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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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239 祭の朝

 がんばったよ、私。

 ああ、今なら分かる。うん、あの台詞、あの台詞を言っちゃう気持ちが。

「燃え尽きたよ……真白にな」

 って、本番はこれからだっての!

 ここで燃え尽きては駄目じゃんっ!

 ベッドの上に倒れこむようにして寝っ転がって、電池が切れた。

 ここまで働きまくったことが、今まであっただろうか?

 祭の準備に、東奔西走。

 知ってる?奔って字は、走るって意味なんだよ。つまり、東に走り、西に走り、とにかく走り回るって……。ああ、そうだ。忙しい年末のことを師走って言うよなぁ。12月は師までも走るほど忙しいって。そうかぁ、忙しいっていうのは、走るって言葉で表現するんだなぁ。

 と、疲れきった頭でぼんやりと考える。

 何とか準備は終わった。明日は、いや、もうあと何時間後かには祭が始まる。

 最後に、カーベルさんに渡された進行表に目を通す。

 ああ、だめ。まぶたが下がってき……。


「おはようございます。お姉様~!」

 ドンドンとドアを叩く音がする。

「お姉様、晴れましたよ!よかったですね!祭日和です!」

 ドンドン。

「朝食はどうしますか?用意しましょうか?屋台で食べますか?」

 ドンドン。

 屋台?

「もう、幾つかの屋台はやってますよ。皆、祭を楽しみにしていたようで、すでに広場周辺にはたくさん人が集まっています」

 ドンドン。

「ふあっ、祭!」

 慌てて起き上がり、鍵を開けドアを開く。

「オーシェちゃん、私、寝過ごした?」

「おはようございますお姉様。大丈夫ですよ?朝食はどうしましょう?用意しますか?外で食べますか?」

「あー、せっかくなので、祭の様子を見ながら外で食べます。あの、皆さんはそれぞれ好きなようにしてください。午後の鐘がなったら、集合しましょう」

 それぞれまだ、頼んだことが残っている。

 聖女の奇跡の見世物の打ち合わせは、昨日のうちに済ませてある。しかし、まだユータさんに頼んであった道具の一部が揃っていないのと、家屋に頼んである大道具の受け取りも今日の午前になっている。だから、午後の鐘がなった後、最終打ち合わせと練習をして、それから本番というすごくタイトなスケジュールになってる。失敗は許されないけど、多少失敗したからといって大丈夫なように、二重三重に仕掛けをしてある。ランちゃんにも、午後の鐘の後には練習への参加をお願いしてある。

 

 簡単に身支度して街娘の服装で祭の行われる広場へ足を運ぶ。

 突貫工事のため、まだ舞台の設置は続いている。とはいえ、後は手摺りの設置など細かい作業が残るのみで、半円上の舞台の設置はすでに終わっている。足場となっている場所は、広場から見れば布で隠されているが、裏に回れば、太い丸太が何本も見える。裏には関係者以外回れないように、ロープが張られ、見張りの兵士が立つ予定だ。

 舞台左前には陛下が座る席が設けられ、ている。舞台と同じ高さにある、それより一段二段下がった高さに、貴族たちの席がある。舞台の右前は座席も段もなく市民に開放される。

 舞台は広場の一番北側に配置されている。舞台の後ろは少し空間を置いて建物がひしめいている。

 広場の西側に、ずらりと並ぶのは、貴族が無料配布するB1グランプリ風の屋台だ。

「これはまた、トルニープもすごいことをしますね」

 振り返ると、いつの間にかチョビンの姿があった。

「チョビンさん、すごいこと、とは?」

「食料を無料で配布することですよ。それほど財政に余裕があるとは聞いてなかったが……いや、余裕があったとしても考えられない」

 チョビンが、立ち並ぶB1グランプリ屋台を見て息を吐いた。

 まぁそうだね。日本の祭だって、祭で無料配布するのは芋煮とかつきたての餅とか色々あるけど、一つの祭でこんなに多種多様なものが配られることはまずない。

「これ、政府主導じゃないんですよ?貴族たちが自主的に自腹で行っていることです」

 私の言葉を疑うように、チョビンが目を見開く。

「まさか……。貴族が庶民のために?」

「あー、純粋に庶民へ施したいという人もいますが……自分の虚栄心のためにという人が多いですよ?この屋台は人気の順位を競うんです」

「なるほど、上手く貴族の心を動かして財布も動かしたというわけか……しかし、無料にすると民衆が押し寄せて大混乱になるのではないか?下手すれば暴動に発展するような危険なことを……」

 まだ朝なので、無料配布屋台は準備中だ。しかし、チラホラと並びはじめている人の姿はある。

「大丈夫です。ちゃんと並びますよ」

 並んでいる人の姿を示す。

「まさか!無料でもらえる物を我先にと人が押し寄せるのは目に見えていますよ。今は人が少ないから並んでいるように見えるだけで……よほど警備の人間を増やさなければ混乱に陥ります」

 ぐふふっ。チョビンの驚く顔を想像して、思わず笑いが漏れる。

「大丈夫ですよ。王都の皆は、並ぶことに慣れていますから。もし、列を乱すような人がいれば、それはよそ者です」

 聖女の炊き出しで、ガイルさんたちをはじめとする皆に、散々列に並ぶことを教え込んだのだ。今ではもう列を乱して我先にというものは王都には居ない。

 チョビンがまだ何か言いたそうにしている。

「庶民はこちら側、貴族や貴族と取引のある商人らは、並ばずにあちらの優先受け取り口から受け取れるようにしてあります」

「ほう、なるほど。それで、庶民と同じものを口にするということに侮辱を感じる者も、並ばずに手に入るという優越感で黙らせるというわけですか」

 まぁ、本音は邪魔なだけ。並べっつっても「私を誰だと思っている」とか言い出しそうだもん。機嫌を損ねてせっかくの祭を台無しにされても迷惑だからね。

 チョビンは、王都へ入れたことへの感謝を述べて去っていった。婚約者の移動は馬車で行われ、それなりの家に隠されているのではないかとの予想から、貴族周辺の馬車の行き来から調べるそうだ。

 祭ってことで、使用人も浮かれて口が軽くなっているといいね。

「必要な荷物の搬入経路の確認が終わりました」

「ありがとう、ウルさん」

 聖女の奇跡を行うために、ユータさんの協力も得て用意したイリュージョン用のアレコレ。本番まであまり人目に付かないように運び込むにはどうすればいいのかをウルさんに考えてもらったのだ。

「随分と、兵士が紛れ込んでいるようですね」

「え?」

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