闘いの後(ノーサイド)
街にいる誰もが、倒れている2匹のゴリラを見て、どちらが魔王で、どちらが勇者か分からなかった。
闘っている最中に、魔王が着用していたサングラスと帽子はなくなり、その時点で分からなくなった。セナとセイジも、たぶん、こっちかな?と思いはしたが、自信はなかった。
しかし、魔王は弱っている。どちらが魔王かは分からないが、魔王は確実に弱っている、魔王を倒すなら、今がチャンスだ、そんな空気が街に流れた。
「両方ともやっちまおう。」
街の男の誰かが叫んだ。
「そうしよう、そうしよう。」
「勇者と言っても、ゴリラだしな。」
誰もが口々にそう話し始めた。
セナは、まずいなあと思い、こそこそと人並みを抜けて、キャバクラの隣にある納屋へと向かった。
セイジは、ケンイチに日頃の恨みを晴らすチャンスだと思い、2匹のゴリラ両方ともに蹴りを入れる気満々だった。
そして、街の男の誰かが倒れているゴリラのどちらかに蹴りを入れたのをきっかけに、みんながそれに続き、蹴りを入れ始めた。
「オラオラ!!死ね魔王!!」
街の男達は、2匹の倒れているゴリラに群がり、蹴りを入れるのに夢中になった。
どちらが魔王で、どちらが勇者かなんて、もうどうでもよかった。日頃のストレス解消とばかり、誰もが蹴りを入れ続けた。
セイジも蹴りを入れ、はしゃいでいた。
なんか固いゴムを蹴っているような感じで、誰もが足を痛めた。
どうやら、2匹のゴリラには効いていないようだ。
狩人タカシ「このままじゃラチがあかない。猟銃を口に突っ込んで、頭を吹き飛ばしてやる。」
狩人のタカシが、銃口をどちらかのゴリラの口に突っ込もうとしたとき、
「やめろ、そこまでだ。」
セナが体長5メートル程の三つ首の、真っ黒なケルベロスを連れて現れた。
セナは、納屋に魔王のペット謙ボディガードのケルベロスを待機させており、連れに行っていたのだった。
「うおっ」
狩人タカシは、慌てて銃口をケルベロスの方に向けた。
セナ「そんな銃じゃ、ポチは倒せないからやめておけ。」
はあ?ポチっていうのか、あの魔物は。かわいい名前つけるなよ。もっとあるだろ、ジャガーとか。と、街の誰もが思った。
セナ「ポチ、どっちが魔王様だ?」
「うぅ・・・・。」
2匹のゴリラは、さんざん蹴られて意識を取り戻しつつあった。