さらば デビルタウン あの世
白い壁に赤い絨毯が敷かれた、いつもの見慣れたデビルタウンの地下街があり、足元に、今まで見たことがなかったマンホールがあった。
魔王・サファリス「着地の所にマンホールはなかったはず。そうか、重なってドッキングしてるから、このマンホールから下が、キビラの街ってことか。」
サファリスが、そのマンホールの蓋を開けて、今度はキビラの地下街へ行こうとすると、シボラのホログラフィーが現れた。
シボラ「そうだ。そのマンホールを開けて、さらに下へ。」
そういうと、ホログラフィーのシボラはマンホールを透き通って、先に降りて行った。サファリスも、シボラに続いてマンホールを開けて下へ降りると、白い壁に青い絨毯が敷かれた地下街が現れ、シボラが待っていた。
魔王・サファリス「おお!!ここがキビラの地下街か。」
シボラ「着いてきてくれ。」
サファリスは、シボラの後に続いて、マンホールの降りた位置から、南へ歩き始めた。
魔王・サファリス「さっきは暗闇で、シボラの姿が見えなくなったから焦ったよ。」
シボラ「ああ。ブラックホールの事象の地平面を少し越えてしまったから、光が吸い込まれてしまったんだ。おかげで、元の軌道に戻るのに、エネルギーをかなり使ってしまった。」
魔王・サファリス「しかし、よくキビラを見つけられたな。あの暗闇で。」
シボラ「エネルギーのない状態でさ迷っているとすると、事象の地平面上で、ブラックホールに引き込まれない安定したこの空間しかないと思ったんだ。細かな位置は、魔王石に誘導してもらった。」
魔王・サファリス「魔王石が誘導を?」
シボラ「魔王石どうしは、テレパシーで会話をするんだ。キビラの所の魔王石と、この魔王石で。着いたぞ、この左の扉を開けて、中にあるコンプレッサーのスイッチを押してくれ。」
ちょうど行き止まりになり、左の白い壁を見ると、サファリスの腰ぐらいの高さの扉があり、少しかがんでサファリスは、その扉を開けた。中には、高さ30㎝、長さ50㎝ほどの金色のコンプレッサーが1個、ぽつんと置いてあった。
魔王・サファリス「意外と小さいなあ。ボタンてこれか?」
シボラ「そうだ。そのボタンを押してくれ。」
サファリスが、コンプレッサーに1個だけある赤いボタンを押すと、コンプレッサーが作動し始めた。
シボラ「よし。これで、キビラは私のエネルギーを充電できる。30分もすれば、エネルギー満タンで動けるようになる。」
魔王・サファリス「キビラは、自分でエネルギーを作れないのか?」
シボラ「そうだ。キビラは、私のようにダークマターエネルギーを宇宙から取り出すことができない。だから、こうやって1000年に1度ぐらい、私とドッキングしてエネルギーを補充しないといけないのだ。」
魔王・サファリス「1000年に1度か。そりゃあ、忘れるよなあ。」
シボラ「よし、キビラに会いに行こう。」
シボラとサファリスは、元来た道を戻り、今度はマンホールに上がらず、そのまま真っ直ぐ突き進むと、シボラの部屋と同じように、魔王石が壁中にびっしりと埋め込まれた、キビラの部屋に着いた。部屋の中央には、シボラにそっくりな、汚ない頭頂部が禿げたオッサンが立っていた。
キビラ「兄貴、来てくれたんだな。ありがとう。お前はなんだ?汚ない女装のオッサンだな。今すぐここから立ち去れ!!」
魔王・サファリス「なんだと!!俺がお前のコンプレッサーのスイッチを押してやったんだぞ!!」
シボラ「そうなんだ、キビラ。魔王・サファリスのおかげでお前は助かったんだ。礼を言わないと。」
キビラ「えっまじかよ。どうせなら、可愛い若い女の子が良かったな。ありがとよ、おっさん。じゃあ、お礼にあれをやるよ。兄貴に渡そうと思ってたんだが、そこの一番左端の上に埋ってある魔王石を。それを取ってくれ。」
魔王・サファリス「これか?」
サファリスは、少し背伸びをして、一番左端の上に埋ってある、丸い直径10㎝ほどの紫色の魔王石を引き抜いた。
キビラ「それは以前、俺に住み着いた知的生命体の奴らが持っていた、この宇宙で死んだ奴のデータが入り続ける魔王石"あの世"だ。死んだ奴は、データとしてその魔王石の中で生き続ける。さっき、地上の街にいた奴らがそうだ。見ただろ?」
魔王・サファリス「見た見た。以前の魔王だったコジローさんとかケンイチさんがいたなあ。話したりできるのか?」
キビラ「無理だ。この街にいて、生きているように見えるが、実際は、この魔王石の中で、データとして生活している。立体の映画を見ているようなもんだ。データだから、生きているとは言えないな。結局、死んだら終わりってことだ。」
シボラ「話は変わるんだが、キビラ、今からこのブラックホールを破壊したいんだ。」
キビラ「兄貴、まじか!!その前に、まもなく文明エネルギーを嗅ぎ付けて、リヴァイアサンがやって来る!!」




