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8、涙が出るくらい好きなんだ

 その日のおやつのメイプルクッキーは好評だった。実は、オーブンがなかったので焼くのに何度か失敗した。

 みんなには内緒だけど、ちょっとこげちゃった失敗作がカバンの中にはたくさんある。食べられないことはないので、持ってかえって食べるよ。

 肉屋の前を通ると、この前の赤毛の女性が私をにらんでいた。

 何だろう?私何か悪いことしたかな?

 気になってはいたけれど、少し雨がぱらついてきたので家路を急いだ。家路と言っていいのかわからないけどね。

「ちょっと、どうしよう……」

 そして、途方にくれる。獣道を10分も進むと、雨は本格的になった。雨にぬれた山肌は、とても滑る。3歩進んでずるずる、2歩進んでずるずる。雨と、ドロと、落ち葉と、草の汁と、もう何がなんだか分からないくらい汚れた。木の枝や根っこにつかまりながら慎重に足をすすめる。

 滑落の恐怖におびえる。

「だめだ、雨は危険だ……明日、マーサさんの店に行けるだろうか?雨の日は休ませて欲しいと頼んでみよう」

 雨は2時間ほどで上がったので、次の日は何とか出勤できた。念のため早めに家を出たので早くついた。

 街の入り口付近でダーサにあう。

「ダーサ、おはよう。きょうは リヤカーない?」

「ああ、リエスおはよう。道がぬかるんでいるからな。今日はリヤカーは無理だ。変わりにこれさ」

 背中に大きなカゴを背負っている。カゴの中にはしょいこみたいな物が入ってるけど、どれだけ荷物を持って帰ってくるつもりだろう?

 しょいこは「山ガール」ブームのときに知った。30超えると、流行と聞くとなんでも飛びつこうとしちゃうんだよね。流行に乗り遅れる=年寄り、流行の最先端を走っている=若いでしょ!っていう勘違い?(遠い目)

「ちょっと帰りがいつもより遅くなるかも知れないから、店はよろしくな!」

「まかせる!ダーサいなくても だいじょうぶ」

「ぶはっ、いなくても大丈夫とか、俺、影薄くねぇ?」

 二人して大笑い。ダーサはまた、私の頭をくしゃくしゃして、出発した。

 あんまり早く店に着くと、マーサさんに気を使わせそうなので、昨日もらったお金でカフェに入ることにした。異世界で初めての外食です。

 店はオープンカフェになっていて、カウンターで飲み物を受け取り、テーブルに着く。

 10ほどのテーブルがあり、半分くらい埋まっている。

 カタンッ。

 私の前の席に、カップが置かれた。この街では相席は珍しくないけれど、それは席が埋まっているときのことで、空いているのに相席なんて、どういうことだろう?

 と、向かいの席を見ると例の赤毛の女性の姿があった。

 また、怒ったような顔をして私をにらんでいる。

 何を言うでもない、じーっと私を見ている。どうしたら、いいんでしょう?ちびちびジュースをすすりながら、その視線に耐える。こちらから、話しかけた方がいいのかな?と思って、もう一度赤毛ちゃんの顔を見ると、涙をにじませていた。

 今度は泣いた~!

「ダーサと……どういう関係なのよっ……」

 必死に搾り出した声で、赤毛ちゃんが問う。

 いやー、こ、これはもしかして?

「ダーサのこと すき なのか?」

 直球で赤毛ちゃんに尋ねると、赤毛ちゃんは、真っ赤になった。

 この子、かわいい!ダーサのことが好きで、私のこと嫉妬してたんだ。怒ったり泣いたり赤くなったり、なんてかわいいんだろう。ダーサが17歳と考えると、きっとこの子もそれくらいの年齢なんだよね。少女の純真な恋心か。おねーさん、応援してあげたくなるわ!

 ダーサが好きだから、こんな格好してる私が女だって分かったんだね。

 「好きな男に男装して近づく女」そりゃ、混乱するよね。警戒したくなるね。

 赤毛ちゃんは、こらえきれなくなったのか、嗚咽を鳴らしながら泣いている。

「なか、ないで、」

 と言っても、涙が止められないようで、カバンの中から昨日のクッキーを一つ取り出すと、彼女の口の中に放り込んだ。

 甘いもの食べると落ち着くでしょ?

 赤毛ちゃんは、びっくりして涙を止めた。

「おいしい、何これ?」

「まだ、ある、どうぞ」

 幾つかクッキーを取り出し、渡した。

「ありがとう」

 さっきまで私に怒っていたはずなのに、彼女は素直にお礼を言ってクッキーを食べた。行動がまだ子供だ。かわいい。

「わたし、ことば、まだへた、いっていること、わかる?」

 赤毛ちゃんは、落ち着きを取り戻して私の言葉に耳を傾けてくれた。

 言葉が分からず、お金もないので、マーサさんのお店で働かせてもらっていること。

 ダーサは私のことを男だと思っていること。しかも弟分扱い?されていること。

 そして、この世界では知り合いが少ないのでお友達になってくれると嬉しいことを身振り手振りを交えてゆっくり伝えた。

「友達?もちろんいいわ!この街のことなら大概のことは知ってるから、いろいろ教えてあげる!私の名前は、ルーカよ!15歳」

 じゅ、十五?中学生じゃないですかーっ!

 齢アラフォーにして、異世界で中学生のお友達ができました。23,4歳に見えるのに中学生とは。驚いた。

 そして、ルーカも私の年齢を聞いて驚いていた。

「えー?25歳なの?」

 違う、35です。でも、信じてもらえない。なぜ?

「とても25歳には見えない。同じくらいかと思ってた!」

 ああ、心の奥がきゅぅーっと締め付けられる。痛い、痛い。15歳に見える35歳って、日本じゃ痛すぎる!

 何だろうか、この世界は1年が365日じゃないのかな?そうかもしれない。だから、年齢の数え方が違うんだ。きっとそうだ。と、思い込むことにして痛みに耐えた。

 流石に、中学生女子のルーカは実におしゃべりで、色々楽しい話を聞かせてくれた。肉屋の向かいにある雑貨やの娘だそうだ。

 その日、おやつタイムになってやっと戻ってきたダーサの顔は不機嫌にゆがんでいた。

「リエス、ルーカと楽しそうにお茶飲んでいたって聞いたんだけど、本当か?」

 ぶっ。

「あはははっ、はははっ。」

 思わず笑い出してしまった。何、両思いじゃん。

 私のこと男だと思ってるから、ルーカとの仲疑ってるんだよね?

 分かりやす!こんなに分かりやすいのに、本人達気がついてないの?

「何、笑ってるんだよ!」

 ダーサがじろりとにらむ。

 さぁ、どうやって二人のキューピットになろうか。

 帰り道は、色々計画を考えて楽しかった。初々しい二人の恋にニヤニヤしながら馬小屋の扉を開ける。

 バタン!

 そして、すぐに勢いよく閉めた。

 油断したーっ!

 ハイジベッドに、怪我の手当てをした青年が寝てた!

 どうして馬がいないのか、なんで馬小屋にいるのか、なんで寝てるのか、いろいろ突っ込みどころ満載ですが。

 とりあえず、逃げようと思います。

8話目推敲不足の自覚あり。主要人物を出すために書き急いでいます。

完結してから考えます。

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