STARGAZER そして彼は星になる・・・・(勇者サイド)
巨大な水晶人間との距離が、10メートル程になったところで、モニカが話しかけてきた。
モニカ「スペクター、ここで降りて、空に向かって撃って。」
スペクターの額から、モニカの声が聞こえたので、キャリーはギンヤンマーバイクを止めた。
スペクターは、草原に仰向けに寝転がり、右足のライフルを挙げて、空に向けた。
モニカ「キャリー、あなたの300年を貰うわ。スペクターと手をつないで。」
スペクター「俺はマネキンだから、気にしなくていいぞ。」
キャリー「フフッ分かってるわ。」
キャリーは、スペクターの左側に仰向けに寝転がり、スペクターの左手を握った。
キャリー「曇り空ね。中途半端な天気だわ、私の人生みたい。」
スペクター「俺も、似たようなもんだ。華やかで輝かしい人生を送ってるように見える人も、本人からすれば、曇り空に見えるのかもしれないな。マネキンの俺が、人生を語るのも変だが。じゃあ、撃つぞ!!」
キャリー「どうぞ。」
スペクターは、曇り空に向かって、希望のライフルを撃った。巨大な水晶人間は、その間もグングングングン進んで、間もなく城下町に着こうとしていた。
空に巨大な穴が開き、体長10メートルほどの生命体が10体現れた。その生命体は、両腕がギザギザのノコギリのような車輪、下半身はなく、上半身だけで空中を飛んでおり、青い皮膚で、顔には目や鼻、口がなく、見たこともない文字が書かれていた。そして、蛇腹ホースのような1本1本が太い長髪だった。
その生命体達は、飛び回りながら、両腕のノコギリのような車輪で、巨大な水晶人間を削り始めた。
その光景を、未来草原・前方で見ていた水晶人間達は絶叫した。
水晶人間達「あれは、ボゼッタ!!なぜここに!!」
「俺達を追いかけて来たというのか!!」
「ヒエ~、殺される!!」
巨大な水晶人間は、あっという間に粉々にされ、小高い水晶の山になった。そして、空にできた巨大な穴に向かって、吸い込まれた。水晶人間達に"ボゼッタ"と呼ばれていた生命体達も、巨大な穴に全員吸い込まれると、穴が閉じられ、先程の曇り空に戻った。
ケンイチはマンモスに乗って、20人ぐらいのバッタ人間達と、スペクターとキャリーの側に駆けつけた。仰向けに寝転がっている2人を見つけて、ケンイチはマンモスから下り、スペクターの体を揺さぶった。
召喚獣・ケンイチ「おい、大丈夫か?しっかりしろ!!」
仰向けに寝転がっている2人の側に、マトリョーシカ人形のモニカがいた。
モニカ「久しぶりね、ゴリラ。」
召喚獣・ケンイチ「久しぶりに会って、ゴリラ呼ばわりかよ!!2人は大丈夫なのか?これはどういうことなのか、説明してくれ!!」
モニカ「スペクターは損傷が酷くて、キャリーは寿命が尽きて、2人とも死んだわ。」
召喚獣・ケンイチ「まさか、本当だったのか。銃を撃つごとに寿命を削るっていうのは・・・・。」
モニカ「そう。水晶人間達の星には、今、見たと思うけど、ボゼッタっていう生態系の頂点に君臨する生命体がいるの。水晶人間達の天敵でもあるんだけど。ワームホールを切り開いて、少しの時間だけ、何人かのボゼッタ達を呼ぶために、長寿のダークエルフ・キャリーの時間を300年貰ったんだけど、キャリーの寿命は320年だったの。」
召喚獣・ケンイチ「キャリーは、ハタチだったというわけか。」
モニカ「はた~ち~はたちはたちはたち~♪」
召喚獣・ケンイチ「・・・・死んでるんだぞ・・・・歌うところじゃないだろ。で、スペクターの方は直らないのか?」
モニカ「ごめんなさい。スペクターは直せるけど、中身は別人になるわ。以前のスペクターとは全くの別人で、もう2度と希望のライフルは使えない。」
スペクターの体が輝いて、一筋の光が空に向かって撃ち上がった。
バッタ人間達「な、なんだ!!この光は!!」
「これが魂ってやつか!!」
「誰か写メ撮れ!!写メ写メ!!」
モニカ「スペクター、星になるのね・・・・。じゃあ、この辺で私は。それからゴリラ、貴方は月に行かない方がいいわ。月に行っても、貴方にとってはいい結果にならない。むしろ、最悪な結果になるわ。と言っても、貴方は月に行くんでしょうけどね。じゃあね。」
そう言って、マトリョーシカ人形のモニカは消えた。




