工場見学から蛍の里へ(勇者サイド)
純一「夜までまだ時間があるから、工場見学でもして、時間潰してよ、シルビアちゃんは、僕とデートね。」
シルビア「せっかくですが、工場見学で。」
ケンイチ達は、純一の案内で、まずは巨大白アリに乗り、純一の工場内を見学した。純一のコロニーは、解体の部屋、冷蔵庫、殺菌室、検査室、梱包室があり、ハムを加工して出荷する工場だった。
ジョニー「ここで働くのは、俺にはちょっと無理です。」
ケンイチ「心配するな、俺も無理だ。」
続いて、隣のコロニーの中に入った。このコロニーは、生体検査室、枝肉計量室、冷却室、梱包室、計量室があり、肉を出荷する工場だった。
ジョニー「ここで働くのも、俺には無理です。」
ケンイチ「心配するな、俺も無理だ。」
シルビア「フフフッ大丈夫、2人ともまず採用されないから。」
純一「そうそう、仕事には向き不向きがあるからね。」
ジョニー「おばちゃんは偉大ですね、あんな大きな肉を切ったり、検品して梱包したり。俺ならたぶん、3日で辞めてますね。」
ケンイチ「ジョニー、甘いな、俺なら初日の午前中に辞めるな。」
ジョニー「次生まれ変わるなら、男ならアリの昆虫人がいいなあ。」
ケンイチ「そうだなあ、仕事ができる男って、かっこいいよなあ。」
シルビア「フフフッ今の2人にできる仕事をすればいいじゃない。」
純一「そうそう、働きアリの昆虫人のうち、2割は遊んでいるらしいから、君達はそっち系だろ。」
続いて、巨大白アリを育成するコロニー、巨大白アリのエサ、木材を伐採して運ぶコロニーを見学した。
ジョニー「みんな偉いですね、やっぱり生活のために頑張るんですかね。」
ケンイチ「それもあるが、やっぱり、休みの日に青かんするために、仕事を頑張るんじゃないのか?」
シルビア「魔王様、それを言うなら、好きな人と一緒に過ごしたいからだと思います。」
純一「パートのおばちゃん以外は、みんな3交代で働いてるから、確かにストレスはたまってるはず。まあ、ここはシルビアちゃんの言い方にしとこう。」
好きな人と青かんした直後なら、もうこのまま死んでもいいと思うことはあるだろう、でも、やっぱり、シリモチピカリのヤンキーに食い殺されるのは、誰だって嫌なはず。そこまでは分かるが、じゃあ、その青かんのために命を懸ける俺達は、何なんだ?はっきり言って、バカすぎるだろ。ケンイチは、だんだん純一に腹が立ってきた。
ナオキチ「ケンイチ、コバヤシが夜少し遅くなるそうだ。でも、なるべく早く行くようにするってよ。」
小さな緑のおじさん、ナオキチが、切って並べてある木材の上に現れて立っていた。
ケンイチ「分かった。シルビア、ジョニー、これから、シリモチピカリのところに行ってみようと思うんだが。」
シルビア「そうですね、まだ夜まで時間はあるし、話し合いで済むなら、それがベストです。」
ジョニー「そうしましょう、魔王様。」
純一「こないだ、僕も話し合いに行ったんだけど、組合長のサチコさんも、ヤンキー達が言うことを聞かないって、困っていたよ。」
ケンイチ「なるほど。とりあえず、今から行ってみよう。」
ケンイチ達は、オレンジの森を抜け、谷川に沿って少し山を登り、蛍の里に着いた。蛍の里は、のどかな草原に少し大きな谷川が流れ、茅葺き屋根の家が建ち並び、蛍の昆虫人が、何人か谷川で水を汲んでいた。頭に触覚と、背中に黒い羽根がある以外は人間と同じ容姿だ。蛍の昆虫人は、成人になると、食事は水だけだ。だから、食費にお金がかからないので、働く必要がないわけだが、趣味や服などにお金をかける者は、光を売ってお金を得ている。谷川の水を口の中でモグモグとゆすいで、ガムのように風船にして、そのまま小瓶に吐き出すと、光の玉になって、2週間ほど輝くのだ。部屋に飾る癒しの灯りとして、世界の一部の都市のお土産物売場で、売られている。
ケンイチ達は、谷川で水を汲んでいる蛍の昆虫人に、組合長サチコの家を案内してもらった。サチコの家は、自宅兼職場で、玄関に入ると、"御用の方はこちらへ"という矢印の書いた貼り紙がしてあったので、ケンイチ達は、その矢印の通り進み、部屋の扉を2回ノックした。
シルビア「すいません、グラスランドシティのシルビアと言います、魔王様から話があるので、お連れしました。」
サチコ「魔王様?・・・・・どうぞ。」
中に入ると、事務所になっており、数名の従業員と、オレンジの着物を着て、どっかりと座った女がいた。この着物を着た女が、サチコだった。




