治せない習性(勇者サイド)
シルビア「魔王様、とりあえず今日はこれで我慢して下さい。」
シルビアは、一番大きいサイズの白のショートパンツと、白のTシャツを買って持って来た。
ケンイチは、着替えるために食堂のトイレに行った。
ケンイチ「トイレで着替えるなんて、なんか女子高生みたいだなあ。」
服はかなりきつかったが、なんとか着れた。それから、魔王のビルを出て、シルビアの羽根アリバイクの後ろに乗せてもらい、天狗アリの昆虫人がいるオレンジの森へと向かった。ジョニーは、シルビアの荒い運転になんとか食らいつきながら、自分で飛んでいき、なんとかオレンジの森に着いた。オレンジの森の木々はオレンジ色で、300メートル程の茶色の天狗アリのコロニーが、何本か立ち並んでいた。夜になると、天狗アリのコロニーの表面に、シリモチピカリがへばりついて、天狗アリを食べるらしい。シリモチピカリは、蛍の昆虫人が成人になる前の反抗期の奴らだ。シルビアは、巨大白アリの肉を運んでいる、天狗アリの若い男に、社長の純一を呼んでくるように頼んだ。少しその場で待っていると、純一が、先程の若い天狗アリの男に連れられてやって来た。天狗アリの昆虫人は、頭に触覚、背中に羽根アリの羽根がある以外は、人と同じだ。純一は、黒髪で30代後半ぐらいのガッチリした男だが、実は50代で、ブルーのシャツに黄色のズボン、白のスーツを着ている。髪は染めて、若作りが趣味らしい。
純一「はあい、シルビアちゃん、俺と一緒にシリモチピカリを駆除して、それからデートしてほしいんだ。」
シルビア「駆除はいいんですけど、デートはちょっと。」
純一「かたい事いうなよセニョール、美味しい巨大白アリのステーキ奢ってあげるからさ。」
ケンイチ「以前にも似たようなことがあったが。」
純一「ペット?」
シルビア「魔王様です。」
純一「またまた。シルビアちゃん、ゴリラが魔王なわけないじゃない、シルビアちゃん、寂しいならいつでも言ってよ、こんなゴリラなんか飼わずに。」
ケンイチは、もう帰ろかなあ、こんな奴ら、蛍のヤンキーに食べられたらいいと思った。
なんとかシルビアの話で、ゴリラのケンイチが魔王だと理解してもらった。
純一「まあ、ここではなんだから、中に入ってお茶でも。」
ケンイチ達は少し歩き、純一のビルと思われるアリ塚のコロニーの中に入った。中に入ると、かなり大きな白アリに4人は乗り、最上階へと昇って行った。下を見ると、コオロギのおばちゃん達(顔がコオロギで体は人間)やショウリョウバッタのおばちゃん(顔がショウリョウバッタで体は人間)達が、荷物を押して歩いていた。
純一「このコロニーは、巨大白アリの肉を加工したり、パック詰めをする工場でね、若い奴らは、結婚するとすぐ、シリモチピカリに食われるから、最近では、バッタのパートのおばちゃんを雇ってるんだよ、それでも、人手不足なんだけどね。」
シルビア「ジョニー、雇ってもらえば?」
ジョニー「いやあ、ちょっと。」
純一「ジョニーさんは、キリギリスだろ?おばちゃんはともかく、バッタやコオロギの男は長続きしないんだよね、あまり、肉体労働をしたことないみたいだから、かなりきついみたい。アリの男は、長続きする人が多いから、男は、アリの昆虫人を採用するようにしてるんだ。」
ケンイチ「早い話が、若い奴らが、青かんを辞めれば済む話なんだよ。」
純一「そう思って、ラブホも建てたりしたんだけど、若い奴らはすぐ窓から外に出て、翔びながらエッチをしてしまうんだ、若気の至りって奴かな。これはもう習性だから、若い奴らを守るためにも、君達に、シリモチピカリを退治してもらわないとダメなんだよ。」
グラスランドシティは、巨大白アリの肉や、巨大白アリバイク、巨大白アリトラクターなどを世界各国に売って、生計を立てている者が多い。天狗アリは、白アリの飼育もしている。そのため、天狗アリの昆虫人とは、切っても切れない仲なのだ。しかし、天狗アリの青かん好きという性癖のために、シリモチピカリと闘うのはアホらしい。シリモチピカリには、シリモチピカリ専用のアリ塚を何個か与えているのだが、たまに大人になってないヤンキーのシリモチピカリ達が、刺激を求めて、天狗アリのカップルを襲うという事件が発生している。今回は特に酷いため、シルビアが出向くことになった。
4人は、最上階に着き、社長室に入った。
美人秘書の天狗アリが、すぐにお茶と、巨大白アリのステーキを持って来た。巨大白アリのステーキは、かなりおいしく、ついつい簡単に、ケンイチ達は依頼を引き受けてしまった。
純一「僕も手伝いたいんだけど、走光性で、ついつい光に向かっていってしまうから、下からシリモチピカリを弓で、撃ち落とすことにするよ。」
ケンイチ「羽根アリの羽根がほしいんだが、俺でも空に飛べるの、あるかな?」
純一「あるよ、確かに魔王君はでかいけど大丈夫、後で渡すよ。」
ジョニー「魔王君て・・・・。」
純一「シリモチピカリは、だいたい1コロニーに100人ぐらい付くから。」
ケンイチ「100人て、多すぎだろ。しょうがない、アイツを呼ぶか、俺の同期を。」




