表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
257/303

256 サンコーポ201にて

 朝食ついでの簡単な打ち合わせ後、カーベルさんとトゥロンはすぐに人を集めて色々動き出した。

 ランちゃんとオーシェちゃんにも、聖女として街の人たちにお願いに出掛けた。

 考えをまとめないと……。

 部屋に戻り、ベッドに腰を下ろす。

 投石器は船に対して威力を発揮する兵器のようだ。だが、準備するための時間が少なく、設置台数も限られる。だから、あえて敵に情報を渡し、投石器の設置がない場所におびき寄せる。

 上陸する場所が特定できれば、兵が準備万端で迎え撃つことができる。

 だが、ウォルフもそれくらい想定しているだろうし、そこまでの情報も流れるかもしれない。

 ……。

 どちらにしても、これらの準備はトゥロンをはじめトルニープの人たちがすることだ。

 私は、投石器のためにキュベリア側の森の木々を使わせてもらう許可を取らなければ。狼煙で伝えてもらうことができるだろうか。それとも、森を抜けて誰かに書簡を届けてもらった方がよいのか。

 ……。それは、するべきこと。

 私のしたいことは……。

 戦争を止めることだ。

 戦争の準備は動き出している。だが、戦争を止めるための準備は……。

 一つは同盟を進めることだ。

 それも、進んでいる。何も要求しない形だけの同盟。

 ウォルフに「我々5国を相手にするつもりか!」と圧倒的な戦力の差を見せ、侵略を諦めさせるためのものだ。

 ウォルフがどんな国か分からない。もしかすると、5国相手と言っても、まったくひるむことなく突き進んでくるかもしれない。

 他にも、何か戦争を止めるための方法はないんだろうか?

 ギレンが、どこまでウォルフを動かす力があるか。ギレンを捕らえて、ウォルフに諦めさせる?ギレンにそれだけの地位がウォルフにある?ギレンが捨て駒である可能性もあるだろう。ギレンやその手の物を捕らえたから戦争が止められるとは思えない。

 他に何か手がないのか……。

 海での戦い……。

 日本は島国だし、過去には幾度となく経験している?歴史でならった「元寇」。あれは、台風か何かで、攻めてきた船が沈んだから助かったとかじゃなかっただろうか?

 台風……。そんな天災が偶然起きるのに期待するわけにもいかない。

 海軍とはどうやって戦うんだろう?

 海での戦い。

 戦艦大和はなぜ沈んでしまったのか?

 船と船で大砲を打ったり、ぶつかったりしたの?魚雷とか潜水艦とか……飛行機から爆弾投下したりとか……。

 どれも、オーパーツだ。参考になるような話じゃないよね。

 もっと、そう、スペインの無敵艦隊とか、黒船とか、そういう時代ではどうだったの?いや、すでに大砲があったのか。

 じゃぁ、もっと昔……。

 パソコンで調べようと思って、鞄の中に頭を突っ込もうとして、部屋にはユータさんだけじゃなくミュイロン君もいるであろうことを思い出す。ユータさんはもう事情を知っているからいいけど、ミュイロンくんにこの不気味な宙に浮く顔を見られるわけにはいかない。

 廊下部分につながりはあるから、そこでユータさんに電話をする。

 玄関には、また宅配便の箱が増えてる。

 もし、どうしても日本に帰りたくなったときにと、通販で買ったグッズだ。救命ボートとかいろいろ。一つがでかいから、箱だらけ。

 ……。ユータさんがいる間に、箱を開けて中身だけにして、段ボールは資源ごみに出してもらおうかな……。なんだか、中身も重たそうだなぁ。救命ボートとか、鞄を通らないんじゃない?

 あー、もしそうなら、無駄な買い物しちゃった……って、コール音を聞いている間に考える。

 何だろう。戦争が迫っているのに、日本を感じると、現実味が無くなっちゃう。

「あ、ユータさんですか?」

 部屋にいるミュイロン君に聞こえるといけないので、声を潜める。

「あの、部屋でパソコンを使いたいのですが、ミュイロン君とか……」

「今、外にいるんで大丈夫ですよ」

「外?」

「投石器の模型の材料を買いに出たんですが、ホームセンターに工作室みたいなところがあって、そこで作ってます。いろいろな工具も置いてあるし、材料が足りなければすぐに買い足せるんで。ミュイロン君も、こっちの世界で生活させると決めたので、色々と見せないといけないので連れて出てます。自動車見ては驚き声を上げたりするんですが、子供は順応が早いよ。もう楽しくて仕方がないみたいだ」

「そうですか。よかった。ミュイロン君が幸せそうで。えっと、それから模型なんですけど、言い忘れてたんですが鞄を通過できる大きさに限りがあるので」

「うん。大丈夫。ミュイロン君は通れるけど、大人は通れない大きさだよね」

 あ、そっか。

 それで大体大きさ分かるか。

「まだ少しかかりそうなんだけど、部屋に戻る前に電話するから。安心してパソコン使ってください。って、僕が部屋の主じゃないのに言うのも変だけど」

「ふふふ。じゃぁ、お願いします」

 電話を切って、つながりを移動させ、パソコンのある場所へ。

 ああ、そういえば部屋に入るのは久しぶりかも。ミュイロンくんが来てからは廊下しか顔出してないし。

 部屋の中には、ユータさんの荷物とか、食べ物を食べた後とか、多少生活感がある感じはしたけれど、さほど散らかってはいない。

 あの山小屋も、男の人の一人暮らしにしては整頓されてたもんなぁ。まぁ、押し入れの中はすごく物が押し込まれていたけれど。

 あちこちに布をかぶせて、ミュイロン君に文明の利器を見せないようにしてあったけど、それも必要ないよね。

 ユータさんは、女性の部屋であまり勝手なことはできないと気を使っているのか、布が掛けてあるところはそのままだ。

 パソコンの電源を入れ、立ち上がるまでに、布を撤去することにした。

 テレビなどの機械類。エアコン、冷蔵庫、電子レンジ。それどころか、流しなどにも布をかけておいた。

 ユータさんはどうしてたのかな?料理はしないだろうけど……ミュイロン君に隠してたときには、トイレとか洗面所とか風呂とかどうしてたんだろう?って、今はどうでもいいか。

 大量の布。

 これは、グランラで買ったものだ。懐かしいとしか言いようがない。

 布は、適当に折りたたんで部屋の隅に置く。

 立ち上がったパソコンで、検索を……。ん?何で検索すればいいんだろう?

 海戦……と。

 あ、ガレー戦時代の海戦の情報もあった。

 戦い方、えーっと……。

 パソコンの画面に映し出される文字を次々と目で追っていく。

 そして、参考になりそうなリンクがあればそこも見て、情報を集める。

 ……。

 だめだ。

 少しも参考にならない。船同士をぶつけるというような戦術は船がないからできないし、火矢や投石器など、すでに考えてあるこのばかりだ。

 相手から船を奪ってぶつける?

 どうやって奪う?

 待って、私、また戦い方を考えてる。違う、戦争を止めたいんだよ。

 圧倒的な戦力差を見せつければ、相手は尻尾を巻いて逃げていくはず。

 ……こちらにも実は船がたくさんあると思わせる?

 どうやって?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ