勇者ケンイチ登場(勇者サイド)
勇者ケンイチは、キャバクラにはまっていた。
今日もゴールドドラゴンを倒し、報酬をたんまり貰ったので、パーティーのうちの1人、魔法剣士のセイジを連れて、キャバクラ・チョチョリーナに。
目当ては、人気ナンバーワンのちょっと小柄で肌白い、長い緑の髪で、歌うのが大好きなエルフ・レイコだ。
キャバクラに着くと、早速ケンイチは指名をした。
ケンイチ「レイコ。」
黒服「すいません、ただいまレイコさんは接客中でして。カオルさんならあいてますが・・・・。」
カオルとはカマキリのキャバ嬢で、昆虫人には大人気だ。
ケンイチ「はあ?お前なめてんの?俺を誰だと思ってるの?世界最強の勇者だよ。この店が、モンスターに襲われても助けてやらねえぞ。なんなら、今から闇の森に行って、ゴブリンを捕まえてきて、この店に解き放ってやってもいいんだぜ!!ゴブリンが暴れて、店はボロボロになるだろうなあ。」
黒服「あちらの席で、少々お待ち下さい。」
黒服はそう言うと、接客をしているレイコのところへ。
黒服「レイコさん、勇者ケンイチ様から指名が入りました。」
レイコ「マジで~、嫌だなあ。」
黒服「そんなこと言わずに。魔王を倒せるのは、勇者のケンイチさんだけなんですから。」
レイコ「勇者ねえ。」
レイコはそう呟くと、店の一番奥の席に座っているケンイチのところへ。
ちなみに、勇者ケンイチは身長2.5メートル程のゴリラだ。
レイコ「いらっしゃい、ケンイチさん。元気?」
ケンイチ「よう、レイコ。元気だぜ、なあレイコ、俺の女になれよ。」
レイコ「今はまだ、仕事が忙しいから恋愛はちょっと。」
ケンイチ「じゃあ、今度の日曜日に動物園に行こうぜ!!」
動物園て、ゴリラのお前が言うなよと、レイコは一瞬思った。
レイコ「日曜日は、他のバイトがあるから別の日に。エルフの女友達誘うから、そちらの魔法剣士のセイジさんと4人で行きましょう。」
ケンイチ「いいねえ。けど、セイジって頼りないんだぜ、こいつ、魔法も剣も中途半端だから。」
セイジは、身長1.7メートル程の頼りない感じの、顔がジャニーズ系の男だ。
ケンイチが、いつも通り、セイジのダメ出しを始めた。
ケンイチ「こないだもこいつ、闇の魔法使いと魔法で闘って、追い詰められて、俺が助けなかったら死んでたぜ、たぶん。」
セイジ「相手が女だったから、つい相手の土俵で。」
ケンイチ「お前はそれだからダメなんだよ、命をかけた闘いなんだぞ、相手が女だからとか関係ない!!だから、お前は勇者になれないんだよ。」
セイジは、ゴリラのくせに偉そうなこと言いやがって。絶対いつか殺してやる!!と、毎回キャバクラに来るたびに思った。
レイコ「でも、勇者って大変ね。なんか負けたらいけないみたいなプレッシャーというか、負けた瞬間、勇者じゃなくなるって感じ。」
ケンイチ「俺は、生まれた瞬間から自分のことを勇者だと思っている、自分がゴリラだなんて、一度も思ったことなんかないぜ!!」
それからケンイチの自慢話が始まった。自慢話には、
「こないだは、俺のゴリラパンチ一発で、オオワダ砂漠の巨大ムカデをしとめてやったぜ!!」
というような、やたらとゴリラパンチがでてきた。
自分のこと、ゴリラだと認めてるじゃん。と、レイコは思ったが、話のたびに「凄いわ。」とか、「頼もしいわ。」と誉め称えた。
時間がきたので話が終わり、帰り際にケンイチが、
「レイコ、愛してるぜ!!」
と言った。
はあ?何言ってるのこのゴリラ。もう死んでほしい、今すぐ死んでほしいと思ったが、
「ありがとう。」
と、微笑んだ。
「レイコは俺のことが好きだな。」
勇者ケンイチは、そう確信し、キャバクラを後にした。