ミナとコバヤシ(勇者サイド)
ジョニーが炎の壁を解除すると、長い黒髪に黒渕メガネ、千鳥格子のグレーのベストに白い長袖のブラウス、黒のスカートを履いた女子ミナと、赤のベレー帽、白いTシャツ、緑のズボンを履いたジャイアントパンダのコバヤシが立っていた。
コバヤシ「ようケンイチ、久しぶりだな。絵に描いてやったぜ、ちょっと時間がかかったけど。」
コバヤシは、ヤンキー蛍の大群が倒れている絵を描いた、スケッチブックをケンイチに見せた。
ケンイチ「相変わらず上手いなあ。」
コバヤシは、ケンイチと冒険者学校の同期で、セニョール生活環境事務組合地域風土課だ。ケンイチやセイジと同じく地方公務員で、趣味で画家をしている。コバヤシは、スケッチブックに描いた場所に行ったり、スケッチブックに描いたザコモンスター程度なら倒すことができる。強敵は倒せず、行ったことのない場所を描いても、その場所には行けない。
コバヤシ「火の鳥と闘っているあの着ぐるみを着た奴は、描いても無理だった、あいつは強いみたいだなあ。」
シルビア「あんたは、組合長のとこで働いてたんじゃないのかい?」
シルビアは、OL風の真面目そうなミナに言った。
ミナ「はい、私は5年ぐらい前からここで、働きながら組合長サチコの様子を伺ってました。」
ケンイチ「ミナもシルビアと同じ秘書だ、シルビアが表の秘書なら、ミナは影の秘書といったところだ。コバヤシに伝言を伝えたときに、ナオキチさん(緑の小さなおじさん)から聞いたよ、で、コバヤシをここに連れて来るように頼んだんだ。5年間、辛かっただろう、お疲れさま。」
ミナは、泣きそうになっていた。仕事を覚えながら、サチコの信頼を得てのスパイ活動、かなり精神的にきつかったのだ。
ミナ「それが、私の仕事ですから。」
サチコ「そうか、そういう事だったのか、ミナ。せっかく目をかけてやったのに、このクソアマ・・・・が・・・・。」
冬の鳥の着ぐるみを着たサチコは倒れた。5,6人のコバヤシのスケッチに描かれなかったヤンキー蛍達が、サチコのところに集まり、サチコをうつむせにさせて、チャックを開けた。
女のヤンキー蛍「凄い汗、これはたぶん、脱水症だわ。」
ジョニー「戻ってこい、フェニックス!!」
火の鳥は、卵になって、ジョニーの手のひらに飛び込んだ。
ミナ「魔王様、本物のサチコというか、天狗アリを襲っているサチコは、あそこの谷川の中にいます。」
ケンイチ「なんだって?じゃあ、あの倒れているサチコは?」
ミナ「あのサチコは、白アリの肉で儲けている純一さんに嫉妬して、谷川のサチコに天狗アリを襲うように頼んだ張本人です。谷川のサチコは、外敵から身を守るために、まだまだ若いヤンキー蛍が合体した姿です。天狗アリを襲うときはバラバラになり、個々のヤンキー蛍になるというわけです。」
ケンイチ「てことは、谷川のサチコは、普段は水の中にいるのか?」
ミナ「はい、かなりの巨体ですから、水の中の方が生活しやすいのかもしれません。そろそろ成人になるヤンキー蛍が水から出て、ここの集落に住み始めるというわけです。」
ケンイチ「水の中じゃあ、闘えないから、やはり、アリ塚のところで待ち伏せして、コバヤシのスケッチとジョニーの火の鳥で残滅してもらうか。」
ミナ「そうですね、その方が、みんなもケガしなくてすみそうだし。」
コバヤシ「俺頼みかよ、プレッシャーだなあ、俺、嫌なんだよなあ、頼りにされるの。どっちかってえと、人の後ろを歩くタイプだからなあ。」
ジョニー「同じく。俺もヒーローって柄じゃないし。」
シルビア「おい、パンダにバッタ、てめえら、しばくぞ!!黙って魔王様の言う通りすればいいんだよ。」
コバヤシ「魔王様?」
ジョニー「バッタ?」
ケンイチは、人差し指を口にあて、シルビアに向かってシーッシーッと合図をした。
シルビア「いいからスケッチしろってこと。」
ケンイチ「じゃあ、みんな、純一さんのところに行こう。」
魔力節約のため、ケンイチとシルビア、コバヤシとミナのペアで羽根アリバイクに乗り、ジョニーは1人飛んで、純一のアリ塚コロニーへと向かった。




