season4 ひぎり焼き(魔王・勇者サイド)
ジムは、ヴァンパイアのウエイトレスに話しかけた。
ジム「あの、お姉さんは学生ですか?」
ヴァンパイアのウエイトレスは、笑いながら答えた。
ヴァンパイア「いえ、学生じゃないです。私、勉強とか大嫌いですから。」
コボルト・イトウ「え?学生じゃないの?」
ヴァンパイア「はい。」
タケト「イトウ!!適当なこと言いやがって。実は、こいつが、お姉さんは、将来はホワイトカラーの職を目指している勉強熱心な学生とかいうもんで。」
ヴァンパイアのウエイトレスは、またまた笑いながら答えた。
ヴァンパイア「え?私、ヴァンパイアですよ、魔物ですよ。魔物が勉強とかするわけないじゃないですか。努力とか大嫌いだし。では、ごゆっくり。」
ヴァンパイアのウエイトレスと若い人間の男は、厨房の方へと去って行った。
タケト達3人は、ステーキランチを食べ始めた。
チーフ・タケト「いやあ、やっぱり牛の肉はうまいな。蛇の肉とは大違いだ。蛇の肉で満足していた俺が馬鹿だったぜ。」
ジム「チーフだけじゃないです。実は、俺も蛇の肉で満足していました。」
チーフ・タケト「ジム、お前とは気が合うな。」
コボルト・イトウ「2人とも、これからは、たまには街で旨いものを食べるようにしましょう。」
チーフ・タケト「そうだな。」
3人は食べ終わり、タケトは、金を払わずに店を出ようとした。
コボルト・イトウ「チーフ、勘定をしないと。」
チーフ・タケト「俺は魔物だ!!魔物は、金を払わない!!」
コボルト・イトウ「また時代遅れなことを。食い逃げをするつもりてすか?」
チーフ・タケト「食い逃げじゃない!!食うだけだ!!」
そう言ってタケトは、金を払わずに店を出た。
若い人間の男「お客様!!お勘定!!店長!!食い逃げです!!」
店長「なに!!このご時世に食い逃げだと!!」
厨房の奥の方で、店長と呼ばれる中年の男の叫び声が聞こえた。
ジム「さすがチーフ!!でも、俺は自分の分だけ金を払います。はい、1200円。」
コボルト・イトウ「俺も自分の分だけ。はい、1200円。あのゴリラとは赤の他人だから。」
ジム「俺も。あんなゴリラは知らない。」
イトウとジムは、勘定を済ませてタケトの後を追いかけた。
ヴァンパイアのウエイトレス「あのゴリラ、なかなかやるわね。食い逃げをするなんて、あのゴリラは魔物の中の魔物だわ。久々に子宮が疼いたわ。」
コボルト・イトウ(この女も、所詮はヴァンパイアだな。こいつがデリヘルで働くようになるのも、時間の問題だな。)
店長は、店専属の緑の小さなおじさんを呼び、魔王の騎士達が駐在している時計台の2階へ連絡をした。
時計台の2階では、魔王・ミナ、魔王の騎士隊長ファージ、魔王の騎士副隊長シーラ、魔法使いのサファリス、アスナを筆頭に魔王の騎士20名が、魔王石の回りに白い椅子を並べて座り、明日の天竺出発に向けて、話し合いをしていた。
突然、魔王石の上に、小さな緑のおじさんが現れた。
小さな緑のおじさん「ステーキハウス・ギャランドューで、食い逃げが発生!!犯人は、2・5メートル程のでかい白いスーツを着たゴリラです。お供にゴーレムとコボルトを連れている模様。なお、ゴーレムとコボルトの2人は、ちゃんと勘定を済ませているとのこと。」
ファージ「まさか、ケンイチさん?」
魔王・ミナ「いえ、ケンイチさんは地獄で働いているはずだから、たぶん、ゴリラ違いね。とすると、2代目の元魔王かな。」
サファリス「ああ。セニョールのキャバクラに嵌まっていた、俺の師匠の友達だった奴だな。」
ファージ「・・・・あの人か・・・・会いたくないなあ。」
魔王・ミナ「ファージ、知ってるの?ちなみに人じゃなくてゴリラね。」
ファージ「はあ・・・・まあ。」
魔王・ミナ「2代目の元魔王となると、かなり強いわね。じゃあ、私が行くわ!!私のガマに呑み込んでもらうわ。」
ファージ「ったく、明日、天竺に出発ってときに、面倒な奴が出て来やがった。じゃあ、俺も行きます。シーラ、後を頼む。もし何かあったら、時計台を飛ばすかサファリスの魔法、あるいは小さな骸骨のおじさん辺りで連絡をくれ。あと、4・5人、魔王様と俺について来てくれ。」
シーラ「分かりました・・・・サファリス、この状況でブラジャー直してんじゃねえよ!!」
サファリス「ちょっと痒いんだよ!!ブラジャー負けをしたみたいだ。お前もいつか、ブラジャーをする日が来れば分かるさ。」
シーラ「しねえよ!!そんな日が来たのは、たぶんお前だけだ。」
ファージ「ルシファーも、警備隊長の家でブラジャーを直していたらしいぞ。」
シーラ「ルシファーは体が女だから、まあしょうがないとして、こいつは男ですよ!!」
サファリス「シーラよ、俺の予言では、いつか男も、当たり前にブラジャーをするようになる。」
シーラ「・・・・・・・・。」
魔王・ミナは、黒いリュックを背負った。
魔王・ミナ「サファリス、死ねばいいのに。じゃあ、行きましょう。」
サファリス「グハッ」
サファリスは、精神的なダメージを喰らい、その場に膝まづいた。
ファージ「はい。」
魔王・ミナ、ファージ、魔王の騎士4人は、魔王石の前に立った。
魔王・ミナ「魔王石、食い逃げをしたゴリラは今、どの辺り?」
魔王石は、デビルタウンのラブホ通りを映し出した。
魔王・ミナ「え~、昼間からラブホ通りに行くの?嫌だわ。」
画面が変わり、林の中を映し出した。
魔王・ミナ「林の中を歩いてるみたいね。なんか、虫とかたくさんいそう・・・・嫌だわ。」
ファージ「魔王様!!あのゴリラを止められるのは、あなたしかいないんです!!さあ、行きましょう!!」
魔王・ミナ「ちょっと、そんなに怒らないで。ファージ、顔が恐い。じゃあ、行くわよ!!魔王石、私達をその林の中へレッツラゴー!!」
魔王・ミナが、魔王石に向かって魔法を唱えると、魔王石は光輝き、魔王・ミナ、ファージ、魔王の騎士4人を林の中へ転送させた。
魔王ミナ達は、杉や桧の多い繁った林の中に着き、2メートル程先に、ゴリラとゴーレム、コボルトが、なにやら話をしながら獣道を歩いていた。
ファージ「あの白いスーツ、間違いない。おい!!そこのゴリラ、止まれ!!食い逃げをしたの、お前だろ!!」
白いスーツを着たゴリラ、タケトは立ち止まり振り向いた。
チーフ・タケト「食い逃げじゃない!!食うだけだ!!んん?お前はもしやファージ?それに、あのガマガエルを呼ぶ女までいるじゃないか。」
ファージ(クッやはり、2代目の元魔王だったか。こいつは難敵だ!!)
ファージ「あんたは、以前は魔王だったが、今はただの食い逃げゴリラだ!!逮捕する!!」
コボルト・イトウ「あのう、俺達はちゃんとお金を払うように言ったんです。だけど、このゴリラが言うことを聞かなくて・・・・。」
チーフ・タケト「ゴリラだと?お前、後で、顔が誰か分からなくなるぐらいまて殴るからな。」
ジム「チーフ、お金を払って、店の人に謝りに行きましょう!!俺も一緒に行きますから。」
チーフ・タケト「ジム、お前は先に帰って温泉にでも入ってろ。」
魔王・ミナ「元魔王も堕ちたものね。よりによって食い逃げをするなんて・・・・・・・・あなた、お金持ってないんでしょ?いいわ、ひぎり焼きを買ってあげるから、大人しく逮捕されなさい。」
チーフ・タケト「このクソアマ!!なめたこと言いやがって!!ぶっ殺してやる!!」
頭に血がのぼったタケトが、魔王・ミナ達にもの凄い勢いで向かって来た。




