STARGAZER 未来草原へ(魔王サイド)
魔王となったワインは、サプリメントの会社"愛ザップ"の代表取締役を辞任した。
魔王・ワイン「今までは、金儲けをしていれば良かったけど、これからは、命を懸けた闘いね。私に務まるかしら。」
時刻は午前9時。2階の時計台の魔王石の側に机と椅子を置き、ぼんやりとデビルタウンの街並みを眺めていると、魔王の騎士隊長・ファージと魔法使いのサファリスが入って来た。
ファージ「魔王様、魔王の騎士達に"退魔の剣"100本支給ありがとうございます。」
魔王・ワイン「ああ。あれね、夜中に目が覚めて眠れなくて、魔法テレビ見てたら、通販しててね。で、退魔の剣のレプリカを見て、これはいいかもと思って買ってみたの。」
ファージ「これはいいですよ。柄の部分のボタンを押すと、魔のシールドを張り、柄頭のボタンを押すと、切っ先から短いですが、直線的な斬撃が放てる。ケンイチさん程の威力はないですが、これなら剣の初心者でも、ある程度の魔物を倒すことができます!!」
魔王・ワインとファージが話をしていると、狐人間で、個人で召喚獣の派遣会社をしているエッグがやって来た。
エッグ「魔王様、お久しぶりてす。ガマガエルことガマ・サムライの契約書を持って来ました。それから、こちらがレンタルの召喚獣になるんですが、マンモス・オブ・チャンピオンの書類です。こちらの方にサインをお願いします。」
ワインは、エッグの書類にサインをして、エッグに渡した。
エッグ「確かに。では、よろしくお願いします。」
そして、エッグは立ち去った。
ファージ「では、そろそろ出発しますか?」
魔王・ワイン「そうね。サファリス、お願い。」
サファリス「了解です!!時計台、未来草原へ向け発進!!」
時計台は、轟音をたててセニョール地域から、南側にある未来草原へと向けて飛び立った。
タケト率いる魔物軍団を撃退してから、1カ月の時が経ち、デビルタウンの復興作業も終わったということで、三蔵法師を倒すため、ミラクルアマゾンにいる山師の"秀さん"を捜しに出かけることになったのだが、ミラクルアマゾンには、時計台を着地させる場所が有りそうもない。そこで、ミラクルアマゾンの手前にある"未来草原"へ時計台を到着させるということになった。
未来草原は、昆虫人が進化した土地で、昆虫人によって政治が統一されている。人間や魔物よりも圧倒的に数が多い昆虫人が、やがて、この地球を統一するだろうと予測されており、その未来の姿を描いた草原ということで、未来草原と呼ばれている。しかし、この未来草原に、第4者が現れた。少し前に、空に穴が開き、巨大な緑色の水晶の山がこの地に降り立ったのだ。その水晶の山から、人型で体が岩や水晶でできた者達が、昆虫人・人間・魔物達を殺し、死体を回収し始めたのであった。
ファージ「とりあえず、魔王の騎士50名と、あとデビル商事から2名、清掃員が1階に待機してます。清掃員2名は男のアンドロイドですが、天竺の者ではなく、大元会社・デビル建設社長のデーモン山下が承認済みなので安心して下さい。」
魔王・ワイン「未来草原に着いたら、街で騎士達のアパートを借りましょう。時計台の1階で、50人共に衣食住をするなんて、みんな耐えられないでしょう。」
ファージ「そうですね。私も嫌です、寝ているときに誰かが動いて、あの布団がカザガザいう音が嫌なんです。時計台だと、夜中に目が覚めて、トイレに行くときも、暗闇で寝ている奴を踏まないように気を使って、歩いて行かないといけませんし。」
魔王・ワイン「さすが魔王の騎士隊長ね。共同生活を極めてるわね。」
ファージ「私が新人のときは、詰所で、起床時間より1分早く起きただけで怒られてました。もう、共同生活はコリゴリです。1週間したら、1度デビルタウンに戻る予定です。騎士達を交代させようと思うので。」
魔王・ワイン「それはいい考えね。あと食事なんだけど、魔王石に"白いおばちゃん達"(140部参照)を召喚してもらい、時計台の1階に食堂的なものを用意しましょう。」
ファージ「分かりました。」
そうこう話をしているうちに、時計台は南下して海を渡り、未来草原に着いた。上空から、緑色の水晶の山と、それに向かい合うように、壁、屋根が草で出来た巨大な城を中心とした城下町が見えた。
サファリス「見て下さい、あの城。鯱まで草で作ってますよ。魔王石の情報によると、あの城に未来草原を牛耳る最強の戦士・トノサマがいるそうです。で、水晶の山から城に隠れるようにしてある、畑に囲まれた白い家の集団が、人間・魔物達の町だそうです。」
魔王・ワイン「あの左側の大きな川を挟んである大森林が、ミラクル・アマゾンね。」
サファリス「はい・・・・とりあえず、人間・魔物達の町中にある"カカシ高校"のグランドに着陸しましょう。」
魔王・ワイン「カカシ?高校の名前が?」
サファリス「はい。いつか、この町からカカシの勇者が現れるという予言から、付けられた名前だそうです。」
魔王・ワイン「へえ・・・・世の中、いろんな予言があるのね。」
一 デビルタウン 訓練所一
副隊長シーラ率いる魔王の騎士達は、噴水広場から北東にある訓練所で、ヤマタイコクからケンイチの師であるコジロウを先生に迎えて、剣技を学んでいた。
コジロウ「お前ら!!それでも魔王の騎士か?体力がなさすぎるぞ!!そんなんで、街の住人を守れると思ってるのか!!もっと速く走れ!!副隊長!!夜の街ばかり走ってんじゃねえぞ!!」
副隊長・シーラ「ハアッハアッ三蔵法師の1件以来、強くなろうと思ったが、スパルタ教育は俺には無理だ!!コジロウ先生の指導は、来週から週1にしてもらおう。ハアッハアッ。」
コジロウ「よし!!走るの止め!!とりあえず、15分休憩!!」
魔王の騎士達は疲れ果て、訓練所の中にある体育館の周りに敷いてある、石畳の上に寝転んだ。冷たい平らの石が背中に当り、気持ち良かった。シーラはアスナと並んで座った。
シーラ「アスナ、悪魔学園に行け!!勉強しろとは言わない。学校に行って、友達作ったり彼女を作ったりして、姉さんのことを早く忘れろ!!だいたい、お前ぐらいの年頃は、それが普通だ!!こんなとこで、こんな訓練をしていることがおかしい!!学校を卒業してから魔王の騎士に復帰したって、充分いける!!」
アスナ「副隊長、(姉さんのこと)知ってたんですか・・・・。」
シーラ「ああ。俺も学校に行きたいけど、さすがにこの歳じゃな。お前が羨ましいよ。俺もJKって奴を見てみたかったよ。」
アスナ「副隊長・・・・。」
魔王の騎士達「いいなあ、アスナは。学校かあ。」
「俺は冒険者学校に行ったんだが、男ばっかりでなあ。覚えているのは、陸上部の奴等の走りが、空中を走っているような走りだったってことだ。まるで、魔法使いの空中浮遊みたいな走りだったよ。」
「俺は農業高校出身だ。鍬の持ち方を3時間教えられたよ。今じゃ、桑なんて使わないけどな。その鍬の持ち方を教えてくれた先生は、鍬で人を殺して刑務所で死んだらしい。」
「俺は調理師の資格を取りに専門学校に行ったんだが、その料理を教えてくれた先生が、数年前に、地域の住民の何人かに、カレーに毒を入れて配って殺してなあ。で、刑務所で自殺したって話だ。」
シーラ「もう、そんな話やめろ!!とにかくアスナ、学校に行け!!学校は楽しい所だ!!分かったな!!」
アスナ「・・・・・・・・はい。」




