第1章 彼女の初日はロッカーで。(後編)
「……」
美少年は、何ごとも無かったかのように、無言のままドアを閉めた。実華の周りは暗闇が戻り、驚きで飛んでいた意識が戻る。
「ちょっと!少しは反応してくれないとこっちが困っちゃうよ!?」
すぐにドアを開け、美少年に猛抗議。
明らかに実華が悪いのに、そんなコトはお構いなし彼に詰め寄る。
「じゃあ一応聞きます。あなたはそこから覗いていたんですか?」
お姫様みたいな顔立ちなのに、無表情な彼の視線が実華を突き刺す。
「…うん、見てた」
実華は正直に答えた。
言い訳ができる状況はではないし、元々、彼女は嘘をつけなかった。
「そうですか……」
美少年はそれ以上何も言わずにその場を離れ、自分の席に座る。
「え? 怒らないの?」
「怒ったところで何も変わらないでしょう? 別に見られて困るコトでもないですしね」
彼は冷静に、完璧に『別に気にしてない』風に振る舞っているつもりなのだろうが、白い頬が赤く染まっていた。
やはり、恥ずかしいのだ。
実華も自分の席、美少年の隣りの席に座った。
「ごめんね、本当に悪気は無かったんだよ?」
「気にしてないって言っているでしょ? 謝るくらいなら、もうこれ以上僕に関わらないようにしてください」
冷たい言葉を残し美少年は頬杖を付いて眼を閉じた。
「…よし!決めた!」
実華はしばらく何か考えているかと思えば、唐突に声をあげた。
そして、美少年の肩を掴み、言い放つ。
「ねぇ、私の友達になってよ」
「はぁ?」
美少年は思考が一度止まったようにじっと実華を見つめ、眼を鋭くする。「あなた、何言ってるんですか? 僕、関わらないで、とはっきり言ったつもりですけど?」
「細かいコトは気にしない!」
「……」
呆れて言葉が見つからない彼には理解ができないのか。実華と言う人間は、見るなと言われたら、無理にでも見たくなる生き物なのだ。




