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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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120/303

120 アリバイ工作?

 トゥロンが苦しそうな顔をする。

「女神、もし私めのことを思ってのことであれば、私のために女神を危険に晒すことはできません……」

 そうだね。トゥロンならそう言うと思ってた。

「違うわよ。トゥロンのためというよりは私のわがままなの」

 もちろん、トゥロンのためでもある。単純にランちゃんやメイヤさんを助けたいという思いもある。

 だけどね、一番の理由は私のわがまま。

 トゥロンに夢を託したいという私の勝手な思い。

 この国の惨状を見ても何もできない自分にいい訳をするために。トゥロンの人質という鎖を外してあげる。それくらいしか自分にはできないから。

 何もできない自分じゃないよって。そういい訳したいから。

「身内のトゥロンには申し訳ないけど、私、陛下が好きじゃないわ。ちょっと腹が立ってるの。だから、陛下にぎゃふんって言わせたいの。それが理由よ。そんな私怨めいた理由じゃ駄目かな?」

 ランちゃんがおかしそうに笑う。

「私も実は陛下は嫌いなの」

 もし、陛下に聞かれていたらただではすまないような言葉を口にする私達に、メイヤさんもトゥロンも何も言わない。

「ところでリーさん、ぎゃふんってどういう意味ですか?」

「さぁ?故郷でも実際にぎゃふんって言った人見たこと無いからよく分からないわ」

「じゃぁ、ぎゃふんって言わせたくても言わせられないかもしれないのね?でも、面白いわね!」

 私に賛同しようとするランちゃんにトゥロンは良い顔をしない。

「だから、トゥロン、私のためと思ってランちゃんとメイヤさんをキュベリアに!」

「ですが……」

 今尚言葉を続けようとするトゥロンの肩に手を置く。

「時間がありません。どうか、急いで。私なら大丈夫です。守護されし者の印が本物だという連絡は今日中に入るでしょう。陛下が私を害することはできないはずです。街に着いたら、馬車持ちのサニーネさんの一座を探してください。ちょうど巡業を終えて街に戻っているはずです。サニーネさんにこれを渡してください」

 2通したためた手紙のうちの一つをトゥロンに手渡す。

「ランちゃん、メイヤさん、急な話で、しかも勝手に決めてごめんなさい。一度だけ聞きます。トルニープを去りたいですか?それともここに残りたいですか?」

 ランちゃんとメイヤさんはお互いの顔を見て、それからトゥロンの顔を見てから強い目を私に向けた。

「もう、ここでの生活は嫌です」

 と、ランちゃん。

「これ以上、トゥロンの鎖でいなくてもいいのね、ありがとう、リーさん」

 メイヤさんは涙をにじませている。

「サニーネさんへの手紙には、王都まで2人を連れて行って欲しいと頼んであります。ランちゃんとメイヤさんは、サニーネさんの前で1曲披露してください」

 2人の歌はとても魅力的だ。

 サニーネさんも歌のプロだから2人のすばらしさがすぐに理解できるだろう。手紙には、3人で歌えるように楽譜をつけてある。一座の臨時メンバーとして同行させてもらえるなら、サニーネさんの一座もランちゃんたちも負担が少なくて済むだろうし、目くらましにもなると思うんだけど……。

「キュベリア王都についたら、サニーネさんにシャルトの元に連れて行ってもらってください。もしかして、領地に戻ってシャルトがいなければサマルーのところへ連れて行ってもらってください。そして、これを渡してください」

 2通目の手紙をランちゃんに渡す。

 シャルトに宛てた手紙。

 色々と悩んだ。トゥロンの家族だと書くべきか。トルニープの王との繋がりを書くべきか。もしそんなことをしたら、シャルトの立場がまずくなるんではないか?

 悩んだ結果、ストーカーから守って的な簡潔な内容の手紙になった。

「手紙と一緒にこれを渡してもらえる?」

 あのときの薔薇の髪飾りの一つをハンカチに包んで託す。これでリエスからの手紙だと分かるはずだ。

「トゥロン、私はハーブを探しに行くと言って、秘密の道の橋近くにいます。おやつの時間の後です。ランちゃんとメイヤさんをサニーネさんの元に届けたら、今度は私を連れ出してくれますね?」

 トゥロンは肩膝を突いて、まるで、女王陛下に対するようなしぐさでトゥロンは私の手を取った。騎士がそうするように、うやうやしく。

「必ず、女神のために戻りましょう」

「信じてます」

 

 トゥロンは、ランちゃんとメイヤさんの肩を抱いたり腰を抱いたりして、白薔薇宮を後にした。

 大丈夫。身内であるトゥロンでさえ、ランちゃんとメイヤさんだと分からなかったんだから。

 

 私は急いで1階の大広間に戻る。

 そして、オーパーツに手を伸ばす。

 

 ランちゃんとメイヤさんの歌声をあらかじめ録音しておいた。リモコンで再生ボタンを押す。

 窓に近づけて音を外へと漏れるようにする。

 これで、2人が白薔薇宮を出たことを知られないようにする。


 オーパーツを使ったことを知られなければ大丈夫だよね?


 昼食の支度をする時間になった。

 一度、外に出て王城の調理場からのお手伝いさんたちに指示を出す。

「ランちゃんとメイヤさんには前にも頼んだことがあるから、慣れてるので卵を泡立ててもらいます」

 と言って、卵と泡立てるための器と泡だて器(のようなもの)を持って白薔薇宮の中へ。

 そして、すぐに戻り、調理の続きをする。

 ある程度時間を置いてから、白薔薇宮へ戻る。

 急いで、卵を器に割り、鞄の中でハンドミキサーで泡立てる。

 手で泡立てれば結構時間がかかるけれど、ハンドミキサーならあっという間だ。

「メレンゲができました」

 卵を泡立てるのに時間がかかると調理人たちは知っているため、ランちゃんとメイヤさんが白薔薇宮の中で泡立てたと信じて疑いはしないだろう。

 これはアリバイ工作パート2ね。


 昼食が済むと、白薔薇宮へ戻り、また歌を流す。

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[良い点] 良いかどうかはわからないけど勇気あり。 オーパーツ残して全員で逃げるかと思ってた。
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