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第5章 山岳地帯の――(前

…登場人物紹介…

リア。 17歳青年。

    母親の名前はアイリ。詳細は不明。

メフェ。リアの竜。

    アイリにも乗られていた。白竜。

フォア。17歳女。

    一人称『ボク』の不思議な人物。竜騎士というランクを持ち、竜を駆るのが上手い。

トレス。リアのパートナー。結構な猫かぶり。

カイ。 トレスの竜。黒竜である。

…5…



  


 山岳地帯はリアの前に広がっていた。長く長く続いていた。



「ゴールは何処?」

 一番最初に口を開いたのはリア。山岳地帯の谷は竜の谷よりも底が深い。

 普通なら深いほうが怖い・・・がリアは知っていた。谷は深いほど怪我を負う心配が無く、すぐに復帰できるという点があるからだ。

 比べて浅ければ浅いほど地面にぶつかり怪我を負う心配が高く、悪ければ死をも招く。

「ここから20キロ先に1本だけ木が在る。そこがゴールだ」


「木?」

 疑問符がいくらでも付きそうな答えだった。ここは水分が蒸発しきった山。当然、木どころか雑草すら生えていない。運が悪ければ崩れて落ちそうだった。

「そうだ。そこに1本だけ在る」

 トレスの瞳はいたって真摯だった。疑いようはまったくない。


 次にリアの頭を掠めたのは距離。

 20キロ・・・フォアとはたったの500メートルだ。桁が違う。

 もともと体力が少ないリアにとってはかなり長い距離。

『悪戦苦闘』

 リアにぴったりの状態だった。

 

 それともう一つ。黒竜の強さだった。頭が良ければ乗り手が少し外しても上手く乗れるかもしれないという点があった。

 ただしリアは知識が不足していたのでそれすらも本当か分からなかった。


「ギャォ〜」

 メフェの声。リアは感じ取る。メフェが自分を心配していることを。

(そうだ・・・乗り手がこういう気持ちだと竜はもっと不安になる。母さんがいつも言っていたな)


 

 リアの瞳が変わった。

 勝機に満ちた瞳。

(負けない)


 ―――――が

リアはとてもアホウだった。そんなことは単細胞のリアには知るよしも、知るわけも無い内容だったが。

            *

 

「じゃあ行くぞ」

「いつでも。僕は負けない!!!」

 リアはやる気満々・・・まさにそんなかんじだった。


「レディー」

 緊張感が高まる。最高潮に達する直前




「スタート!!!!!」




と言う声と共に煙幕がリアの目を包む。メフェも同様。

「何だコレ?!!!」

 煙が晴れた時、トレスとカイはいなかった。

「してやられた」と実感するよしもなく、行く末に一人と一匹は戸惑っていた。

 リアがアホウだった理由はこれだ。



山岳地帯のような広いところに方位も分からず進むなんて



 ゆいいつ目印だったトレスたちはもう見えなくて。下にいるとすれば追いかけてもまちがっていればかなり差がつく。

 とはいえ無謀に進んで逆の方向に進んでいたという理由は通じるわけも無い。どうせこれも仕組まれたのだから。

(くっ・・・どうすれば・・・・・・・)

 リアは悩みに悩んだ。が解決策がそうも簡単に浮かぶわけは無くて。

「ギャオ〜」

 メフェの声が届いた。そして気付く。50メートル先にウェーブがあるということを。

(ラッキー)

 指を鳴らす。かすれたヘタクソな音。



 そこで単純かつ明快な解決策にきづいた。高度を高く高くしていけば木が見えるかもしれない。リアは視力がいいほうである。さすがにキロメートルは無理があるけれど。けれどメフェは黒竜には劣るだろうが頭もいいほうである。メフェに見つけてもらえばいいだけのことだった。

 ウェーブに向かって跳んだ。リアの勘が上手く上昇気流をつかむ。一瞬で高度は600。ただしそこでは終わらない。終えられない。次なる上昇気流を見つける。

 

             *


トレスは内心自分に呆れていた。

 何故あんなヤツに作戦を使ったのか。そこまで速いやつではないだろう。

 そう思って。所詮運良く方角があっていても不安を煽ってしまい止まって違う方向に進む。これで終わりだ。

 そして重い目蓋をあげた。

「そろそろ進まないとな」

 黒竜に跨り地を蹴る。まだレースは始まったばかり。とでもいうべきか。





 トレスはカイに黄色の布をかぶせた。大きさはざっと12メートルぐらいの正方形。高さは特に無く、薄い。上空から少しでもリアから見づらくするためにあしらえた――・・・が正しい説明だろうか。



 そして飛び立った。高度は徐々に上がる。ただしそこまで上げない。ばれるという可能性も少しだけ考慮。


対するリア。


           


「うわ!!!こんなに上がったの始めてかもしれない!!!!」

舌を噛みそうになりながらも感想を言った。高度は1000メートル。少し寒くなってきた程度だ。

「メフェ。ゆっくり旋回して。遠くに点でもいい。緑が見えない??」

 メフェはゆっくり旋回をした。結果は



「ギャォ〜」

そこらへんにいる人ならばいつも通りで分かるはずも無く、逆ギレを犯してしまう人もいそうだが(可能性は0に等しいが)、その微妙な後味の悪いような声にリアは判断。






「もう少し・・・上か・・・・・はぁ」

 深い溜め息をついた。現在6個目の溜め息だ。サーマルに乗ったのは6個。

上手く乗れてはいるのだが目当てのものが見つからない。サーマルに乗るため少しづつ拠点を離れつつある。乗るためには仕方ないのだがそれが不安になって来る。




                 *


「ふぁ〜あ〜ぁ〜あ〜」

 どでかい欠伸をかますのは光をはねかえすような青い長髪の・・・青年・・・だろうか。特徴の象徴はそのタレ目だ。どこでも寝れそうな瞳。

「ん〜〜〜〜?」

 青い髪の青年は目をこらした。ずっと先に――といえども本当にかなりの距離に――白い点。竜を見つけた。


「あれ。おかしい・・・わけはないけど。何で白竜がここにいるんだ?っかし〜な」

 わずかに首をかしげた。そして隣に居る赤竜に向く。

「レイドも見えるか〜?」

 レイドと呼ばれた竜はうなずいた。しっかりと。

「じゃあ本物ってわけね・・・。いる理由が気になるんだけどここにいるのは大抵レースの練習に来てるやつだもんなぁ・・・」


 そういうと、近くにあるリンゴのなっていないリンゴの木の根元に寝そべる。

「まだ着きそうにないし。一眠りしますか〜」

 青年は深い眠りについた。




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