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ヨルムンガンド

作者: BloodyBishop

 有る小さな星が有りました。

 とても小さなその星には陸地が六割と湖が四割しかありませんでした。

 その星の陸地の五割をゾゾが残りの陸地の一割と湖をググが仲良く二人で分けていました。

 日が昇ると、ゾゾは陸地で麦と果物を育て、ググは湖で魚と水鳥を狩って生活をしていました。

 ゾゾは収穫の五ツの内の一ツをググにググは狩りの五ツの内の一ツをゾゾに分けっこしていたので、いつも二人は新鮮な食べ物を手に入れてとても元気に暮らしていました。

 日が落ちた夕食は、いつも二人でゾゾの造るビールとパン、ググの取って来た魚と鴨肉のローストを魚の油をランタンで灯しながら仲良く食べるのが二人の楽しみでした。

 今日の出来事や明日は何をしようかいつも二人は楽しく語らい、たまにゾゾの農作業を手伝ったり、ググの狩りを手伝ったり、退屈しないで毎日を送っていました。

 ある朝、ググとゾゾが別々の家で寝ているとドーンと言う凄い音で二人はビックリしてベットから飛び起き外に飛び出しました。

 「おはようググ、無事でなにより」

 「ゾゾおはようそちらこそ無事でなにより」

 そう言って、大きな音のした二人の家の丁度真ん中に大きな穴を見つけました。

 気を付けて、二人でその穴を覗くと底に小さな蛇が倒れていました。

 二人は小さな蛇をいつも二人で夕食を取るテーブルに連れて行き、ググは薬草から取った薬をゾゾは鳥の肝から作った軟膏を蛇に与えました。

 ある日蛇は元気になり二人にこう言いました。

 「私はヨルムンガンド、天原から落ちて来た蛇です。 お二人にはお世話になりました。

 お礼に一つだけお二人が望む物を叶えて差し上げましょう。」

 ところがゾゾもググも今のままで何も望まないとヨルムンガンドに言うと、ヨルムンガンドは大粒の涙を流して悲しみました。

 ゾゾとググはあわてて、何か決まったら必ずお願いするのでそれまで一緒に三人で暮らそうと伝えるとヨルムンガンドは大変喜びました。

 暫く三人で楽しく暮らしていましたが、ヨルムンガンドは沢山食べどんどん大きくなりました。

 ある日とうとう食べる物がなくなりヨルムンガンドは言いました。

 「どちらかのお手伝いをして私も働きます」暫く二人は顔を合わせて考えました。

 ゾゾが言いました「ググに手伝ってくれ」

 するとググが言いました「ゾゾに手伝ってくれ」

 するとヨルムンガンドは困った顔をしてあの時のように大粒の涙を出して悲しみました。

 それを見たゾゾは「ググお前が悪い」と言いました。

 ググは腹が立ち言いました「ゾゾお前が一番悪い」二人は泣き止まないヨルムンガンドをよそに、

殴り合いの喧嘩を始めました。

 ググがゾゾの上にのしかかりコブシを振り上げた時ヨルムンガンドが言いました。

「やめて下さい、では明日はゾゾにお手伝いしましょう。その次はググにお手伝いしましょう」そう言いました。

 ゾゾは少し勝ち誇ったように「良いだろう」と言いました。

 ググは残念そうに「良いだろう」と言いました。

 その夜は初めてググは自分の家で一人夕食を食べました。

 外では楽しそうにゾゾとヨルムンガンドが夕食を食べながら話しています。

 ググは早めに寝る事にしました。

 次の日の夕方ググが狩りから帰るとヨルムンガンドとゾゾは夕食のテーブルで楽しそうに今日の出来事を話しています。

 ググはゾゾがうらやましくなりました。

 するとヨルムンガンドが言いました。

 「明日はググにお手伝いしますね」そう言うとググは勝ち誇ったように「良いだろう」と言いました。

 ゾゾは残念そうに「良いだろう」と言いました。

 その夜は初めてゾゾは自分の家で一人夕食を食べました。

 外では楽しそうにググとヨルムンガンドが夕食を食べながら話しています。

 ゾゾは早めに寝る事にしました。

 何日か経つとゾゾとググは話をしなくなり、ヨルムガンドが手伝ってくれる前の日は、一人で夕食を取るようになり、お互いの食べ物を分ける事も無くなりました。

 でもヨルムンガンドはどんどん大きくなっていきます。

 ある日麦畑でゾゾがヨルムンガンドに言いました。

 「ググの大事な物を満月の夜全部食ってくれ」ヨルムンガンドは言いました。

 「私にはググがとても大事です、貴方が私をググよりも大事でググもそう望むならそうします」

 ゾゾは言いました。

 「大丈夫お前はググより俺の大事な者だ、ググはもう自分の物はいらないと言っている」

 次の日ググが湖のボートの上でヨルムンガンドに言いました。

 「ゾゾの大事な物を満月の夜全部食ってくれ」ヨルムンガンドは言いました。

 「私にはゾゾがとても大事です、貴方が私をゾゾよりも大事でゾゾもそう望むならそうします」

 ググは言いました。

 「大丈夫お前はゾゾより俺の大事な者だ、ゾゾはもう自分の物はいらないと言っている」

 その日帰ると久しぶりにゾゾとググは夕食をいっしょに食べて有る事を決めました。

 隣合わせに建つ家の真ん中にヨルムンガンドが落ちて来た穴を真ん中に線を引きました。

 ゾゾが言いました「ググここから先は俺のもんだ、入ってくるなよ!」

 ググが言いました「ゾゾここから先は俺のもんだ、お前こそ入ってくるなよ!」

 又二人は暫く顔も合わせませんでした。

 満月の日の朝ヨルムンガンドは用が有ると山のように大きくなった体をズルズル引きずりながらどこかに出かけました。

 二人はそれぞれの仕事場に着き考えていました。

 「ちかごろ寂しいな」

 ゾゾは育てた果物を美味しそうに食べるググの顔を思い出していました。

 仕事が手に着かず、家に戻ってゾゾの家に行こうとしましたが

 二人で引いた地面の線の前で立ち止まりました。

 「ここから入れないな」寂しくなって反対側に向かってトボトボ歩き始めました。

 ググはボートの上で取った魚を美味しそうに食べるググの顔を思い出していました。

 仕事が手に着かず、家に戻ってググの家に行こうとしましたが二人で引いた地面の線の前で立ち止まりました。

 「ここから入れないな」寂しくなって反対側に向かってボートを漕ぎ始めました。

 ゾゾはとうとう家の反対側の湖の岸辺に着きました。

 ここまで歩いたのは初めてでした。

 手に持った包みからパンとビールのビンを出して岸辺に腰掛けながら太陽の光が反射してキラキラ輝く湖を見ながら昼食を取る事にしました。

 「ググと又仲直りしたいな」そう思うと涙が止まりませんでした。

 ググはとうとう家の反対側の湖の岸辺に着きました。

 ここまでボートを漕いだのは初めてでした。

 ボートに置いた包みから乾し魚と湖の水を水筒に詰め浜辺の太陽の光で陽炎がユラユラしているのを見ながらお昼を食べる事にしました。

 「ゾゾと又仲直りしたいな」そう思うと涙が止まりませんでした。

 すると浜辺にゾゾが見えました。

 ググは少しためらいましたが、ボートをゾゾに向け思い切り漕ぎだしました。

 ゾゾは湖からググがボートでこちらに向かうのが見えました。

 ボートから飛び降り水を蹴って走るググにゾゾも走り寄りお互い謝りました。

 「ググごめん」「ゾゾごめん」そう言って抱あいました。

 仲直りしたゾゾとググはボートで家まで向かいました。

 でも家の前に来ると二人の家も晩餐のテーブルも無くなっていました。

 家の前に行くととヨルムンガンドが居ました。

 ヨルムンガンドはググの大事な友達ゾゾとゾゾの大事な友達ググを飲み込みました。

 そしてゾゾの大事な麦畑と果樹園と小さな星の陸地の五割を飲み込みました。

 そしてググの大事な湖と小さな星の陸地の一割を飲み込みました。

 魚も果物も麦も水鳥も薬草もそこに有るすべてを飲み込み空を見上げましたが翼がないので空は飲み込めませんでした。

 そしてゾゾとググが大事だと言ってくれた自分を尻尾から飲み込みました。

 そしてヨルムンガンドは小さな星になりました。

 我が名は世界蛇ヨルムンガンド

 おわり


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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界観がはっきりしていると思います。 曖昧な、閉じた世界から、徐々に明瞭になって行く流れは良いと思います。また、登場人物(?)も、役割が明確です。 そこには、善も悪もない。ただ大事に思い合…
[一言] 悲しい…。 二人は後悔しなかったのかな? 私なら…彼を…ヨルムンガンドを憎むと思う。 「こいつを助けなければよかった」と。 そして…ヨルムンガンドの優しさは無責任だ。 きっとこうなるとわか…
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