season 4 初仕事(地獄サイド)
倉庫の奥には、天井と床に何10個もの丸いノコギリが、回転して設置されたレールの上を行ったり来たりしていた。
ヨシゾウ「これが"サメ"と呼ばれる解体装置だ。この中にアンドロイド達を放り込んでくれ。いいか、お前ら、絶対サメの中には堕ちるなよ!!このサメは、魂をも切り裂く。このサメの中に堕ちると、死んで魂となったお前らは、消滅してしまうぞ!!もちろん、ケンイチ、お前もだ!!」
サキヤマ「こんな地獄で労働するぐらいだったら、消滅した方がいいぜ。」
ハマチ「そうだな、その方が楽になれる。」
ヨシゾウ「地獄で働いているということは、まだ改心の余地があるということ。真面目に働いていると、生まれ変わりが許される。どうしようもない残虐な奴らは、とっとと、このサメの中に放り込まれている。」
サキヤマ「生まれ変わっても俺はまた、万引き常習犯になる気がする。」
ハマチ「そうだな、わしも生まれ変わってもまた、泥棒かもな。」
ヨシゾウ「ハハハハツそれでもいいじゃないか。サキヤマとハマチの世界は今、1億人総活躍の時代らしいじゃないか。お前らみたいなのがいないと、警察の仕事がなくなってしまう。お前らは、必要悪というわけだ。」
サキヤマ「なんだそりゃ。また死んで地獄に来いってか。」
ハマチ「地獄からしたら、わしらは必要な魂というわけか。」
ヨシゾウ「まだ、地獄に来れるだけマシな方だ。この世界には、地獄の何万倍もある大きさの魂だってある。あるいは、もっと大きな魂だってあるはずだ。」
サキヤマ「はあ?言ってることが分からねえよ。」
ハマチ「なんなんだ、それは。もはや人間の魂じゃないだろ。」
ヨシゾウ「とにかく、倉庫の裏に置いてあるアンドロイド達を、さっさと運んで放り込め!!」
ケンイチ達は、倉庫の裏側に回った。すると、アンドロイド達が山積みにされていた。
サキヤマ「うおっこんなにあるのか!!」
ケンイチ「ざっと1000体ぐらいか。」
ハマチ「まあ、焦ってやっても仕方がない。ぼちぼちやろう。」
山積みになったアンドロイド達の側には、ドラム缶が2個置いてあり、その中には、虹色の玉がいっぱい詰まっていた。
ケンイチ「これは・・・・。」
ヨシゾウが少し遅れて歩いて来た。
ヨシゾウ「それは、空気電池だ。空気中のあるゆる気体を電気に換えて充電する電池らしい。その電池で、アンドロイド達は動いていた。サメの中に捨てるとき、ギャアギャアとアンドロイド達がうるさいから、胸の所にあるその電池を取り外していたら、ドラム缶2個分になってしまった。」
ケンイチ達は、1体60キロほどあるアンドロイドを担いで運び、サメの中に放り投げた。サメの中でアンドロイド達は、丸いノコギリにギザギザに切り裂かれ、細切れとなって深い底に堕ちていった。
何体か運ぶと、サキヤマとハマチは疲れて、動きが遅くなった。ケンイチは、最初は1体ずつ運んでいたが、だんだん慣れてくると、5体ずつ運んでいた。
サキヤマ「あのゴリラ、凄いな。」
ハマチ「ああ、あいつは化け物だ。しかも、真面目だ。」
ヨシゾウ「さすが、地獄の法則が適用しない男だ。そうだ、あいつに工事現場まで凝固剤を持っていってもらおう。おい、ケンイチ!!」
ケンイチ「はい!!」
ヨシゾウは、倉庫にケンイチを呼び、ドラム缶を指差した。
ヨシゾウ「ケンイチ、あのドラム缶を工事現場まで持って行ってくれ、中には凝固剤が入っている。」
ケンイチは、ドラム缶をヒョイと持ち上げて肩に担ぎ、工事現場へと歩いて行った。
ヨシゾウ「うおっあれを難なく担ぐとは・・・・あいつはもはや、この地獄建設のエースだな。」
ケンイチが工事現場に着くと、シリウス、セナ、セイジと何人かの死者の労働者達が、空中に浮かんでいる道をシャベルで馴らしていた。ケンイチは、シリウス達に向かって叫んだ。
ケンイチ「おーい、凝固剤を持って来たぞ!!」
シリウス「あ、魔王様。魔王様!!とりあえず、その辺りに置いといて下さい!!」
ケンイチが、凝固剤の入ったドラム缶を置いて帰ろうとすると、1人の青鬼が近寄って来た。
青鬼1「すまないが、ゴリラの兄さん、あの細い道の向こう側まで運んでくれないか。まずは、あっち側からその凝固剤を使おうと思ってね。」
ケンイチは、青鬼1の言う通りに、人が2人通れるかどうか微妙な細い道を、重さ200キロほどあるドラム缶を担いで歩いていると、向こう側から、青鬼2が歩いて来た。細い道に手摺はなく、周りや下側は谷底のように深く、針山の先がうっすらと見えており、堕ちると、針山に刺さって、不死身でないケンイチは死んでしまう。青鬼2は、少し小走り気味でケンイチに向かって来た。ケンイチは避けようとしたが、青鬼2は避けようとするケンイチに向かって、ショルダーチャージを食らわした。ケンイチは、ドラム缶を担いだまま、針山の谷底へと堕ちていった。
ケンイチ「うわああああ!!」




