「時間の概念は大してわからない。が、少なからず今まで生命が地球にあって、

人間はほかの生命に比べはるかに短い。だがその短い間にこの地球にもたらした害悪に

私は納得ができない」

スミス「なっ!害悪・・・」

聖「無論、人それぞれには確かに直接関係はない。が、幾度となく繰り返される学ばない人間に

私は失望した。私は人の行う害悪の原因を探るために幾度と人になり人と交わってみた。

その都度、人を導き星に生きる生き方を示してきた」

スミス「この事態がなきゃとんだサイコなヤツだ・・・」

聖「・・・それでも学ばない。いくらかその時の教えを残そうという人間はいたが規模が違いすぎる。

人の交わりを増やしてみたが結果は変わらなかった・・・。そして私は人の中にある心の世界に

何かあると考えた。それが魔界だった。人の心が生み出した世界に命とも言うべき存在がいた。

星という物質に生きる人間に直接影響はない。が影響した事に魔界で悪魔たちは成長を続ける。

まるで私の中での人間のようだった。ただ違うのは魔界は人間の欲のように膨らみ続けるのに

私は傷つけられてゆく。そこで思いついたんだ。私から生まれた人間たちが私を殺そうとしている。

人間も自分たちが作り出した魔界に自分たちが傷つけられれば少しは知ることができるのではないか?

と」

スミス「それでか・・・ヒネた子供の論理だな」

聖「身に染みてみるがいい。ヒネたくもなる。だが人が魔界とどう交わるか。

それはさして問題にはしていない。お前たちのようになろうとも。だ」

この言葉はスミスの命を救ったメフィストの事を言っていることをスミスは気づいた。

聖「時間をかけたな。喋りすぎたようだ。とにかくこれが最後だ。魔界をこのまま降ろす」

スミス「魔界が降りたとしても人間がお前を傷つけることには変わりないんだぞ!

無意味じゃないのか!?」

聖「人の欲によって生み出された悪魔達。人になす害悪を人そのものが受ければそれでいい。

その結果きっと人は滅ぶだろう。私がそうなるように。私はそのあとに逝くとする」

スミス「なっ!『スミス!ここから急いで離れるんだ!!急げ!』

聖の言葉に反論しようとした瞬間メフィストが意識に叫んできた。先の会話の途中から既に

光の帯は全て聖の挙げた手の上で巨大な球体をなしていた。その球体も会話の最中に小さくなり

聖の手を包むようなサイズになっていた。そして今の問答の中ですら聖の体は着々と準備を進めていた。

光に包まれた手を支えるようにもう一方の手も上にかざした。その上に火花や電気が迸りはじめる。

そのあたりから強烈な感じをスミスは受けた。「この場にいるのは危険」直感が働く。

スミスは聖にまだ言いたいことがあったが踵を返し日本とは反対方向に全速力で海面を走りはじめた。

聖「手遅れと思うが・・・間に合うといいな」

あっというまに小さくなる影を見ながらつぶやいた聖。顔を上げその両手の間の中空を見つめる。

迸った電気の一筋が中空の空間を切り裂く。その隙間から黒い煙のようなものが湧き出てくる。

煙はすごい勢いで吹き出すように広がり、聖も包まれていった。聖の気配はもうない。

際限なく広がる煙。巨大な塊。そう表せるほど広がる煙。スミスはその煙の下を走っていた。

海面との距離は3mもない。スミスの前方100mほどの先に隙間のような煙と海面の境界が見える。

メフィスト『懐かしい匂いだ。帰ってきた気分だな』

海面を弾丸のように走るスミス。時折波に襲われるが波の起伏は関係ないのか真っ直ぐ走っている。

スミス「これからなにがあるんだ?魔界はどうやって出てくる?」

メフィスト『わからない。が、別に魔界すべてを降ろすというわけではない。魔界は意識の世界。

意識の世界は無限に広がっている。降りてくるのは魔界の一部分だろう』

スミス「島一つってとこか?星っつってもたいしたことないんだな!」

メフィスト『強がりか?気持ちはわかるが目をつけられるようなことは言わんでくれ。

私はまだ死にたくない。』

スミス「へっ俺もだ!でもお前そんな性格だったっけ?ん?何の音だ?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

走りながら息を乱すことなく意識と物理的に会話するスミスの耳に地鳴りのような音が届いてくる。

その音は徐々に大きくなってきた。上からのようだ。スミスは走りながら煙を見上げた。

しかしそこに見えたのは煙ではなく迫り来る地面だった。距離は暗さで正確にはわからないが

100mはない。それがゆっくりと降りてきていた。

スミス「うわあああああああああああああああああああああ!!」

スミスはまっすぐ向き直し速度を上げる。しかし先に見えていた煙と海面の境界線すら

見えなくなっていた。正しく進んでいるのかも怪しかったが幸運にも境界線が見えてきた。

スミス「よし!出れる!」更に足の速さを上げる。がその頃には迫る地面はもう・・・。

バッシャァァァァァァァァ―――――――――ン・・・

波紋の域を超える波濤が降りてきた陸地を包むように上がる。スミスに襲かかった陸地。

規模にすると日本の5倍。形状は異常なほど円く、断崖に囲まれていた。

・・・ブファッ!!

断崖の端から数メートルのあたりに何かが飛び出してきた。スミスだった。

スミス「はあっ!はあっはあっはあ、はあ・・・海だったのを忘れてた・・・助かった・・・!」

接触する直前海に潜りそのまま泳いで切り抜けたようだ。

海面に上がりあぐらをかく。浮いている。というより完全に座っている。

断崖を見つめるスミス。日の沈む時間なのかスミスの左側に夕日が見える。

その夕日に照らされたその断崖は明らかに地球にある土や岩、その類ではないような色をしていた。

スミス「これが魔界・・・?」

メフィスト『この感じ。確かに魔界のものだ。だがどこなのか解らない。陸地を削り取ったのか?』

スミス「・・・これからどうなるんだ?」

メフィスト『解らない。だが命令通りなら悪魔たちは人間たちを襲い始めるはずだ』

スミス「食われたりするのか?」

メフィスト「食いたい奴はな。あの方は我々に「好きにしろ」としか言わなかった』

スミス「・・・好きにした結果がこれか?」

スミスは腕を見ながらメフィストに言うようにつぶやいた。メフィストは黙ってしまった。

スミス「星野聖・・・日本名だったが体格顔つき、どう考えてもアジアンじゃなかった。

星、だからか?星は自分が死のうとしてその前に自分に死のうと思わせた原因の

人類に苦しみを与えようとして魔界をおろした・・・。そして悪魔が人を襲う・・・。

なんか・・・釈然としないな・・・理不尽すぎやしないか?」

メフィスト『何を言っても始まらないさ。もう起こってしまった事なんだ。

魔界が降りたことによって魔力そのものが濃く現出できるようになったようだ』

スミス「そういえばかなり体が楽だな・・・ってもう俺完全に悪魔だな・・・。

あいつはどうなったんだ?」

メフィスト「とっくに気配は消えていたよ。確か時が来るまで寝て待つと言っていた」

スミス「いい身分だな。そのまま寝てればいい。・・・ん?」

メフィスト『どうした?』

スミス「そうだよ!あいつがそのまま寝てれば星は死なないんだよな!

悪魔だってお前みたいなのはいるんだろ!?人も滅びそうにないんじゃないのか?」

メフィスト『まあな、だが魔界の根底にある概念は破滅だ。欲望のままに進み破滅へと向かう。

殺戮と破壊、その世界の中、人の結末はやはり・・・』

スミス「・・・一旦どうにかして戻ろう。軍が生きてれば休みをもらって家に帰る!

・・・すぐ帰れそうだけどな」

メフィスト『好きにするがいい。私はもう何もできない。見せてもらうぞ。悪魔の体で

人のまま生きれるかどうかを!』

スミス「俺は人を諦めないぞ!お前にもらった命。あいつの考えには従えない!」

スミスは立ち上がると断崖を背に向かっていた先を走り始めた。

魔界の断崖に波濤がおこる。その上の方は暗雲に包まれ陸地が見えない。だがその中、

断崖から離れるスミスの影を見つめる何かの影が、スミスの見えなくなった先を見ながら

密かに口の端を曲げていた。

とうとう魔界は人の世に降りてきてしまった。裁きは始まったばかりである。

続きです。国名はそのままですが都市の名を変えてあります。

フィクションなんでご了承ください。

なんにせよ。ヒネた話になりますがこんな流れで進みます。

ユダはもうちょい先。

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