月人(つきびと)(勇者サイド)
コジロウ「おお、さすがデカイだけあって、凄い迫力だ、まさしくお前は、悪魔だ!!」
コジロウは、壁に掛けてある1メートル程の長剣をとり、鞘をとって、刀を抜いた。
コジロウ「ツバメの舞!!」
コジロウは、ケンイチの胴体辺りをめがけて、刀を振り、ツバメの斬撃を飛ばした。ツバメの斬撃は、ケンイチの体に当たる少し手前で、足めがけて、フォークボールのように落ちたが、ケンイチはそれを三日月刀で弾いた。
コジロウ「ほう。では、これはどうかな、ツバメの巣立ち!!」
コジロウは、またもやケンイチの胴体辺りをめがけて、刀を振り、ツバメの斬撃を数体飛ばした。
ケンイチ「心眼剣!!」
ケンイチは目をつぶり、微妙に変化しながら飛んでくるツバメの斬撃を、全て弾いた。弾かれたツバメの斬撃は、イタンポの壁に吸収された。
コジロウは、目の前のゴリラが、一瞬、人間の頃のケンイチに見えた。
コジロウ(人間だけど、こいつは魔王って呼ばれてたなあ、確か。)
コジロウ「OK、お前はケンイチだ。」
それからケンイチは、自分の今までの経緯と、光の味噌汁がいる理由を、コジロウに簡単に述べた。
コジロウ「まずは、光の味噌汁だが、とりあえず朝まで待て。朝になったら、腐るほどやるから。それから、ジムで体を鍛えすぎて、ゴリラになったというのは、月人の遺伝子の突然変異かなんかだろ、たぶん。例でいうと、女の人が海で溺れ死んだと思ったら、人魚になっていたとか、どこかの国の王子が敵に追い詰められて、崖から飛び降りたら、ペガサスになって空を飛んだとか。で、その人達も、満月を見た夜だけ、元の人間の姿に戻れるという話を聞いたことがある。お前もまさしくそれだよ。この世界の地球上の生物は、月からやって来たらしいからな、誰もがそうなる可能性がある。」
ケンイチとコジロウが、剣道場の中央辺りで座って話し込んでいると、羽根アリバイクのブーンという羽根の音が聞こえ、コバヤシが、片足を少し宙に浮かせて、イタンポの杖をつきながら、ミナを背負って剣道場に勝手に入って来た。
コバヤシ「御免下さい、こんばんわ。あ、ケンイチ、ミナさんが熱があるみたいなんだ。」
コジロウ「おいおい、ゴリラの次はパンダかよ、今日は、ファンタジーすぎる夜だぜ。」
ケンイチ「よくここが分かったな、どうしたんだ?お前、足の骨を折ったのか?」
コバヤシ「町の人に、ゴリラを見なかったか?って聞いたら、すぐにここだと教えてくれたよ、足の骨は、そうみたいだ、ミナさんは、ここに着く少し前ぐらいから、調子が悪くなったようだ。」
コジロウ「お前達は、草原を通って来たんだろ、なんか、いい香りの草を匂わなかったか?」
コバヤシ「そういえば、俺は匂わなかったんだが、ミナさんが"いい香り"とか言ってたような。」
コジロウ「それは、草原病だな、稀に虫や鼠を殺して、肥料にするためにいい香りをだす草があってな、まあ、人間が匂いをかいだ場合、風邪に似た症状になり、2.3日寝てれば治るが、一応、救急虫を呼んでおこう、あんたの足も、ついでに見てもらうといい。」
コバヤシ(ついでかよ、俺は骨折しているのについでかよ。)
コジロウ「ムサシ、救急虫を頼む。」
コジロウがそう言うと、小さな緑のおじさん・ムサシが、座っているケンイチの後ろから出て来た。
小さな緑のおじさん・ムサシ「分かった、コジロウ破れたり。俺に頼った時点で、お前の負けだ、剣士なら、自分の足でなんとかしろ。」
コジロウ「ムサシ、ふざけたこと言ってると解約するぞ、早く救急虫を呼べ。」
小さな緑のおじさん・ムサシ「分かった。」
ムサシが消えて、少ししてから、白色で赤い斑点のイタドリハムシが、2匹飛んでやって来た。1匹のイタドリハムシに、2人の救急隊員が乗っていた。救急隊員達は降りてきて、コバヤシとミナをそれぞれのイタドリハムシに乗せて、病院へと急いだ。




