STARGAZER こうして戦いが始まる(魔王サイド)
昼下がり、魔王・ワインは、未来草原を治めるトノサマの草の城に、シーラと何人かの魔王の騎士達を連れて来ていた。城は緑の鋼鉄の草で出来ており、触ると硬く、冷たかった。
魔王の騎士副隊長・シーラ「こんな草が、未来草原には生えてるんですね。」
魔王・ワイン「面白いわね。デビルタウンでも栽培できるかしら。」
城の裏側では、かなり広い訓練所があり、そこで、様々な顔がバッタで体が人間の武道着を着たバッタ人間達が、組手をしたり、巻き藁で蹴り技の練習をしていた。魔王・ワイン達は、天守閣に案内され、緑の柔らかい絨毯のような床に座り込み、渋いかなり目が覚めるような不味い茶を飲みながら、トノサマと、トノサマの数名の選りすぐりの部下達と会談をした。
トノサマの容姿は、トノサマバッタの顔に人間の体、数名の部下達もショウリョウバッタやアオフキバッタ等、様々な顔に人間の体だった。
トノサマ「あなた達が、カカシ高校に着陸したときは、また新たな敵が来たのかと思いましたよ。姿が人間だったので、安心しました。」
魔王・ワイン「まさか、未来草原で戦争してるなんて、思ってもみませんでした。」
トノサマ「あなた達は、ミラクル・アマゾンに行くと聞いたんだが、そこに行くなら、やはり、あの緑の水晶山を突発しなければならない。川を渡るにも、かなり多くのワニ人間がいるから危ないし、我々の知る限りでは、ミラクル・アマゾンにあなた達が乗って来た乗り物を着地させる場所はない。あの緑の水晶山の裏側になら、ミラクル・アマゾンに繋がる道がある。」
魔王・ワイン「あなた達と共に、水晶人間達と闘って、突発するしかなさそうですね。」
トノサマ「はい。協力をお願いします。しかし今、私の右腕・忍のハンゾウが水晶山に潜り込んでおります。この未来草原には、爆発することによって種を飛ばす爆弾草というのが生えており、その草で作った草団子を、ハンゾウは仕掛けて爆発させる予定です。まもなく、この戦争も終わることでしょう。あなた達の出番はないと思うので、安心して下さい。」
魔王・ワイン「私達もできる限り協力します。お互いのために、1日も早く、あの水晶人間達を倒しましょう。」
トノサマは、壁にある大きな神棚から、直径20㎝ほどの丸い金色のオーブを取り出した。
トノサマ「これは、代々私の祖先から受け継がれて来たオーブです。かなり昔に、地球の生物調査にやって来たエイリアンに貰った物だとか。これを持っていれば平和が保てると信じて、城に天守閣をわざわざ作って祀っていたのですが、最近の研究で、このオーブはどうも、宇宙の星図らしいのです。しかも、ただの星図ではなく、日々変化するワームホールの位置や、暴走する惑星まで分かり、使いようによっては、宇宙旅行もできる説まで浮上しています。水晶人間達は、我々、昆虫人や魔物、人間を食糧とするために攻めて来てますが、本当に欲しい物は、このオーブでしょう。」
魔王・ワイン「私達は、水晶人間達の食糧だから、そのオーブを渡したって意味がないですね。やはり、戦って勝つのみですわ。」
トノサマ「そうです。地球から逃げるにしても、今の私達の科学では、この星図を使いこなすことは出来ません。戦いながらでも、この地球で生きていくしかないのです。」
会談が終わり外に出ると、訓練を終えたバッタ人間達が水場で、執拗に足を洗い、鋼鉄の草で出来たグリーブの手入れをしていた。シーラとワインは、その光景を見ながら話始めた。
副隊長・シーラ「あのグリーブを生産しているのは人間です。他にも作物を作ったり、武器や防具を作ったり。この城を作ったのも人間です。バッタ人間達は、不器用で物作りができません。魔物達は、その材料となる草を運んだり、肥料を運んだりしています。そのためにバッタ人間達は、人間や魔物達を守っているのです。水晶人間達と対等に闘うためにも。」
魔王・ワイン「もともと草原で魔物達と闘ってたんでしょ?で、足が進化して蹴り技で闘うようになったらしいじゃない。」
副隊長・シーラ「はい。だから、俺達人間よりも平和ボケしてないし、闘い慣れしています。でも、遠い宇宙の星からやって来たエイリアン相手じゃ無理でしょ。俺達は、地球から出たことがないんですよ!!」
魔王・ワイン「わざわざ地球まで来るってことは、その星が滅んだか、もう住めない状況じゃないの?しかも、科学兵器を使わず、バッタ人間達と格闘している辺り、科学兵器を使うエネルギーがあまりないってことじゃないかしら。だから、トノサマの持っているオーブの力に頼ろうとしている。」
副隊長・シーラ「なるほど・・・・。ところで、魔王様はなぜ月に?」
魔王・ワイン「デビルタウンが月に行ける船だから。デビルタウンの魔王になったら、やっぱり月を目指すべきでしょう。」
副隊長・シーラ「何も無理して行かなくても。」
シーラは、天竺の地下にいる三蔵法師を思い出した。もう、二度と会いたくない。
魔王・ワイン「そうね。でも今は、月を目指したいの。月に行ってみたいの。」
トノサマの城を出ると大通りがあり、その両端には、人間の経営する屋台が幾つも並んでいた。水晶人間達が攻めて来たら、すぐ撤収できるようにと、いつの間にか店はなくなり、屋台だけになってしまった。草だけ食べていたバッタ人間達も最近はグルメになり、朝、昼、晩と全て屋台で済ますバッタ人間達が増えた。大通りを出ると、鋼鉄の草の家が、トノサマの城を囲むようにあり、城下町を形成していた。そして、そこを抜けると、やっと人間、魔物達の住む、石灰石で出来た白い家が立ち並ぶ町に着いた。
今日の仕事の予定が終了したシーラは、一人で町をぶらついていると、広い畑で、何人かの人間達と農作業をしているアンドロイド・シンとスペクターを見つけた。
シーラ「おい、お前ら、何やってるんだ?」
シン「あ、副隊長。農作業のバイトです。」
スペクターは、一生懸命、大きな南瓜を運んでいた。すると、一人の人間の男が叫んだ!!
男「うわああああ!!いったいなぜ、こんなとこに水晶人間が!!」
そこに、身長3メートルほどの緑の水晶人間が立っていた。人間達は作業をやめて後退りした。畑にある直径50㎝ほどの石が次々と水晶人間となり、全部で10人の水晶人間が現れた。
人間達「10、10人も!!」
「だ、ダメだ!!もうおしまいだ!!殺される!!」
副隊長・シーラ「うわっ。さ、最悪だ!!寄りによって、こんなのと遭遇するなんて!!今日は厄日だ!!」
水晶人間達「ふう、ここまで遠かったぜ!!バッタ人間達に見つからないように、石になっては歩き、また石になっては歩きの繰返し。やっと人間に会えた。」
「お前達を殺して帰れば、女達が喜ぶ。久しぶりの人間の血だからな。」
人間達「そ、そんな・・・・・・・・石に変身できるなんて。」
水晶人間達「最近、変身できるようになったんだ。俺達は、この星に来てバッタ人間達と闘っているうちに進化したんだ。」
人間達「ま、まさか、もうこの街には多くの水晶人間達がいるというのか!!」
町のあちこちで悲鳴が聞こえ始め、また、バッタ人間達と水晶人間達が闘っている声が聞こえ始めた。




