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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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259 港町の女

 港町では、建設されたばかりの船着き場の取り壊しが行われていた。

 そして、船着き場に使われていた木材を再利用して投石器を作る準備をしている。

 街の人間は、誰も慌ただしく動き回っている。

 兵士じゃない。

 他の街の人間じゃない。

 この街の人間でも、商人じゃない。

 漁師を探さなければ。

 漁師小屋……日本だと、海岸にあったりするよね?

 地引網をするような海岸があるだろうか?とりあえず、海沿いに沿って進む。小屋らしき場所を発見。

 馬を下りて、小屋に向かう。

「すいません、どなたかいませんか?」

 返事を待っても帰ってこない。

 小屋の戸を押し開け中を覗き込む。

 投石器設置など戦争の準備で漁どころではないからだろうか……。

 誰もいない……。

 だけど、中には漁に使うであろう様々な道具があった。

 私が探しているもの……。

「あった!」

 手にとり、使えるかどうか強度を確かめる。

 パソコンで調べた。地球でも同じような文明の時代にできたんだから、できるはずだ。

 だが、同じ世界じゃない。

 もし無理そうなら、別の方法を考えなければ。

「ウルさん、強度を知りたいの。どれくらいの重みに耐えると思う?」

 ウルさんは、実際に試してみましょうとロープ状になっている部分を小屋の梁に引っ掛け、ぶら下がった。

 ウルさんの体重を支えている。

 これだけの強度があれば……大丈夫そうかな……。想像していたよりも強い。

「誰?!」

 小屋の外から声が上がった。

 女性の声だ。

「あ、勝手にごめんなさい、怪しい者ではないのです」

 って、関係者でもないのに勝手に小屋に入り込んで中の物を漁ってるのに怪しくないわけがないよね……。ははは……。

 小屋から姿を現すと、日に焼けた健康そうな30代の女性の姿があった。

 女性は私とウルさんの姿を見て、数歩後ずさる。

 うん、まだ怪しんでるよね。そりゃそうだ。えっと、どう信用してもらえばいいかな……。

 あ、そうだ。

 少し先につないである馬を指し示す。

「私たちは王都から戦争準備に必要な物を探しに来たのです」

 女性は馬の姿を見て、少し緊張を緩めた。

 ウルさんには、私の意志が伝わったようで、すぐに馬の元に行き、小屋のそばへと引っ張って来た。

 間違いなく私たちの乗ってきた馬だと分かるように。

 この世界で馬は非常に貴重だ。使える者は、城に仕える者や、王に使用を許された者などかなり制限される。つまり、馬が使える人間は身分が確かな者だという証にもなるのだ。

 馬の扱いに慣れているウルさんの様子を見て、女性はホッとしたような表情を見せた。

 そして一転、協力的な態度になった。

「王都から、戦争準備のためといっただな?何さ探してるだ?」

 私は、もう一度小屋に入って、先ほど強度を確かめたものの端を引きずって来た。

「見つけました。私が探していたのはコレです」

「漁網?」

 そう。探していたのは漁網。地引網とか投網とか種類はよくわからないけど。

「これは、どれくらいの大きさがあるのですか?広げて見てもかまいませんか?」

「ええだよ。手伝うだ、ちょっと待っててくんろ」

 そう言うと、女性は、パタパタと駆けて行き、数分で戻って来た。

「何でも、王都から戦争準備のためにきたんだと」

「わちらで手伝えばええんか?」

 なんと、3人ほどの女性を連れてきてくれた。

 こうして、それぞれが端を持って、漁網を広げてくれた。

 大きい。でも、これで足りる大きさだろうか?

 広げられた漁網の端からテンポよく歩いて歩数を確かめる。

 アラフォーなめんなぁ!

 綺麗な歩き方レッスン講座も通ったよ!

 一時はもうひたすら習った歩き方を意識して歩き続けたさ!背筋をピンと伸ばし、頭の上をひもで釣られているのをイメージする。手のふり、足のつま先からかかと……。歩幅は一定に。

 そう、一定の歩幅で歩くと美しい。大体、私の歩幅はこの歩き方だと60センチ。だから、漁網が何歩分か分かればかける60センチで大体の大きさが分かる。

 念のため、同じところを3度歩く。歩数は半歩程度の誤差。

 形は正方形だ。一辺の長さはおよそ20メートル。

 だめだ。少し小さい。もう少し大きさが必要だ……。

「これより、大きな網はありませんか?」

 女性たちが顔を見合わせる。

「無いだ。その大きさが一番大きな網だよ」

「戦争で必要なのは、もっと大きな網け?必要なら、今から作るだよっ!」

 作る?

「今から作って、4日後……いえ、3日後には間に合いますか?」

 運搬や加工する日数も合わせると、3日……本当は2日半で欲しい。

「大きさにもよるだ」

 私が、欲しい大きさ、そしてできればこんな形にしてほしいという要望を木の枝で砂浜に書いて示す。

「一つで良いのけ?だったら2日あればできるだ」

「んだ!旦那たちが何やら作って頑張ってるんじゃ。わちら海の女も手伝えることがあるなんて光栄だな。すぐにとりかかるだ」

 女性たちは、お互いに頷きあい、二人は人を呼びに行った。

 残りの二人は、漁師小屋へ入っていき、色々な材料を準備し始めた。

 その様子を見て、頭を下げるしかない。

「よろしくお願いします」

「ああ、まかせるだ。丈夫できれいな網目の作るだよ」

 戦争がはじまる……。

 街の人たちは、恐怖に打ち震えているわけじゃない。

 それぞれが懸命にできることをしている。いや、できることがないかと探して動いている。

 投石器を作るために働いている人たちの方に目を向けると、力仕事をしている男の人たちがいて、手伝おうとしている子供たちがいる。

 軽い物を運ぶ手伝いくらいはできる。

 女性たちは、食事や飲み物を用意して運んでいる。

 ……。

 私も、私ができることを……。


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