248 王の承認
「アウナルス王代理を示す印、派遣地での全権委任を示す印」
「まさか、そんな……」
ギレンが息を飲む。
アウナルスの……王?
「まさか、現宰相ともあろうお方が、この印の真贋を見誤るようなことはございませんよね?」
先ほどのギレンの言葉を揶揄したような言葉がウルさんの口からでる。
「み、認めん。アウナルスが、敵国の王が後ろについた王など、トルニープの行く末を危険に晒すような真似ができるか!」
確かに、ギレンの言うことは最もだ。
「アウナルスの後ろ盾を得た覚えなどないが……どういうことだ?」
カーベルさんが驚いた顔をしている。
あ、そりゃそうだよね。トルニープはアウナルスにいつ攻め込まれるかってビクビクしていたんだもん。いったいどういうことだって思うよ。
私もびっくりだよ。ウルさん、いやボスである吾妻さんがそうとうな地位にあるとは思ったけど、その部下であるウルさんが王の代理までこなすような重要人物だったなんて……。
「カーベルさん、後で話をしましょう」
吾妻さんはトルニープに攻め込むつもりは無いと言っていたこととか、ウルさんが信用に足りる人間だとか。話すことはたくさんある。いや、そもそもカーベルさんが私を信じてくれていなければ、私の言葉を信じてもらえないだろうけど。とにかく、今この場で説明するのは難しい。
私の言葉に、カーベルさんが小さく頷く。
そう、今はギレンからトルニープを守ることが先決だ。
「敵国だと考えていたのは、あくまでも兄、前王である。私が王となれば、出来うる限り平和的関係を築くつもりだ」
トゥロンが、いち早くギレンの言葉を否定する。
「そんなことが信じられるとでも?貴様自信がアウナルスに騙されているんじゃないのか?」
騙すもなにも、本当はまだアウナルス側とトゥロンが話をしたことないんだけどねぇ。
「そ、そもそも、聖女というその女もグルじゃないのか?ミュイロン王子を都合よく登場させるなんて……」
うわっ。やばい。
ここに来て、ミュイロンくんを出したことが裏目に出てしまった。
確かに、アウナルスがミュイロンくんを攫い、聖女を使ってミュイロン君を取り戻してあげる。感謝する王は、聖女の言いなりになる。知らない間にアウナルスに取り込まれる。みたいな図式が成り立たないわけでもない。
ギレンめ!こんな時だけよく頭が働きすぎ!
んー、そうだ。
「私をトルニープへと連れてきたのは、陛下……いえ、前王自身です。私の意志ではありません」
「は?何を言う!お導きがあったとでもいうつもりか?」
私は、ウィッグごとフードを取り、口元を覆っていた布を外した。
「私を、お忘れですか?”貧相な女”ですけど?」
ぐぅっ。自分で貧相な女とか言わせるな!
いや、言う必要もなかったんだけど、でも、化粧して顔が分かりにくいかと思ったから、印象深い言葉で思い出してもらおうと思って。
思って、出た言葉が、何度もエロキモに言われた貧相だったという……。あああ、人生何が役に立つのか分からないね。
「お、お前は、まさか……」
「よかった。覚えていたのですね。じゃぁ、私が、自分の意思ではなく、前王の命令によりキュベリアからトルニープに連れて来られたことはご存知ですよね?」
ギレンの額に汗が見えた。
「私は、アウナルスの手先ではありません」
「そうだ、彼女はアウナルスの手先なんかではない!」
え?
舞台下から声が上がった。
舞台の右端にある階段を上がり、彼は、ギレンを背に、私の前に立った。
「梨絵……」
ああ、どうして……。どうして、今、ここに、いるの?
本物?
本物だよね。だって、手に屋台のうどんチップス持ってるもん。
「無事でよかった……。」
「あ、あの……」
今更、どんな顔して会えばいいの?
何で、何で、何で……。
「聖女……このために、梨絵は姿を消したんだね……」
「ラト」
違う、違うんだよ。
私は……。
「大丈夫だよ」
ラトは、私の手に入ったうどんチップスをもたせると、ギレンに向き直った。
「予の婚約者がアウナルスの手のものという戯言を撤回していただこう」
は?
はいーーっ?
「ラ、ラト、こ、婚約者って?どういう??」
いつ、私が、ラトと婚約した?
「え?あ、そうか。婚約者といには気が早かったか……。まだ指輪渡してなかったね」
にこっ。
違う、違う、いや、違うって!
そりゃ確かにプロポーズされたような、されてないようなだけど、私の意志は?
私、さよならしたよね?
ちゃんとさよならの置手紙書いたよね?あれを読んでなんでプロポーズを受け入れられるとか思ってるわけ?
「あ、あなたは……」
突然現れたラトに、ウルさんもトゥロンもカーベルさんもギレンも戸惑ってる。
うん、そりゃそうさ。誰あんた?だもんね。
「前王の弟トゥロンは、カーベル、智の宰相と言われたお前が推す人物なのであろう?一国の主として相応しい人物か?」
ラトの質問に、カーベルさんが深く頷いた。
「アウナルス王の代理人からの承認だけでは不満が残るというのであれば、予も、トゥロンがトルニープの次期国王になることを承認しよう」
え?何を言ってるの?ラト……。
「キュベリア国王、クリュラートの名において」
クリュラート?
誰、それ……。
出たー、来たー、ぎゃはーっ。
この場面でうどんチップス持参とか、やってくれるな、ラトよ・・・。




