38 トゥロンの良いところ
今何とおっしゃいましたか?
私の経験上言わせて貰う。
母親の口から「うちの息子どうかしら」という場合は、以下の3つ。
1、何かしら問題のある息子である
2、息子はまったく結婚に興味がない
3、親に内緒で付き合っている人がいる
相手が誰であろうと、母親がいう「うちの息子どうかしら?」は100%断るのが正解!
「私など、とんでもございませんです、ほほほのほほ」
言葉遣いが変なのは許して。動揺してるもの。だって、皇太后様の子供ってことは……王様か王弟でしょ?それとも隠し子でもいらっしゃいます?
「そう?そうね。息子もいい年だもの。リエスちゃんみたいに若い子にはかわいそうよね」
えーっと、私は若くないですよ?薔薇のリエスでさえ、25歳設定です。梨絵は35歳です。
「ほんと、息子ももう30歳超えてるっていうのに、いつまでもふらふら」
うっ。ご、ごめんなさい。
「あー、あの馬鹿息子、今年何歳になったかしら?早く身を固めてもらわないと!」
ああ、ご、ごめんなさいーっ。
自分のことを言われているわけではないけれど、心の中で平身低頭誤ります。
「で、では私はこれで……」
ドロンさせていただきます!と、言えればいいが、言えるわけもなく。
「あー、でも、本当にリエスちゃんみたいな娘が欲しい~!!」
皇太后様は、息子さん2人だそうです。もう、いい加減息子の顔を見るのは飽きたとか言ってます。
「また、来てね!また絶対に来てね!化粧してね!」
まるで友達に言うような気安さ。それでいいのか、皇太后様。
なんか冷や汗だらだら。ついうっかりタメグチきいちゃいそうです。
「皇太后様、そろそろお時間でございます」
官吏の声がした。
「そうですね。すぐに行きます。皆には先にはじめるように言いなさい」
皇太后様の声音は、どっから声出してるの?と思わず二度見するくらい、キリッとした大人の声だった。
変わり身がすごい。薔薇のリエスも真っ青だよ!
公務があるとかで、皇太后様は名残惜しげに部屋をあとにした。それを見計らったように、サマルーが迎えに来てくれる。
「どうやら、気に入られたようですね?」
「そ、そうですか?誰にでも、あのような態度をとるお方なのではないのですか?」
「とんでもないですよ。ここだけの話、元国王の縁談がなかなかまとまらないのは、皇太后様が色々と女性に難癖をつけるからだとか噂されるくらいですよ」
そ、そうだった。「うちの息子どうかしら」には4つめのパターンがあった。
4、お姑さんに大きな問題がある
クワバラ、クワバラ。
城を出ると、トゥロンが待機していた。
商業区域に入った頃、トゥロンに頼んでみる。
「トゥロン、ちょっと街を見たいんだけど、いいかな?」
「もちろん。なんなら、案内しようか?」
「ありがとう、でも大丈夫。えーっと、そのあたりの店にでも入って待っててもらえる?1時間ほどで戻ってくるから」
トゥロンは、片腕を胸の前に当てて、大きくお辞儀をした。
「仰せのままに」
悪い人じゃないんだけどねぇ。苦笑い。
さーてと、ネットオークションに出品するための品物を買わなくちゃ。
買うものは、グアマキコスプレグッズ。
主人公や、人気キャラのほとんどが兵士やら騎士やら武官やら。それっぽい衣装は武器屋かな?
って、無いよ!冒険者がいないので、武器屋もない!猟に使うための弓矢なんかはあるんだけど、戦争関係っぽいものは無い。
兵士や騎士って、公務員的な立場と考えれば、身に付けるものは制服だよね。支給されるか、専門のところで買うかってことかなぁ。普通の人がそう、買えないんだ。
がっかり……。
仕方がないので、日用雑貨、ミリアでは入手困難な食材、調味料などを購入。
オークションに出品する品物の方向性をまた考えないといけないなぁ。なかなか茨の道だ。
トゥロンとの待ち合わせの店まで行く。ちょっと早かったかな?トゥロンの姿が見えない。馬を連れているので、目立つはずなんだけどなぁ。どこ行ったんだろう?
「リエス嬢、女性を待たせるとは、トゥロンめはまだ修行が足りませぬ」
トゥロンは額を押さえて首を振っている。
「えーっと、どこへ行っていたの?」
「ちょいと、警邏の事務所へ行ってね。王都には各地の情報が集まるんじゃないかと思いましてね」
「え?もしかして、私が前にお願いした、行方不明の人の情報を聞きに言ってくれたの?」
うわー、トゥロンいい人だ!
「女性の頼みごとを断れる男など、この世にあろうはずもない」
ウインク一つ。
「どうやら、キュベリアの南西にある、サパーシュにここ5,6年ほど忽然と人が消える事件が何件かあるそうです」
「忽然と消える?」
「そうなんですよ。詳しいことは現地の警邏に聞けば分かると思うんですが……すまねぇ、あんまり役に立たなくてよ」
首を横に振る。とんでもない。私だけなら、それだけの情報を得るだけでもどれだけの時間が必要だったか。
だって、私、オークションのことしか頭になかった。
帰ることが優先順位一番なはずなのに、帰れないときのための行動ばかりで。本末転倒だ。
「ありがとう、それだけでも充分。助かるわ!」
サパーシュ、サパーシュってどこだろう。ユータの地図が今見れたら……。
ミリアについて、もう一度トゥロンにお礼を言う。
マーサさんのお店で、部屋を借りて薔薇のリエスから梨絵にもどって、王都で買ったお土産を渡す。
お土産と言っても、たいしたものじゃない。あまり立派なものにすると受け取ってくれないから、小さな置物とか、調味料入れる器とか。
マーサさんたちは、皇太后様のこととか聞きたがったけれど、話もそこそこに失礼して山小屋に戻った。
カバンからユータさんの地図を取り出す。
キュベリアの南西、サパーシュ。「鯖酒領」きっと、これが、サパーシュ。鯖の酒って。そういえば、鯖旨はセバウマ領のことだった。ユータさん、鯖好き?
サパーシュ領は王都から離れた場所にあり、黒丸は付いていなかった。
以前、国の名前考えて~と泣きついて、考えていただいた「サパーシュ」を使わせていただきました。ありがとうございます。




