第1章 彼女の初日はロッカーで(中編)
見とれていたと言える実華は、美少年(彼ほど、この言葉が似合う人間はいないだろう)がおもむろに黒板に向かうのを見て我に替える。
彼は黒板消しを手に取り、
(何がしたいの?)
黒板を綺麗にし始める。もちろん、実華にもその行動を理解できない。ただ好奇心旺盛な彼女にとって、美少年の行動は興味を持つのは十分だっだ。
(何? 何なんだ美少年君!)
黒板を一通り消し終わると、今度は自分の鞄をゴソゴソと探り始めた。
(? タオル?)
取り出したのは白い布。多分、タオルだろう。理解できない実華を置いてけぼりにして、彼は教室から出ていった。
(顔を洗いにでもいったのかな?)
ならば、すぐ帰ってくるはずだ。ここから出ない方が良い。
実華の読みどおり、美少年は2、3分で帰ってきた。再び、黒板の前に立つ美少年。先ほどと、特に変わった様子は見られない。あえて言うなら腕まくりをしている点と、タオルが濡れているくらい…
(まっ、まさか―)
そこまで考えて、ある可能性が見えてきた。そして、彼は実華の予想どおりの行動に出る。
(綺麗好き!? 綺麗好きなんだね美少年君!?) 美少年はタオル――もとい雑巾――でチョーク置きを丁寧に拭き始めた。なんという几帳面さ。
(綺麗好きなのか…なるほどね…)
納得する実華はなぜ気付かなかったのだろうか。彼が本当に綺麗好きなら、黒板だけではなく、教室を掃除すると言うコトを。
そして、なぜ焦らなかったのだろうか。
今、自分が隠れている場所は、彼に対してもっとも見つかりやすい場所だというのに。
がちゃり、と開かれるドア。対面する二人。見つかった実華は固まるしかなく。見つけた美少年も、やはり固まるしかない。完璧に、二人の時間が止まった。




