season 3 覚醒(地獄サイド)
ケンイチは仰向けに寝転がって、想いにふけた。
ケンイチ(俺も月に行く!!月に行って、元の人間の姿に戻るんだ!!こんなところで、しかもポチなんかに負けるわけにはいかない!!)
寝転がったまま、顔を右に向け、遠くを見ると、さっき地面に置いた三日月刀が見えた。ケンイチの頭の中で、以前、三日月刀が言ったセリフが何度も繰り返された。
お前は心が勇者だ!!
お前は心が勇者だ!!
お前は心が勇者だ!!
ケンイチ(俺は・・・・勇者だ・・・・俺は・・・・自分を信じる!!)
ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク・・・・・・・・
ケンイチの動悸が、段々激しく速くなった。
ケンイチ(俺は、これからも立ちはだかる強敵を倒す、倒し続ける、そして月に行く・・・・だからまず、この目の前の強敵、魔王・ポチを倒す!!)
ドクン!!
ケンイチの心臓が、少し大きな鼓動をあげて平常に戻ったとき、体全体に冷気をまとい、白いゴリラとなってケンイチは立ち上がった。ポチにやられた傷は、自然治癒で完治し、着ている服に霜が降りていた。
ポチ「な、こいつ、進化しやがった!!」
ケンイチ「死中に活とは、こういうことを言うんだな。ゴリラモード・イエティだ!!いくぞ、ポチ!!勝負はこれからだ!!イエティ・パンチ!!」
ケンイチの冷気を帯びた拳が、ポチのボディに入った。
ポチ「グハッオエッこ、こいつ、なんて重いパンチを!!さっきまでとは全然違う、段違いの威力だ!!」
ケンイチ「もう一丁!!」
ドゴォン!!
もう一発、ケンイチの重いパンチが、ポチのボディに入った。
ポチ「オエエエエエッ」
ポチは、よろけながら走ってケンイチから少し距離をとり、魔法を唱えた!!
ポチ「ダイヤモンド・ギャラクシーシャワー!!」
ダイヤモンドの雨がケンイチに向かって降り注いだが、ケンイチをまとっている冷気に当たると凍り、5秒ほど停止して、勢いなくポタポタとケンイチの頭や肩の上に落ちた。
ポチ「な、俺の魔法が効かない!!」
ケンイチ「・・・・・・・・ポチ、お前に魔法は似合わない。男なら拳で語れ!!」
ポチ「クッゴリラのタケトみたいなこと言いやがって。」
ケンイチは、ポチに向かってゆっくりと歩いた。ポチは、ケンイチの冷気をまとったパンチを喰らったため、体温が下がり始めていた。ポチの体は無意識に体温を維持しようとして、無尽蔵だったポチの体力は消耗し始めた。
ポチの右頭が、ケンイチに向かって炎をはいた。ケンイチの体をまとった冷気が一瞬消えたが、また徐々に冷気をまとい、元通りになった。
ケンイチ「ポチ、お前の炎じゃあ、この冷気を打ち破ることはできないようだ。狙いは良かったが、残念だったな。イエティ・パンチ!!」
ケンイチは、ポチの3つの頭をそれぞれ殴り、ポチは横になって倒れた。
ポチ「ハアッハアッハアッハアッ」
ポチは、口を開けて息をするので精一杯のようだった。
与作「ポチさん!!」
ケンイチ「ありがとう、ポチ。お前のお陰で俺は強くなれた。自分を信じることができた。お前はそれぐらいじゃくたばらないだろ。また、いつでもかかって来い!!いつでも相手になってやる!!」
そう言うと、ケンイチは元のゴリラに戻り、三日月刀を拾って与作のところへと歩いて行った。
ケンイチ「おい、青鬼!!俺は元の世界に帰りたい。どうすれば帰れるんだ?」
与作「歩いて帰るのなら、三途の川から飛び込めば帰れるが、三途の川に行くには、鬼王様達の墓地を通らないといけない。」
ケンイチ「よし、さっそく案内しろと言いたいが、腹が減った。なにか食べさせてくれ。」
与作「バカ言え、なんでお前なんかに・・・・俺も腹が減ったなあ。よし、地獄食堂に行こう。お前、金持ってるか?」
ケンイチ「ない。」
与作「なら貸してやる。その代わり、働いて返せよ。お前は明日から、俺の元でバイトとして雇ってやる。」
ケンイチ「なんだと!!俺は1日も速く、元の世界に戻りたいんだ!!地獄で働いてる暇なんかない!!」
与作「まあ、ちょっと話を聞け。地獄から三途の川に歩いて行くには、ちょっとした交通料がいる。だから、ここで少しの間働いて貯金しろ、それにお前が労働者として働けば、闘いに敗れた俺とポチさんの顔も立つ。」
ケンイチ「交通料っていくらだ?」
与作「ざっと20万ぐらいだ。」
ケンイチ「まじか!!高すぎだろ。」




