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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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220/303

220 ひかえおろー

 カーベルさんの屋敷の一室に移動する途中、トゥロンは部屋の前に立っている兵の一人に「カーベルを呼んでくれ」と声をかけた。

 通された部屋にはランちゃんがいた。

 どうしよう。この話は、ランちゃんにも聞いてもらったほうがいいだろうか?

 ……。すでに、聖女の影武者をお願いしている。うん。聞いてもらえばいいか。

 ランちゃんの隣に腰を下ろす。トゥロンは、ランちゃんの前に座った。

 兵の一人が持ってきてくれたお茶を飲む。

「トゥロン様」

 先ほどカーベルさんを呼んでくるように頼んだ兵が、トゥロンの耳元で何やら話している。

「どうしたの?」

 ランちゃんは気になったことを素直に口にした。

「女神、カーベルは先ほど城へ向かったそうです。何か急な動きがあったようで」

「急な動き?何があったの?」

 何が起きてるの?

「ギレン宰相からの使者が来たということしか分かりません」

 ギレン宰相から……。

 考えられることとしては、先ほどルイス姿で約束をとりつけた祭りの件だ。

 もと宰相であり、過去の祭りの準備にも携わったであろうカーベルを呼び、準備の手配をさせるつもりだろうか?

 そうだとすれば、速い。

 ギレンの行動は想像以上に速い。

 こちらも、急がなければ。

 本当は、カーベルさんもいる場で話が出来ればよかったんだけど、そんなに悠長なことをしている時間はなさそうだ。

「トゥロン、本当はカーベルさんにも一緒に聞いて欲しかったけれど……。カーベルさんには今から言うこと、後で伝えてくれる?」

 伝達の伝達って、どこかでズレが生じちゃうこともあるかもしれないけど、トゥロンなら大丈夫だよね?

「それから、ランちゃん、今から言うことは、他の人には黙っていて欲しいんだ」

 ランちゃんには口止め。ふと漏らした情報が何か思いもよらない方向に向いては困るから。

「わかった」

「分かりました」

 トゥロンとランちゃんがほぼ同時に頷いた。

 チラリと、部屋の入り口に視線を送る。

 トゥロンはそれだけで私の気持ちを汲んでくれた。ドアを開けると、外にいる兵に声をかける。

「しばらく部屋には誰も近づけないでくれ」

 そして、ドアを閉めると鍵をかけた。

「え、そんなに重要な話なの?」

 ランちゃんの顔が引き締まる。

 再びトゥロンがソファに腰をかけたのを機に、口を開く。

「まず、約束を一つしてください」

 トゥロンとランちゃんが頷いたのを確認すると、ゆっくりと話し始めた。

「革命ですが、王都で行われる祭りが終わるまでは実行しないでほしいのです」

「王都で祭り?昔はあったけど、今は……」

「女神、いつ行われるかわからない祭りが終わるのを待てというのは、流石に……」

 まぁそうだよね。ここ何年か祭りは行われてないんだから、次いつ行われるかなんてわかったもんじゃないという気持ちは分かる。

「女神は、カーベルから話を聞いていませんか?副将軍から祭りの打診を宰相にしたところ、色よい返事をもらえなかったと……」

「今朝聞きました。ですが、状況は変わったはずです」

 私の、自信に満ちた表情を見て、トゥロンは小さく息を飲んだ。

「まさか……。いや、もし、女神の言うことが本当であれば、急にカーベルが城に呼ばれたのはそのことで?」

「たぶん」

 大きく息を飲んで、少しだけ天を仰いだトゥロンが私の手を取った。

「女神、あなたのお力なのですね。ああ、何と言うことだ。女神には出来ないことなどないのか……」

 あるある。

 結婚とか、就職とか……凹。

 って、久しぶりに思い出したわ。日本における、私の現実を!……。……。

「女神のすばらしさを知れば知るほど、私めなどが、傍にいたいと望むのは、畏れ多いことなのではと」

 畏れ多いとか、何それ。

「トゥロン、畏れ多いっていうのは『畏れ多くも先の副将軍水戸光圀公にあらせられるぞ』とか、そういう時だけでいいから」

 って、日本の思い出にひっぱられ、わけの分からないこと言っちゃった。

「え?誰?水戸光圀公?リーさんの故郷の有名な人?」

 今まで黙っていたランちゃんが会話に参加し始めた。

「まぁ、有名といえば、多分副将軍では群を抜いて有名だとは思うけど……」

 でも最近の若者は知らないかもしれないなぁ。あんまり時代劇とか放送しなくなったし。それに、お婆ちゃんが好きで見てたから私は良く知ってるけど、核家族で祖父母と同居してないと見る機会がないかもしれないなぁ。

 お婆ちゃん、助さんが黄門様になっちゃった~って驚いてたなぁ。あれは、私が上京するころだったかなぁ。

「とにかく、畏れ多いっていうのは、どっちかっていうと、トゥロンやランちゃんみたいな王族に対して庶民の私が言うことだから」

「えー、リーさん、全然私なんて畏れ多いとか思われるような立場じゃないから!」

「そうですよ、女神!」

 トゥロンとランちゃんが意気投合して私の言葉を否定する。

「うん、だから、私たちの間で畏れ多いとか、そういうの無し、それでいいよね?それに、別に私がすごいわけでもなんでもなくて、聖女としてのちょっとした情報網があると思ってもらえるといいかな?……、で、それで、続きなんだけど」

 ルイスのこと言っておいた方が話が早かったかな?

 とにかく今は時間がない。無駄な話はすっ飛ばす。

「トゥロン、約束してくださいますか?近々行われるであろう祭りが終わるまで、革命を起こさないと」

 トゥロンは、私の真剣な目から視線を外さずにいる。

 大きな決断だろう。革命時期に関わることの決断は。

「兄さん、疲弊している国民の楽しみを奪うようなこと、駄目だと私も思う。リーさんの言うとおり祭りが行われるなら、革命はその後した方がいいんじゃない?」

 ランちゃんの言うことにも一理あるよね。楽しみを奪うようなことはしないほうがいいっていうのも分かる。私の理由はそうじゃないけど……。

「わかりました。1ヶ月以内に祭りが行われるならば、それまでは革命をしないと誓いましょう。ですが、1ヶ月より先のことはお約束できません」

 トゥロンの言うことも最もだ。近々と言って、待った挙句ずっと先だったらたまったもんじゃない。

「ありがとうございます」

 だけど、ギレンの言葉と、早々にカーベルさんが呼ばれたことから考えれば、1ヶ月以内というのもありえなくは無いだろう。もし、それよりも後だったとしても、日程さえ決まっていればまた交渉すればいいのだ。

「では、トゥロン、参考になるかどうか分かりませんが……。確かな筋からの情報ですが、情報源は明かせません。それでも宜しければお伝えしたい情報が一つあります」

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