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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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263 孤独

「ぐあっ」

 だめだ……。

 弓が重たくて引けない。

 観光で触った弓なんかとは、本当に全く違う。

 そりゃそうか。より遠くまで飛ばせるために、より威力を増すために、弦の強さがあるんだろう。

 何とか弦を引く。

 けれど、力いっぱい引いても弦が動くのはほんの10センチほど。矢を放ったとしても飛ぶというよりは、落ちるという感じだ。

 さらに、引くことに全力すぎて、狙いを定めるどころではない……。

 ……。

 もう少し、弦が柔らかい弓が無いか聞いて、変えてもらおう。


 すごすごと城へと戻っていく。

 弓が使えないときのことも考えた方がいいかもしれない。

 ……。

 また、オーパーツを?


 ……。この世界の技術水準で再現できるものを、私は持ち込んだ。

 紙……。

 そして、新しい投石器。

 紙は、軽い気持ちだった。普通にある物だし、地球では、中世には存在したものだ。紙の替わりになる物、木簡はすでにこの世界にもあったから……。

 だけれど、驚きの声をあげ、紙はどれほどすごいものなのか皆が口をそろえて、言い合った。

 国を発展させる。紙のあるなしが国力に差を生む。

 つまり、争いの火種に……戦争を誘発する可能性すらあるということだ……。

 平和的なものだと思っても、そうであるとは限らないのだ。

 ……。

 吾妻さん……グアルマキート戦記の中の久司である、吾妻さん……。いくつもの戦火を潜り抜けた吾妻さんは、どう向き合っていたんだろう。

 出会いからして「オーパーツを持ち込むな」と言っていた吾妻さんだ。

 吾妻さんも、携帯電話は日本と繋がっていたんだから火薬だろうがニトロだろうがなんだろうが、作り方を教えてくれと頼めば知識は得られただろう。

 だけど、人々を救うためとか、守るためとか、どんな理由があろうとも持ち込みはしなかった。

 ……。

 投石器の件に、オーパーツを持ち込むなといったのには、理由があるんだろうか。

 元々投石器はあった。ただ、威力の勝る形の物というだけだからオッケーだったのか。

 何の基準なんだろう?

『吾妻さん、投石器……この世界になかったのですが、知識を持ち込んでもよかったの?』

 メールをする。

 返事はすぐには帰ってこなかった。

 ぎゅっと目を固くつぶる。

 やだな。

 私の判断一つで、オーパーツが何とでも動かせるとか。

 神様にでもなったつもり?

 ……。怖い。

 怖い。

 持ち込んでいい理由も、言い訳も、全部私の気持ち一つなんて……。

 怖すぎる。

 ……。

 まだウォルフの姿を見ていない。

 だけれど、もし、目の前で私たちを殺そうとする人がいて……。

 身の危険を感じて……。

 そんなときまで、冷静な判断なんてできるんだろうか?

 あと数日でウォルフが責めてい来るというこの状況に置いても、まだ、どこか、対岸の火事というか、実感がない。

 目の前で人が血を流し、倒れる姿を見たら……。

 もし、今回は大丈夫だったとしても、この先、私……。

 吾妻さん……。

 うっかり、火薬というものの存在を口にしちゃうようなことまで止められる?ずっと誰にも言わないで置ける?

 私の故郷では、2度の大きな戦争があって、1つの爆弾で何万人も死ぬような戦争で……。

 それは、今のこちらの世界からはずいぶん未来の話になるだろうけれど……。

 でも、この時代と同じような「中世」と呼ばれる地球では、火縄銃で織田信長が天下統一を果たしたり……。

 火縄銃っていうのは、それまでの刀や槍や弓での戦い方をする相手にはそれは脅威で……。

 ねぇ、教えるつもりがなくても、口を滑らせちゃったりすることもあるんじゃない?

「ボスは孤独」

 唐突に、吾妻さんを心配するオーシェちゃんたちのことを思い出した。

 ああ、心許せる者……誰かをそばに置けない吾妻さん……。

 分かる。今、本当に、理解したような気がする。

 意図せずうっかり漏らしてしまう危険。

 ……人里離れた、あの別荘……。

 もしかして、吾妻さんは老後はあの別荘に1人でひっそりと暮らすつもりなんじゃないだろうか?

 のんびり湖で釣りをして、温泉に浸かって……。

 時々誰かに食料を運んでもらうだけで、誰とも会わない生活……。

 もし、年を取って……認知症にでもなって、いや、認知症でなくても、若いころのことを誰かに話したくなって……。

 つい、日本のことを色々と話をしないように……。

 話を聞いた人間が悪用しようと思えば、世界をひっくり返せるようなこともたくさんある。

 どうしよう……。

 私も、同じだ。

 日本に帰れなかったら……。

 鞄をたとえ手元に置かなくても、それでも……。

 ぽろりと口にしてしまうことにも危険なことがあるに違いない。

 誰とも一緒に居られない……。

「ボスは孤独」

 そして……。

「私も……、孤独……」


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