48 金持ちになる
私が欲しい物は米だ。
米、この世界にあるだろうか?あると信じたいが。
商業地区に着くと、トゥロンにも探すのをお願いした。とはいえ、米という固有名詞が分からないため、何と説明したものか。小さくて粒粒の食べ物。麦に似ているが、麦とは違う。そんな説明で分かるだろうか?もう一つ付け加えたのが「キュベリアにない珍しい食べ物」
二手に分かれて、米を探す。
実際に、米が手に入らなかったら、何を代用すればいいのだろう?それも考えながら見て回る。
お后さまに気に入ってもらうためには、いざとなったらオーパーツを使う必要があるかもしれない。できればそれは避けたい。
たっぷり2時間は商業地区を探したけれど、米は見当たらなかった。仕方がなくトゥロンとの待ち合わせの場所へと足を運ぶ。トゥロンは何か見つけてくれただろうか?
「女神よ、珍しい食べ物をご所望でしたな。これなど、いかがです?」
トゥロンは、目の前に葉っぱで三角錐に来るんだ食べ物を出した。
「これは……」
トゥロンから受け取り、葉っぱをめくる。
中から出てきたのは、おこわだ。
「トゥロン、これ、どこに売っていたの?」
うるち米じゃなくてもち米だけど、これでいい。
トゥロンは私のことを女神だって言うけれど、トゥロンの方がまるで私の勝利の女神だ。いつも、助けられてる!
トゥロンがおこわを買った店に行き、米がどこに売っているのか尋ねる。教えてもらったお店に行くと、もち米だけじゃなくてうるち米も売ってた。
うわー、嬉しい。
なんていうか、目的は別で探してたけど、やっぱり米は食べたい。
ちょっと多めに購入。
「トゥロンありがとう」
急いで迎賓館に戻る。もうすでに、日が傾きかけていた。
迎賓館に戻ると、キュベリアの侍女のふりをして、屋敷内に勤める侍女に探りを入れる。
当然、お后であるチュリさまについてのことだ。どんな人物なのか、あらかじめ情報があった方がいい。
曰く、
「とてもお優しい方です」
また、曰く、
「お子様を大切にしています」
人前に姿を見せないのは何故なのかという問いには、
「とても謙虚な方なのです」
「王の執務の邪魔にならないようにと身をお隠しになられていらっしゃいます」
「お子様を自ら御育てになっていらっしゃいますから、お時間が取れないのでしょう」
「後宮にいらっしゃる方たちの気持ちを逆なでしないように配慮なさっている」
色々な話を聞いたけれどね、結局分かったことは、お后さまは、優しくて気が回り子供を大切にしているということ。
優しくて気が回るなら、今回のメイクの依頼って、そんなに問題ないんじゃない?
怒りに触れるとかそういうことなさそう。
ただ、一つ引っかかるのは、まるっきり容姿についての情報が得られないということ。
なんだろうか、皆一様に、容姿には触れないというのは。人前に出ないので、姿を見た人がほとんどいないからなのかな?
せめて、御綺麗な方ですとか、かわいらしい方ですとか、そんな情報だけでも欲しかったんだけどなぁ。
仕方がない。化粧の方向性は本人を見てから決めるしかない!
優しい方という言葉を信じよう。
大丈夫。大丈夫。
ああ、不安で胸がきゅっ。
そんな自分に暗示をかける。大丈夫。お后さまは、子煩悩なお優しい方。メイクのでき一つで国を揺るがすほどお怒りになるはずはない!大丈夫。
とりあえず、現実から退避!メールチェックをする。
ネットバンクから入金通知。そして、吾妻さんからメールが来ていた。
『遅くなってすまん。仕事が立て込んでいた。入金したので確認してくれ』
100万円用意できたんだ。それとも、台数減らして3台で30万とかになってるかな?
じゃなくて、新規契約とかどうすればいいの?すっかり吾妻さんに連絡するの忘れてたけれど、私も携帯会社に行けるわけじゃないから契約できないよ!
ネットバンクにつないで、とりあえず入金を確認。
うわー、百万って、ゼロの数が多い!
1いち
0じゅう
0ひゃく
0せん
0まん
0じゅうまん
0ひゃくまん
0いっせんまん
「ぶっ!」
な、何?えーっと、10000000、あれ?ちょっと、何、この数字?
見間違い?
数え直すこと、5回。金融や経理の仕事とか経験ないから、ゼロの数をパッと見て幾らとかわかんないんだよねー。
「なんてことー!一千万の振込みなんですけど!」
私の伝え方がまずかった?
携帯1台100万円って伝わって、かける10台で1000万と勘違いしたとか?
いや、まてまて、いくらなんでもそんなに高いわけないだろうと思うよね?
吾妻さん、馬鹿なの?
何年こっちにいるか知らないけど、そんなに物価が上がったとか思ってるとか?
それとも、ラト同様、残念な人なの?
っていうか、1000万をぽんと振り込めるとか、いったいどういう人?




