ヤンキー蛍とご対面(勇者サイド)
サチコは、50代前半ぐらいのおばさんで、茶色の眼鏡をかけ、帳簿とにらめっこをしていた。
シルビア「サチコさん、こちらが魔王様です。」
サチコ「あ、どうもはじめまして。サチコと言います、魔王様って、その、えっと、そういう感じの方だったんですね、なんか、かなり強そう。」
ケンイチ「ヤンキー共は?」
サチコ「そこの橋を渡ると、ヤンキー達の集落です、行ってみますか?」
ケンイチ「もちろん。」
サチコ「ミナちゃん、ちょっと出てくるから、後お願い。」
ミナ「はい、分かりました。」
ミナは、若手のサブリーダーで、サチコの右腕だ。
組合長サチコの家を出て、ケンイチ達は、サチコの後について少し歩いた。
サチコ「最近の若い人は、言うことを聞かなくて。」
シルビア「いえいえ、みんな、若い頃はそんなもんですよ。」
若いホタル達が何人かでたむろしている、藁葺き屋根の家が何軒もあり、蛍達は横になって話をしたり、音楽を聴いたりしていた。若い蛍達は、上半身は人間で、下半身は芋虫だ。体長は1・7メートル程で、体の色はグレーだ。サチコは、若い蛍達のリーダーのところへ、ケンイチ達を案内した。
サチコ「ミシマ君、魔王様が話があるって。」
髪をリーゼントにして、短ランを来た少し大きいヤンキー蛍が、這って出てきた。
ケンイチ達は、ほふく前進をして来るツッパリを見て笑ってしまった。
ミシマ「てめえら、笑ってんじゃねえぞコラア!!魔王ってのはどいつだ、まさか、そこのゴリラか?」
ケンイチ「ああ、そうだ。」
ミシマ「なんだ?その格好は。これからラジオ体操でもするのか?もう昼だぞ、ラジオ体操の時間はとっくに終わってるんだよバカ野郎!!」
ケンイチは、ピチピチの白のTシャツに、ピチピチの白い短パンなので、これは言われてもしょうがないなあと思ったが、恥ずかしい。
若い蛍達は笑った。シルビア、ジョニー、サチコも少し笑っていて、ケンイチはショックを受けた。
ケンイチ「ちょっと服がなくてな。もう、天狗アリを食うのはやめろ、ちゃんと、お前達用の蟻塚ももらってるんだろ?」
ミシマ「つまんねえんだよ、養殖されてるアリは。俺達は、元々はハンターだからな、俺達は、昆虫人を食べたいんだよ。」
ケンイチ「気持ちは分かるが、お前達が若い天狗アリを食うから、働き手が足りないって、純一さんが嘆いていたぞ。」
ミシマ「あのエロ親父か、パートのおばちゃんを雇えばいいんだよ、今の世の中、昆虫人ばかりだからな、なんなら魔王さんよ、あんたも働きに行きな、こんなところでウロウロしてるんだったらよ。」
若い蛍達は、また笑った。
「そうだ、そうだ、魔王、お前が働け。」
「ゴリラは森へ帰れ!!」
「もっと、魔王らしい格好をしてこい、中途半端な服着るぐらいだったら、裸でいろ!!」
様々なヤジが飛んだ。
ケンイチ「いいだろう、ミシマとか言ったな、俺とタイマンしろ、俺が勝ったら言うことを聞いてもらう、お前が勝ったら、今日からお前が魔王だ、好きにしろ!!」
ミシマ「誰がそんな話乗るか、魔王相手にケンカしたって、勝てるわけないだろ。」
ケンイチは、いきなりミシマの顔を殴った。
ミシマの上半身は後ろに倒れたが、芋虫状の下半身は地面にがっちり定着していて、ミシマの上半身は起き上がりこぼしのように起き上がり、その反動を利用して、ケンイチの腹を殴った。ペシッというショボい音がした。
ケンイチ「なんだそりゃ?」
ミシマの細い腕から繰り出されたのは、蚊に刺されたようなパンチだった。
ケンイチ「ゴリラパンチ、ミドル!!」
ケンイチは、少し強めに腹を殴った。ミシマはふっ飛び、うぅと腹を抑えてうめき声をあげ、横になった。ケンイチは、ミシマを起こし、腹を殴り、ブレーンバスターをくらわした。
ケンイチ「魔王をなめてんじゃねえぞ。」
一同は騒然となった、さらに今度は、ミシマにバックドロップをしようとしたところ、サチコが止めに入った。
サチコ「もう、やめて下さい、後は、私からちゃんと言っておきますから。」
ケンイチ「黙れババア!!」
ケンイチは、サチコをぶん殴った。




