MOON`S QUEEN 賽の河原
コジローの叫び声で、明菜は魔王の騎士達に攻撃するのをやめた。明菜の立っている回りには、20人余りの魔王の騎士達が、呻き声をあげながら横たわっていた。
魔王の騎士副隊長・明菜「弱い、弱すぎる!!そんなんで月に行こうなんて図々しすぎる!!魔王の騎士が聞いて呆れるわ!!」
魔王の騎士達「このアマ、言いたいこと言いやがって!!」
「俺達は、お前が女だから本気出してないだけだ!!」
一人の若い魔王の騎士の男が叫んだ。
「かかって来い!!打ちのめしてやる!!」
副隊長・明菜「フンッ雑魚が。自分が如何に弱いか、身をもって知るがいい。」
明菜が、若い魔王の騎士の男に詰め寄ろうとしたとき、魔王の騎士隊長・ハルデンが止めに入った。
魔王の騎士隊長・ハルデン「副隊長、続きは昼からの訓練で。」
副隊長・明菜「隊長がそう言うのであれば。分かりました。」
明菜は引き下がり、再びコジローの弟子達の隣に並んだ。コジローは、小声で明菜に言った。
魔王・コジロー「明菜、頼りにしてるぞ。」
「後3日で月に出発するが、今日も引き続き訓練を行う。昨日、ワインから希望のライフル・レプリカが贈られてきた。この後、各自に希望のライフル・レプリカを支給するので、昼からの訓練に持って来るように。以上。」
コジローの話が終わり、魔王の騎士達の多くは、最近、訓練棟の隣に出来た寮へ。
他の者達は、それぞれの家へと帰って行った。
一 地獄 一
鬼王「俺の後について来い。」
ケンイチは、鬼王の後について歩き、みんなとは反対の右の部屋に案内された。右の部屋の中に入ると、そこは賽の河原で、何十人もの人々が石を積み上げていた。
鬼王「ここは、あの有名な賽の河原だ。石を10段積んで、石の塔を作れ。そうすれば、あの目の前に流れている三途の川に渦が現れて、その渦の中に飛び込めば、お前は、自分の帰るべき場所に帰れるはずだ。」
鬼王とケンイチの近くで、一人の5歳ぐらいの男の子が石を8段積み上げていたので、すかさず鬼王は、それを蹴飛ばして崩した。
男の子「酷い、せっかく8段まで積み上げたのに!!」
男の子は大声で泣き始めた。ケンイチは、鬼王に向かって言った。
大悪党・ケンイチ「お前、最低だな。」
鬼王「これが俺達、鬼の仕事だ。」
ケンイチが周りを見ると、何十人という鬼達が、到る所で人々の積み上げた、10段に満たない石の塔を蹴り崩していた。
鬼王「検討を祈る。それから、お前はまだ生きているから教えてやる。生物は1度死んだら、ゲームのように生き返ったりはしない。お前が見た左の部屋に入って行った奴らは、記憶を消されて他の地獄に転送されているのだ。地獄もいろいろあって、小さい地獄から、この宇宙の何千億倍もある大きな地獄まである。この地獄は小さい方だから、お前はこうやって賽の河原まで辿り着くことが出来たのだ。ラッキーだったな。」
ケンイチは、鬼王の話を聞きながら石を積み始めた。石を3段積んだところで、鬼王がそれを蹴飛ばした。
大悪党・ケンイチ「お前、なんてことするんだ!!」
鬼王「言っただろ。これが俺達、鬼の仕事だと。」
ケンイチは、また石を積み上げ始め、今度は2段積み上げたところで、
鬼王「ハイイイイイイ!!」
鬼王がすかさず蹴り崩した。ケンイチはぶちキレ、低い声で鬼王に向かって言った。
大悪党・ケンイチ「お前、喧嘩を売ってるのか?」
鬼王「喧嘩は売ってない。さっきから何度も言ってるだろ、これが俺達、鬼の仕事だと。だが、お前が俺のことを気に入らないと言うなら、喧嘩を売ってやってもいいぜ。」
大悪党・ケンイチ「上等だ!!その喧嘩、買った!!最初からお前をぶちのめすために、ここまで来たんだ!!」
鬼王「地獄最強の俺をぶちのめしに来ただと?面白い。出でよ、俺の金棒!!」
鬼王の右手に、黒い2メートル程の金棒が現れた。
鬼王「俺は鬼の中で、唯一、金棒を持つことを許された鬼だ。いくぞ!!いきなり超・必殺技だ!!喰らえ!!財産没収!!」
鬼王の黒い金棒が、眩い光を放ち始めた。
大悪党・ケンイチ「クッ眩しい!!」
ケンイチは、右手で両目を覆った。




