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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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203/303

203 キュベリア王

『ウルが、得た情報をおいそれと漏らすわけは無い。君が知っているということは、君が関係者だという何よりの証拠だ』

 ええーっ!もしかして、私、吾妻さんにかまをかけられたってこと?言質取られたってこと?

 やられたっ!

『ウルのやつ……君を危険に晒すとは……』

『違います!ウルさんは逆に、私に協力してくれてるんです!』

『君は、何をしているんだ?』

 おっと、しまった。やぶへびがいっぱいだー。

 どうしよう。いい訳、いい訳、えーっと。

 だめだ。こんな時にはこの言葉しか出てこない。

『内緒です』

 汗がだらだら。

 吾妻さんからはすぐに返信がある。

『すぐに、君のところへ行く』

 え?吾妻さんが来るの?

 吾妻さんに会える?吾妻さんに。いったいどんな人だろう。

『……それが出来たらどんなにいいか……』

 って、来ないのかい!

 私、ちょっと残念って思ってる?私、吾妻さんに会いたいのかな?

『色々終わったら、会いに行きますよ』

 うん。きっと会いたいんだ。日本に帰る前に、一度吾妻さんに会おう。直接会って、お礼を言おう。

『嫁に来るのか?』

『飲みに行きます』

『はははっ。いい酒を用意しておくよ』

 今日のメールはここで終了かなと、携帯を鞄にしまおうとしたときメールが届いた。

『君に会いたい』

 ……。

『待ってる。だから、無茶なことはしないでくれ。必ず、無事な姿を見せてくれ』

 心配してもれえることが嬉しい。

 そして、心配させてしまっていることが苦しい。ごめんね。

 ごめん。

 それから、ありがとう。

『約束します。だって、イケメンと噂の吾妻さんの顔見てみたいですからね!』

 軽い調子のメールを送る。

 メールは顔が見えないからこういうときは有難い。

 私、今すごく複雑な表情してると思う。

『おう。いい男に磨きをかけて待ってる』

 ふふっ。

『禿げる前に頼むよ』

 ははっ。

『了解!』


 次の日、ウルさんと相談して、港町にエボンさんを派遣することにした。ウルさんの読み通り、ギレンがウォルフから船を買いつけ戦争に利用しようというのならば、港町に動きがあるはずだ。

 船着場の工事の進行状況は当然のことだが、もしウォルフから傭兵や兵士を迎え入れるのであれば食料確保など別の動きもあるだろう。

「今日は、エボンさんが別の仕事をしますから、ガイルさん変わりにお願いします」

 と、オージェ君の言葉に

「まかせてくだぁさい!」

 ガイルさんが破顔した。

「勘違いしないでよ?出世じゃないんだからね?ただのエボンの代わりなんだからね!」

 と、ガイルの顔を見てオーシェちゃんが頬を膨らます。

 最近は、街の人たちに炊き出しのルールはしっかりと定着し、わざわざルールを無視する人はいなくなっていた。

 並びさえすれば、食べ物にありつける。至極簡単なルールなのだから。

 並ぶことが困難な人達への配達も、ガイルさんを中心に上手く回っているようだ。炊き出しを手伝ってくれる人も、もう何も言わなくてもすべて分かってくれている。

「また、増えてるね」

 炊き出しの周りの露天に目をやり、オーシェちゃんに耳打ちする。

「そうなんですよ。福引券を配っている飲食店の人たちが、噂を聞きつけて次々に露天をだしているんですよね~」

 炊き出しの横に、聖女の滴を使ったものとか、ちょっと見慣れない食べ物を売っていた結果、それを目的としたお金を持った人たちもたくさん炊き出しに集まるようになった。

 金を持った人たちが集まるっていうことは、儲かるということだ。

 そもそも、この世界の飲食店は酒とセットになっている店が多い。つまり、店の売り上げのほとんどは夜に集中する。

 この炊き出しは午前から午後の明るい間に行われる。そこに露天を出すことで、新たな顧客を獲得できるというわけだ。しかも、露天でもお買い上げ金額に応じて福引券を配布している。

 福引で、メープルシロップとか欲しいものが並んでいるのを見て、福引券目当てで飲食をする人も後を絶たない。

 ま、つまり、露天を出すと売れるよーという噂が、飲食店に広まったので露天が増えたのだ。

 今ではちょっとした市場状態。

「じゃぁ、あとをお願いね」

 そして、いつものように炊き出しを皆に任せてウルさんと貴族めぐりに向かう。

 いつまでもずるずるとするわけには行かない。

 ウルさんに、密書がボスの手に渡るのは何日後なのか確認したところ、3日後ということだった。

 だから、3日後にはウォルフのことをトゥロンに伝えるつもりだ。

 国内のことを、国外の人が先に知るというのは流石にダメだろうと思ったからだ。

 だから、あと3日は王子暗殺事件の真相究明に奔走する。

 ルイス姿で馬車に乗り込み、ウルさんが御者台に乗ろうとしたとき、男がやってきて何かをウルさんに手渡した。

 それを見たウルさんは、すぐに馬車の中へと乗り込み、声を潜めた。

「ルイス様、今連絡がありました。キュベリアの情報が入りました」

「キュベリアの……」

 ウルさんの顔色は決して良くない。

 噂通り、キュベリアもアウナルスと戦うつもりなんだろうか。

「少し前に、キュベリア王の婚約者が姿を消したそうです」

 え?

大爆笑

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