時代のローテーション
西暦2118年 6月7日(森永6年)
今日は図書館に行ってきた。
最近僕は、今の身分制度に疑問を抱いていたからだ。
2033年、今から85年前に「士農工商法」が発令されて、僕たち一家は商売をしているがゆえに、身分は超最低になった。それは学校で習う前に、親から聞いていた。
でもなぜ日本はそうなったのか?なぜ才能や能力があっても身分の壁のせいで出世できないのか?納得できない僕は日本の歴史の過程を知りたかった。
図書館の日本史コーナーには、たくさんの書物が並べられていたので、僕が選んだのはなるべくわかりやすくて漢字が少ない『馬鹿ったれ野郎でもわかる日本史』にした。
それによると、今から100年以上も前の日本人はマゲも結わずに着物も着ずに、まるで西洋かぶれのような生活を送ってたようだ。
元々日本人は太古の昔から、武家やサムライの時代だったはずなのに、なぜか1868年頃から2025年までの短い間、西洋の影響で人種が変わったような存在になっていた。この本に掲載されている写真にも、半分お尻が見えているような面白い物を着ていた。説明が書きには腰パンと書かれていたが、意味がわからない。
この時代の日本は海外と自由取引をしていたらしい。うらやましい限りだ。現在のウチの商売にも結びつけたいところだが、本によると今の日本は外国との繋がりなど80年前に終っている。鎖国というらしい。
つまり日本は、世界から利用されるだけ利用され、ついには経済制裁を受け、自ら外国との接触を絶ったとある。
僕は生まれたときから、この鎖国という時代を過ごしているので、全然違和感はなかった。むしろ、鎖国をしなければ、日本は乗っ取られていたと思う。1868年からのわずか約160年間に、一瞬の日本人の気の緩みで、国を危機に陥れたのだ。
その後この国は、次から次へと良き昔に戻りつも激動の時代にあったようだ。
2029年(亀田元年)「博多幕府設立」九州初、日本の首都となる。
2030(亀田2年)「侍復古の大号令」発令。
2031年(亀田3年)「帯刀令」発令。(刀を身につけることを義務づける。)
2035年(亀田7年)「結髪令」(国民全員マゲを結う。但し、ハゲと僧侶は免除)
ただ、僕が不満なのは、この身分制度だ。かつて徳川幕府が作ったものを復活させてしまった今の政府には我慢ならない。
しかしこんな不満を口にすればとんでもないことになる。
2045年(明星4年)『町内チクリ組制度』(政府の悪口をチクられたら打ち首)
こんな厳しい法律ができたのも、第2次大戦で米国に負けた日本が属国に甘んじたために、国内の犯罪が西洋化し、武器の密輸入が横行、さらに卑劣な事件が多発したためだと、この本の作者は言っていた。
今の日本は確かに規律は正しくなったが、鎖国してるとはいえ、世界の情報が何もわからいのが残念だ。
2051年(明星10年)「外国語及び外来語禁止令」発令。
この法律ができるまで昔は、薄型受像機のことをテレビと呼んでたらしい。電子温熱機のことを電子レンジ。棒付氷菓子のことをアイスキャンディ。。。等々きりのないほどある。
その他にこの本での中で僕が気を惹いたことがあった。
それは100年以上も前の食べ物で、当時の子供たちが大好きな料理のことだ。『カレーライス』というらしい。写真で見ると、白米の上に半分だけ黄色いあんこのようなものが乗っている。はたしてこんな甘そうなものが、白米と合うのかどうか疑問だ。きっと当時の子供たちは西洋かぶれしていたから、舌の感覚も狂っていたのだろう。
白米に乗せておいしく食べれるのは『無農薬納豆』に決まっているからだ!
2063年(花王8年)「ひき逃げご免諸法度」
これが腹立たしい。武士だけに与えられている特権だ。
侍より身分の低い人間を、自動車でひいても罪にはならない。
うちのおじいちゃんも侍にひき逃げされた。
こんな悪法を廃するには、僕が子供のいない侍の家に養子になって、出世して偉くなるしかない!僕は今日、そう心に決めた。
2081年(花王26年)「博多幕府3代将軍、黒田頼義就任」
幕府はよくこの日本を支えてるとは思うが、世襲による統括もいかがなものかと思う。やっぱり実力のあるものが先頭に立たないと。。
2101年(三菱11年)22世紀突入。僕が生まれるw
この本の年表にこのようならくがきをしてしまったw
それにしてもとてもわかりやすくて良い本だった。
僕の明日からの行動は、どこか養子にしてもらえる武士の家を探すことだ。僕は将来、幕府を変えてやる!
そして。。この日記は絶対、『チクリ組』には見られないように用心しなければ。。
(終わり)