season 4 魔王・ミナ 逝く(魔王・勇者・地獄サイド)
腹一杯で体力マックス、しかも、酔っぱらいのボーナスがついたフリーター・ニート達と、空腹で栄養失調気味、過労のマイナスボーナスがついた魔物達の闘いは、互角だった。一方、ケンイチとタケトもお互い譲らず、互角の殴り合いをしていた。
チーフ・タケト「さすがだな、俺のこの蒸気の世界に、冷気をまとって入門してくるとは。恐れ入ったぜ!!」
召喚獣・ケンイチ「お前こそ、南瓜しか食べてないのに、凄いパンチ力とスタミナだ!!まるで、自分に殴られてるみたいだ。」
チーフ・タケト「自分・・・・せっかくだが、お前との殴り合いもここまでだ!!空を見ろ!!今日は満月だ!!」
ケンイチ「な・・・・なに!!」
ケンイチとタケトが、すっかり暗くなった夜空を見上げると、分厚い雲の隙間から、綺麗な満月がチラリと見えた。そして、満月を見た2人は人間に戻った。ケンイチは、少し歳をとって30代前半ぐらいの中年に、タケトは、少し若返って15・6歳ぐらいの少年になった。
中年・ケンイチ「お前、前よりも若くなってるぞ!!」
少年・タケト「お前こそ、前よりフケて見えるぞ!!」
魔物達「見ろ!!チーフが人間になったぞ!!しかもガキだ!!」
「この勝負、負けだ!!子供がおっさんに勝てるわけがない!!」
「あのガキなら、俺でも勝てる!!」
フリーター・ニート達「見ろ!!キング・オブ・ワイルドが、おっさんになってる!!」
「この勝負、勝ちだな!!いくらなんでも、子供には負けないだろ。」
「問題は、子供を殴れるかどうかだな。子供相手に喧嘩するなんて、大人気ないしな。」
ジム「俺は知っている。チーフは子供になった分、体力は下がったが、魔力は上がっている。現役の勇者の頃よりも強くなっている!!」
ジョニー「魔王様に剣を渡さないと!!魔王様の魔法は、剣があってこそ成り立つ!!」
ジョニーは、ケンイチに自分の持っている双剣の1本を投げた。
ジョニー「魔王様!!」
ジョニーの投げた剣が、ケンイチの足元に転がった。
中年・ケンイチ「ジョニー、すまない!!」
ジョニーは手をあげて応え、また魔物達と闘い始めた。ケンイチは、右手で剣を拾って空に掲げ、魔法を唱えた。
中年・ケンイチ「頼むぜ、剣に意思を!!」
ジョニーの双剣の片割れ「よう、ケンイチ。人間の作業服を着たお前って、土木の親方みたいやん。無精髭が生えてるから、剃った方がいいと思うぞ!!わしに意思を与えてくれたから、わしのスキルを教えるで。ワシのスキルは、1回だけハプニングを起こせる!!ショボいスキルでごめんな。」
中年・ケンイチ「なかなかユニークなスキルを持ってるじゃないか!!期待してるぜ!!」
ジョニーの双剣の片割れ「まいど!!おおきに!!」
ケンイチは、ダブダブの作業着の上着とズボンを、タケトは、ダブダブの白いスーツの上着とズボンを、それぞれ適度な長さに捲った。
少年・タケト「準備はできたか?いくぞ!!アース・スティンガー!!」
中年・ケンイチ「また、面倒くさい攻撃の始まりか!!」
ケンイチは、地面から出てくる土の手の攻撃に備えたが、ケンイチの所に土の手は現れず、それは、ミナ達のいるデビルタウン陣営に、鋭い針となって無数に現れた。
デビルタウン陣営「グワッいきなり地面から針が!!」
「ギャアアアア!!」
「クソッ痛えよ!!」
ファージ「魔王様!!大丈夫ですか!!誰か!!回復魔法を!!」
無数の土の針は、デビルタウン陣営の何十人と、ミナの胸を貫いた。ミナは、虚ろな目をして、その場に倒れた。晩御飯を途中で食べるのをやめ、急いでシルビアがミナの元に駆けつけ、回復魔法をかけたが、ミナの血は止まらなかった。
中年・ケンイチ「貴様!!」
少年・タケト「狙い通りだ!!まずは、あの女からと決めていた。俺にとって一番の脅威は、ガマを召喚するあの女だ!!だから、あの女を真っ先に殺すと決めていた!!」
ケンイチは、ミナの元へ駆けつけ、ミナを抱き起こした。
少年・タケト「おいおい、これから闘うってのに、全く隙だらけの男だな。最期のお別れの挨拶か。まあ、いいだろう。待っててやる!!次期にお前も、すぐ死ぬことになるのだから。」
中年・ケンイチ「ミナ!!大丈夫か!!しっかりしろ!!」
魔王・ミナ「魔王・・・・様・・・・人間になっても・・・・カレー・・・・臭いです・・・・。」
中年・ケンイチ「そ、そうか・・・・ちょっとさっき、カレーを食い過ぎたかな・・・・ミナ、死ぬな!!まだ、探し物が見つかってないだろ!!だから、死ぬな!!」
ワイン社長「ミナさん、しっかりしなさい!!ミナさん!!」
中年・ケンイチ「シルビア!!もっと魔法を!!回復魔法に気合いを入れろ!!」
シルビアは泣きながら叫んだ。
シルビア「やってるわよ!!さっきから!!でも、血が止まらないの!!どうして!!」
魔王・ミナ「魔王様・・・・探し物は・・・・必要なくなった時に・・・・出てくる・・・・ものです・・・・だから・・・・もう・・・・いいんです・・・・もう・・・・。」
ミナは、座り込んで泣きながら、自分を見ているワイン社長の手に、赤い魔王石のネックレスを置いた。
魔王・ミナ「キング・・・・オブ・・・・ワイルド・・・・を・・・・お願い・・・・します。」
中年・ケンイチ「ミナ!!ミナ!!」
そして、ミナは息絶えた。しかし、ミナの体が眩しく輝き始め、光が消えると、ミナの遺体の胸の上に、大きな青いマトリョーシカ人形が置いてあった。
中年・ケンイチ「な、なんだ、これは!!」
ファージ「もしかして、ミナさんの生まれ変わりでは?」
マトリョーシカ人形「私は"希望のライフル"。でも、本当の名前はモニカよ。」
マトリョーシカ人形が突然喋ったので、ミナの周りに集まった人達は驚いた。
ファージ「希望のライフルは、確かミナさんがずっと探していたもの。そのナリで、お前が希望のライフルだというのか!!」
モニカ「そうよ。この女の子の魂が、私を生んだの。だから、別にライフルっぽくなくてもいいじゃない。」
中年・ケンイチ「自分の魂が探し物だったなんて・・・・そんなの見つけれるわけがない。デビルタウンとグラスランドシティーの魔王になれば、探し物を見つけやすくなるかと、俺が魔王にしたのが間違いだった。」
ファージ「あの状況では、仕方がなかったです。とりあえず今は、目の前の少年をどうにかしなくては。」
中年・ケンイチ「そうだな。みんなは羽根アリバイクに乗って避難してくれ。アイツの魔法はエグい。決して地面に着陸せず、いつまでも、空を飛び続けて逃げてくれ。」
ワイン社長「勝てるの?」
中年・ケンイチ「分からない。でも、なんとかする。俺を信じてくれ。」
モニカ「おっさん、私を連れて行きなさい。何か異次元の匂いがするわ。」
中年・ケンイチ「おっさんて・・・・さあ、魔王・ワイン。みんなを連れて空へ。ミナも頼む。」
ワイン社長「魔王・・・・私が?」
ファージ「話は後です。おい!!みんな!!羽根アリバイクに乗るなり乗っけてもらって、空へ飛んで行け!!」
デビルタウン陣営にいた、ホワイトナイト、シティーナイト達は、デビルタウン消防団や婦人防火クラブ、怪我した人達を巨大な羽根アリバイク達に乗せて、空へと舞い上がった。
シルビア「フリーター・ニート達を迎えに行きましょう。」
シルビア率いるホワイトナイト達が、ジョニー率いるフリーター・ニート連合を迎えに行くと、まだ、魔物達と互角の闘いを続けていた。
シルビア「ジョニー、ここから退散するわよ!!早く羽根アリバイクの後ろに乗って!!みんなも早く乗って!!」
ジョニー「シルビアさん、先に行ってくれ!!」
フリーター・ニート連合「俺達に構わず行ってくれ!!ここが俺達の墓場だ!!」
「そうだ!!どうせ明日になっても、俺達に仕事はない!!最期ぐらいかっこよく、華と散らしてくれ!!」
魔物達「コイツら、漢の中の漢だ!!」
「働かない人間って奴を、俺は見直したぜ!!」
「俺達も働かないけどな。」
シルビア「後で後悔しても知らないからな!!じゃあ、行くわよ!!」
シルビア率いるホワイトナイト達もまた、空高く舞い上がった。
ジョニー「あばよ!!」




