SUPERNOVA 派遣契約解除
一 デビルタウン 噴水広場 一
コバヤシは、自分の足元に倒れている、魔王討伐課の職員1人の死体を両手で持ち上げて、竹槍を右手で回しながら突進してくるカマボコに向かって投げた。
カマボコ「な、き、貴様!!よくも仲間の死体を!!」
カマボコは、つい条件反射で、その死体を竹槍で突き刺し、自分に当たるのを防いだ。
カマボコ「し、しまった。つい反射的に!!」
コバヤシ「お前だって、何の罪のない街の人々を殺しまくったじゃないか!!喰らえ、パンダパンチ!!」
カマボコ「こ、これは戦争なんだぞ!!戦争では、関係ない奴が常に死ぬもんだ!!グワアアアア!!」
突進して来たコバヤシの右ストレートが、カマボコの顔面に入り、5mほどぶっ飛んで倒れ、気絶した。
コバヤシ「もはやデビルタウンは、単なる魔物の街という区切りじゃない、攻めて滅ぼせばいいってもんじゃないんだ。」
コバヤシは、ワインを追って、魔王病院の方へ走り始めた。そして、少し登り坂になり始めた所辺りで、ワインを背負って走って来ているケンイチに遭遇した。
コバヤシ「あ、お前はケンイチ!!それにワインも!!お前、よくもまあ、人の嫁をおんぶしやがって!!」
ケンイチは、慌てて背負っているワインを下ろした。
ケンイチ「これには訳があるんだ。それにしてもコバヤシ、久しぶりだな。」
ワイン「あなた、大丈夫?私がもう歩けないから、オンブするように頼んだの。」
コバヤシ「そうか。ケンイチ、お前には言いたいことが山程あるが、ワインの体調がすこぶる悪い。だから、また今度だ。ワインは連れて帰るぞ!!ワイン、魔王ゴッコはもう終わりだ。」
ワイン「キング・オブ・ワイルド、地獄から帰って来たら、ここを訪ねて来て。あなたを正社員のボディーガードとして雇うわ。もちろん、派遣の召還獣契約は、引き続き継続するわ。」
ワインは名刺を1枚、ケンイチに渡した。
召還獣・ケンイチ「召還獣契約は、もう終わりにしてくれ。俺は地獄に帰って、することがあるんだ。コバヤシ、上には、都合が悪いことは全部、俺がやったと報告しろ。」
コバヤシ「ああ。お前には悪いが、そのつもりだ。」
ワイン「分かったわ。じゃあ、次会うときは、正社員でってことね。」
召還獣・ケンイチ「そういうことだ。コバヤシ、お前は月に行かないのか?お前も月人病だろ。」
コバヤシ「行きたいのは山々だが、パンダの方が仕事上、便利なことが多くてな。それに、地球へ再び戻って来るかどうか、分からないんだろ?だから、俺は行かない。」
召還獣・ケンイチ「そうか。そろそろ時間のようだ、これを。」
ケンイチは、ワインに月の輪熊の像を渡した。
ワイン「こんな招き猫もどきだったのね、月の輪熊の像って。」
召還獣・ケンイチ「そうだ。それでも一応、大事な物だから、頼んだぞ。魔王先生に。」
そう言いながら、ケンイチの姿はボヤけ始め、そして消えた。
ワイン「コジロー先生って何?」
コバヤシ「アイツの剣の先生なんだ。」
ワイン「ふう~~ん。」
2人は、ケンイチがいなくなった方の空をしばらく眺めていた。
コバヤシ「さあ、俺達も帰ろう。」
ワイン「そうね。でもその前に、月の輪熊の像を届けてから。」
一 デビルタウン 訓練塔 一
コジローが、地下街の戦士・モグラ人間達を50人ほど引き連れて、マンホールから出てきた。
魔王・コジロー「ここは、訓練塔の裏じゃないか!!少し噴水広場まで遠いぞ!!」
ワンダ「急げ!!ここから攻めて行くぞ!!」
魔王・コジロー「もう、間に合わないだろ。すまない、ワイン。」
コジロー達は、噴水広場を目指して走り、訓練塔から南下して行った。
コジロー達が噴水広場に着くと、そこには多くの死体が転がり、ワインの姿はなかった。
魔王・コジロー「やはり遅かったか。」
コジローが項垂れていると、中央のマンホールが開いて、中からコバヤシとワインが出て来た。




