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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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その後の話 小ネタ

逆ハー要素あり。嫌いな人は読まないでね

 プルルルルと、呼び出し音を聞くこと9回。

 カチャリと、出た音に思わず大きな声を出す。

「吾妻さん、朗報ですっ!」

 受話器から聞こえてきたのは「ピーという発信音の後にメッセージを……」という留守番電話の無機質な応答だ。

「ああっ!もう!なんで、吾妻さん出てくれないんだろう!」

 電話を置いて、はぁーっと大きなため息を吐き出す。

 1分でも早く、今の状況を伝えたいと言うのに。

 ……仕方がない。今のうちにできることをしておこう。

 今住んでいるのは、吾妻さんが自由に使ってくれと言った豪華なマンションの1室ではない。

 一応、住所的にはそこに住んでいることになっているんだけど、主に生活しているのはサンコーポ201号室。

 異世界とつながりのあるこの部屋を何日も開ける気にはとてもなれない。

 だって、もし、私のいない間に何かあって、異世界とのつながりが切れてしまったら……。

 うー。

 ぶるぶるっと背中を震わす。

 もう、全く、私は、往生際が悪いのかな。

 あっちの世界のことを忘れるつもりで日本に帰ってきたというのに。なんだか、結局……。

 膨らみ始めたお腹に手を当てる。

 まぁ、だってねぇ?ことがことだけに。

 こんなことになってしまった関係で……えーっと。この子のためでもあるもんね。

 と、言い訳がましいことを口にするのも何度目だろうか。

 本当は、忘れたくない。つながっていたい。

 ……あちらの世界では私は暮らせない。日本に戻る決意をしたというのに……。

「はー、でも、まぁ、何でこんなことになったのかなぁ……」

 椅子に座って天井をみあげれば、携帯がチャラリと着信音を鳴らす。

 吾妻さんかな?

 慌てて電話に手を伸ばす。

 あ、そう。相変わらず携帯電話……いわゆるガラケー「も」使ってます。

 あちらの世界でもお世話になった携帯電話。使えるうちは使っていたいなぁなんて、これも未練がましいかな。

 使えなくなっても、捨てずに持っているつもりだから、解約して電話機だけ持っていればいいのかもしれないけれど。

 ……なんとなく、このガラケーをパカリと開いて耳に当てて聞こえてくる吾妻さんの声を聴くのが好きだから。

 どうも、スマホで聞く声と印象が違うというか。単なる哀愁的な気のせいなんだろうけど……。

 携帯を開いて名前を見る。ああ、ユータさんからだ。

「もしもし」

「もしもし、元気かな?」

「ふふ、元気ですよ。昨日も電話したばかりじゃないですか」

「まぁそうなんだけれど、世の中がこんな状態だし、それに、僕たちの子のことも心配だし」

 僕たちの子……。

 ユータさんは、なぜか私のお腹の子のことをそう呼び始めた。

 異世界と日本とをつなぐ子供。特別な存在。

 秘密を共有している者たちの子だと……。だから、僕たちの子なのだということだ。

「心配してくれてありがとう。本当に大丈夫よ。それより、ユータさんの方は大丈夫なの?」

 ユータさんは、相変わらず世界のあちこちに「異世界とのつながり」を探して歩いている。

 突然異世界に迷いこんだり、異世界からこちらへ来たりしないように、見つけたらつながりをふさぐためだ。

「あー、ダメだなぁ。出国できそうにないよ。少し行動が遅かったみたいだ。この騒動が落ち着くまでは……足止めかなぁ」

 この騒動。

 そう、突然世界中を襲った流行病のことだ。非常に感染力が強いため、感染の広がりを抑えるために渡航制限が各国で設けられている。

 ユータさんのように、世界中を飛び回っている人間にとっては不便極まりないのだろうけれど。

「そっか……うん、でも仕方がないよね。というより、そちらの国は医療体制とかどうなっているの?とにかく病気にならないように気を付けてね!」

 アメリカやヨーロッパと違い日本では名前があまり知られていないような小国にユータさんはいっている。

 だから、情報がほとんど得られなくて、どうなっているのか心配でならない。

「大丈夫だよ。あっちよりはずいぶんマシな医療が受けられるから」

 あっちって、まさか異世界の話かな。

 そりゃ、まぁ、あの世界での医療は……医療というよりも、民間療法と呪いとごにょごにょ。

「僕のことよりも、絵梨さんの方こそ、気を付けて!本当はこんな時だからこそ、そばに行って助けてあげたかったんだけれど。ごめんね。帰国できることになったらすぐに飛んでいくから。あ、いや、帰国して2週間待機してからになるかもしれないけれど、その後はすぐに行くよ」

 ユータさんが力強い言葉をくれる。

 ……一人の私を気遣ってくれるのがよくわかる。

 私たちは、戦友のようなものだから。

 異世界を知る数少ない仲間であり、一緒にウォルフを退けるために戦った戦友。

「ありがとう。だけど、本当に大丈夫だよ。いざとなれば妹が来てくれるから。親はちょっと流行病にかかると重症化しちゃうかもしれなくて秋田から出てこないようにくぎを刺してあるけれど」

 まぁ、私もアラフォーだからね。親もそれなりの年なわけで。

「妹さんが来てくれるなら少しは安心だけれど、でも、僕にだからできることもあるだろう?」

 ユータさんにだからできること……。

 例えば、吾妻さんやラトと連絡を取ることとか?

 そうだよね。いくら妹だからって、言えないし。

 ……そうか。私に万が一何かあったときには……連絡してもらう必要があった場合……。ちょっと、確かに、なんかややこしいことになるかもしれない。

「で、さ、あの話なんだけれど……考えてくれた?」

 あの話……。

「ユータさん、本気なんですか?この子のお父さんになりたいって」

「もちろん!本気も本気だよ!まぁ、日本にほとんどいない僕みたいなふらふらしてる人間がお父さんだなんて、子供はかわいそうなのかもしれないけれど……」

 小さく首を横にふる。

 電話での会話なので、ユータさんには見えてないけれど。

 本当の父親には、会えないかもしれない子。

 会えることがあったとしても……。

 本当の父親は、父親として触れ合うことはできない。

 いや、鞄を使えばメイロン君くらいまでなら移動できないこともない。

 そう、鞄はまだ使える。つながりはまだ、使えるのだ。鞄が切り裂かれたときにもう終わったと思ったけれど。

 ……つながっていても、でも……。

 この子の成長に本当の父親は顔を出せない。

 運動会も、参観日も……。遊園地に行くときも動物園で象を見るときも。

 父親に肩車をしてもらった想い出も、両親に手をつないでもらう想い出も何も……。



ご無沙汰しております。読んでくれてありがとうございます。

どうしても、なんだか「今」の時代とリンクした話が思いついて書きたくなったので、唐突に書き始めました。これで半分くらいかな。


それでもって、連載時から評価方法が変更になりました。★ぽちして評価していただけると嬉しいです。

賛否両論ある続きだと思うので、気がむいたら感想などもお願いします。


あー、久しぶりすぎて、ユータさんって、一人称僕だっけ?ってなってる。

吾妻さんは俺だし、リエスのことは「君」って読んでたとはっきり覚えてるんだけどな。

アパート名は調べた。そうか、サンコーポ201号室だったか……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] がんばれ、アラフォー女子。病院へいくのも大変(感染リスク)だけど、きっとなんとかなるよ。 [一言] 昔は母子手帳に父親の名前を書く欄があったんだけど、今もあるのだろうか。
[一言] お待ちしてました。このまま連載再開だとさらに嬉しいです
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