惨敗(キャバクラサイド)
最後に、キミカの元彼、シュンが踊った。シュンは、両手と両足をバタバタ振りながら飛び、着地と同時に体育座りをするという動作を100回繰り返した後、パントマイムで歩き始めた。
シュン(レイコ、見ているか、俺はこの燃え盛る地獄の炎のように、お前のことが好きだ、お前と別れた日の夜、俺の心の中にぽっかりと洞窟ができた、その洞窟の中には、もう一人の俺がいて、体育座りをして泣いていた、だけど、いつまでも泣いている訳にはいかず、もう一人の俺は、心の中にできた、この真っ暗な洞窟をさ迷っているのさ。)
審査員達は、何を表現しているのか分からず、首を傾げた。
レイコ(別れていて良かった。)
キミカ「良かったね、レイコ、別れていて。」
レイコ「分かります?」
キミカ「最初のジャンプ、100回とかしすぎ、しかも長いし。まだ終わらないの?」
レイコ「ですよね。」
シュンは、パントマイムをやめ、大空に向かって両手を広げた、そして、ピタリと動かなくなった。どうやら、これで踊りが終わりらしい。
シュン(レイコ、真っ暗な洞窟に光りが射した、その光はお前だった。だから俺は、お前に向かって歩くのさ、お前という光を求めて。)
レイコ(やっと終わった、長過ぎるわ。)
シュンの踊りが終わるとともに、何人かのエルフ達がトイレから帰って来た。シュンの踊りは、トイレタイムになっていた。
優勝したのは、蛇に食べられる蛇の踊りをした、2番手のアーモンドさん(68歳)だった。アーモンドさんがうつむせになり、足のつま先だけを微かに動かして、食べられる蛇が、徐々に消化されていくという表現が、審査員達の心に響いたらしい。
オサムは、優勝こそ逃したものの、自分の満足がいく踊りができたらしく、上機嫌でキミカのところにやって来た。
オサム「キミカ、どうだった?」
キミカ「なかなか・・・・良かったんじゃない?」
オサム「だろ、なんで俺が優勝じゃないのか分からないよ、ちょっと一緒に、エルフキッチンに野菜ジュースを飲みに行こうぜ。」
キミカ「ごめんなさい、今は、野菜ジュースは飲みたくないの。」
オサム「そうか、じゃあ、ちょっと向こうで、今の踊りを教えてやるよ。」
キミカ「あんな踊り、踊りたくないし。」
キミカは冷たく言い放った。
オサム(この女、レベル100だ、エルフなのにエルフらしさがない、キミカは無理だ、メグミにしよう、メグミもかなり可愛いし、それに優しそうだ、標的チェンジだ!!)
オサム「メグミ、野菜ジュース飲みに行こうぜ。」
メグミ「ごめんなさい、野菜ジュースは飲みたくないし、私もあんな踊り、踊りたくないの、さよなら。」
オサム「な・・・・そうか。」
オサムは、うつむいて去って行った。
オサム「街の女はキツいぜ、クソッちょっと可愛いからって調子にのりやがって!!」
メグミ「キミカさんの真似をしてみました。」
キミカ「ハハハッでも、さよならは酷くない?」
レイコは、うなだれて寂しそうに歩いているシュンを見て、声をかけた。
レイコ「シュン。」
シュン「レイコ。」
レイコ「優勝できなくて、残念だったね。」
シュン「ああ。なあレイコ、俺達もう一度、やり直さないか?俺、やっはりお前のことが好きだ!!」
レイコ「ごめんなさい。」
シュン「そうか、あんな踊りじゃな、みんなのトイレタイムになってたしな。」
レイコ「シュン、あなたはイケメンで性格もよくていい人よ、でも、言いにくいんだけど、シュンの家って貧乏じゃない、私、貧乏には耐えられないの、それに、踊りのセンスもないと思う、あの踊りはないわ、だいたい長過ぎよ。」
シュン「・・・・お前、言いにくいとか言って、けっこうズバズバ言うんだなあ。」
こうして、オサムとシュンは、都会に住むエルフの女達に惨敗したのであった。




