そして朝が来た(キャバクラサイド)
レイコはパチンと指を鳴らした。店では見たことのない若い黒服の男が、オレンジ色のカクテルを持って現れた。
黒服「レイコ様、勝利の宴でございます。」
レイコ「ありがとう。」
レイコは、カクテル・勝利の宴を飲み干し、黒服にカクテルグラスを渡した。黒服は、それを受け取り、風のように去って行った。
レイコ「ゆきちゃん、あなたがキャバ嬢のサラブレッドなら、私はキャバ嬢の神よ、いや、女帝ね、私はね、キャバクラで産まれたの、分かる?キャバクラで私は産声をあげて産まれたのよ。」
カオル「またまた、嘘ばっかり。」
レイコ「私が最初に覚えた言葉は、同伴よ、で、産まれて初めて書いた文字は、色恋営業よ、小学校で、漢字のプリント用紙におもいっきり書いたら、先生が、大変よくできましたってハンコを押してくれたの。分かる?今思えば、あれが、世間が私をキャバ嬢と認めた瞬間よ。」
カオル「ちょっとちょっと、レイコ、脱線しすぎ。」
ヒトミ「フフフッ満月で変身したレイコって、面白いわね。」
ユキ「レイコさん、たち悪すぎ。」
レイコ「ユキちゃん、聞いてる?キャバ嬢はね、愛に餓えたホームレスじゃないといけないの、分かる?そこの新人のみんなも、今のメモするところよ、はい、メモメモメモメモ!!」
体験入店で来ている3人の女子が、慌ててメモを取り始めた。レイコは、そのうちの女子の1人のメモ張を覗き込んだ。
レイコ「ここに一言つけ加えなさい、これが、横綱と小結の差と。」
カオル「ちょっとレイコ、酔いすぎ、あんたもそんなこと書かなくていいの!!」
ヒトミ「フフフッじゃあ、皆さんお先に。ラーメン行こ。」
カオル「ラーメンは、私は無理かもです。」
カオルとヒトミは、レイコを店の外に連れ出し、噴水広場に夜になると現れる、行きつけの屋台に向かって歩き始めた。
カオル「変身したレイコって、背高いのね。」
ヒトミ「あら、ほんと。変わり方が極端ね。」
レイコ「ヒトミさん、結婚しないんですか?」
ヒトミ「うるさいわねえ、人が気にしていることを。」
レイコ「だって、ヒトミさん、もうさ・・・・。」
ヒトミは、レイコの口を抑えた。
ヒトミ「はい、もうこの話はおしまい。はい、屋台に着いたわよ。」
3人は、屋台に並んで座り、レイコとカオルはおでん、ヒトミはラーメンを頼んで食べた。
ヒトミ「毎日、満月だったら、レイコは凄いことになるわね。」
カオル「キャバ嬢としての売り上げは凄いけど、性格が酷すぎ。たぶん、新人の子達も、今日のレイコを見て辞める子が出てきますよ。」
レイコ「そんな根性で、キャバ嬢するなってえの。」
カオル「ほらね。」
ヒトミ「フフフッ」
3人は食べ終わると、魔法使いタクシーを呼んで、それぞれの家まで魔法で送ってもらった。
レイコは、家に着くと、カクテル・勝利の宴が効いたのか、ベッドに入り、すぐ寝てしまった。
朝、目が覚めると、普段通り小柄で、緑の髪の可愛いエルフに戻っていた。
レイコ「ああ、頭が痛い・・・・。」




