満月(キャバクラサイド)
買い物を済ませ、レイコとキミカは、ショッピングモールの中にあるカフェで、軽くお茶をして別れた。別れ際にキミカが、エルフの夏祭り、絶対一緒に行ってねと強調して言うので、思わず、
「うん。」
と返事をしてしまった。キミカは、レイコの1つ先輩で、キミカの後を追うように、レイコはエルフの村を出た。街で暮らし始めてから、キミカに相談したりされたりと、今の自分があるのはキミカのおかげだと思っている。キミカの頼み事だからしょうがない、それに、エルフの村にいるのは1日だけ、長くても2日までだし。と、自分に言い聞かせた。
夜8時、レイコは、グリーンのパステル花柄の、ノースリーブフレアミニドレスを着て、キャバクラにいた。ユキの客が、次から次へと入って来る。ユキは、ホルター風のバストの谷間に穴があいた、ブルーのストレッチミニドレスを着て、気合満点だ。
カオル「レイコ、今月はユキちゃんに負けちゃったね、ヒトミさんもさっき、大関の私が、小結に負けたって、かなり悔しがってたわ、ちなみに私は、塩だって。酷くない?相撲には必要不可欠な塩とか言うのよ。」
レイコ「ハハハハッじゃあ、私は座布団かな。」
カオル「またまた、さすが横綱、ずいぶん謙遜しちゃって。今日のキャバクラは、座布団が舞ってるわよ。」
レイコ「フフフフッうまい!!」
レイコは、何気に窓越しに夜空を見た。今日は、きれいな満月だった。
レイコ「まんげつ・・・・。」
カオル「レイコ、あなた、髪が青色になってるわよ!!」
レイコは、指をパチンと鳴らし、魔法を唱えた。
レイコ「輝け私、夜の神話になれ!!」
どこからともなく、店では見たことがない若い黒服の男が現れて、黒いカクテルを持ってきた。
黒服「レイコ様、ブラックジャスティスでございます。」
レイコは、ブラックジャスティスを飲んだ。
レイコ「ありがとう、咲かせてみせるわ、私という華を!!衣裳チェンジ!!」
レイコの着ているドレスが、黒の前開きのチュールドレスに変わった。
レイコ「咲かせてみせるわ、私という華を!!スターダストブリッジ!!」
夜空に光る吊り橋が架かり、レイコは、窓から出てその橋を歩いて渡り、途中で立ち止まった。
レイコ「街中の男達よ、今すぐ私に会いに来なさい、ハートシャワー!!」
赤い10センチぐらいの大きさのハートが、街中にゆっくりと降り始めた。
レイコ「お金がないなら、借金をしてでも私に会いにきなさい。明日仕事なら、仕事を休めばいい、今、仕事をしているなら、さっさと辞めて、私に会いに来なさい、男ならリスクを恐れないで!!それ以上の何かを、私が与えてあげるわ。」
街中の男達は、今すぐレイコに会いに行こうと思い、家を出た。今から仕事と言って、家を出る者、友人に金を借りて行く者、仕事帰りの人、大金持ちの人、子供、老人等など、男達は、キャバクラ・チョチョリーナを目指した。いつの間にか、店の中は、レイコ指名の客で一杯になった。店の外にも、レイコ目当ての客で行列ができた。店長は客が来すぎて、頭をかかえた。
レイコは、こないだ魔王にケンカで負け、ボロボロにされて元気がない、恥ずかしそうに座っているリームに声をかけた。
レイコ「リームさん、魔王にケンカに負けたからって、落ち込まないで。あなたは、魔王でも勇者でもない、あなたは起業家なの、普通の人の何万倍もお金を稼いでいるんだから、もっと胸を張って、誇りを持ちなさい!!」
リームは元気になり、いつものリームに戻った。
リーム「ありがとう、レイコ。やっぱり、お前はいい女だぜ、いくぜ!!みんな!!今夜は俺の復活記念日だ、今夜はパーティーナイト!!」
リームは、金をばらまいた。
「リームさんが戻った、あの、いつものリームさんが帰って来た!!臨時ボーナスの復活だ!!」
キャバクラの客やキャバ嬢達は、リームの復活に喜び、金に群がった。
母親と一緒に、レイコに会いに来たという、5歳ぐらいの男の子が、順番で店の中に入って来た。さすがに店長は断った。
レイコ「ちょっと店長、せっかく店に入れたお客さんを、帰らす気?」
店長「帰らすも何も、まだ子供だぞ。」
子供の母親「すいません、この子がどうしても、レイコさんに会いたいってきかないので。」
レイコ「リームさん、この子と相席お願いね、それから、この子の支払いもお願いね。」
リーム「まじか。」
店長「お前、無茶言うな。それから、店の外に並んでる客はどうするんだ?」
レイコは、店の外に出た。
レイコ「みなさん、今日はもう満席で無理なの、また今度来てね。」
なんだよそれ、せっかく無理して来たのに。店の外に並んでいる人達は、ぶつぶつと文句をいい始めた。
レイコ「男なら文句を言わない、運がなかったと思って、時には諦めることも大事よ、前向きハートシャワー!!」
またもや、空から今度は、黄色の10センチ程のハートが街中に降り始めた。




