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第2章 初戦

…2…



 リアはメフェの翼の付け根辺りに掴まるのが常。当然背中に乗っている。

 対してフォア。

 フォアはかなり危ない体勢、リアからしてみたら。フォアは竜の背中に乗っているが、横向きに乗っていた。

「何その乗り方。ボク・・・なめられてたりする?」

 少し怒りが混じっている嫌味を放つリア。

「だってリアは初心者同然でしょ?相手は一流の竜騎士だし。手加減だよ」

 さらりと言い放ったフォア。リアは怒り爆発、メフェは当然呆れ気味。


「レディ〜ご〜ぅ」

 気の抜けたスタートの声。リアとメフェは勢いよく飛び上がった。



…………が



 すぐ隣をフォアとステラが通り過ぎた。あっという間に。風のごとく。

「じゃネェ〜」

 手を振りながら余裕を示して。

「!!!!!!!!!!!!!!!」

 リアの頭に怒りの象徴が。けれどここで慌てたら思うツボだ。

「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜」

(落ち着け落ち着け) 

 リアは深呼吸をして落ち着かせる。


「!!!!!ャた!!」

 リアは小さく指を鳴らした。上手く鳴るかはともかく。

(あそこにサーマル(熱上昇気流のこと)がある!!)

 サーマルに入れれば一気に上へ上がることができ、下降しながらスピードが付けれられる。それは今100メートル近く先に。

 ただし当然それをフォアが見逃すはずも無く。


フォアが昇る。


(急がないと!!!)

 気持ちがリアをドンドン急かす。


それが一番無様な行動。

気持ちに負けて本筋を外す。

急かす気持ちがヒートアップ。

いつも感じていた風の気持ちよさが伝わらない。


         *


(あいつも同じ。か)

 フォアは思う。呟くように。後ろのリアに向かって。

(所詮はそういうので急かされて本末転倒・みたいな)

 フォアはこうやって勝負を挑み挑まれて毎回結末がコレだった。

 こういう状態にいつも持ち込んで、相手は急いで外して終わり。

 大抵これを勝負として扱うヤツは常にそうだった。


      (絶望

          それが今の気持ちの分かりやすい表現かも)

          



「ギャォ〜!!!!!」

 メフェが唸った。

「わわわわ何?!!!メフェ!!!!!!!」

 リアはバランスを崩した。一瞬両手が翼から離れたが持ち直した。

「ギャギャギャギャォ〜!!!!!!」

 何を言っているか全く分からなかったが、なんとなく分かった気がする。

「そうだ・・・落ち着かないとね。メフェ、ありがと」

(いつものペースでいけば大丈夫)


 飛空の重要なポイントは

 1にできるだけ騎士の体重は軽く、ただし風圧には耐えられる程度に。

 2にできるだけ安定した体勢を保ち続けること。

 3にサーマル、ウェーブ(上昇気流と下降気流がある所)の場所を見つける技術を持つこと。


 4にドラゴンとの信頼関係を高めること。

 5にあせらず自分のペースで行く事。ドラゴン騎士共に体力を保ち続けること。




(自分のペースで行くんだ。体力がボクは少ないんだから)

 フォアは空を駆けていく。フォアとゴールまではあと100メートル程度しかない。

 対してリアはあと300メートルはあった。サーマルは目の前。乗れなかったら更にタイムは離れる。どれだけ離されようが自分のペースで行けば。




ゴールには最速で行ける。



 リアは少しだけスピードを落とした。サーマルに上手く乗れるように。

 サーマルに乗ることに何も問題などは無いが乗り切った後に極度の反動が押し寄せられる。スピードがついていればついているほど反動は高くなり、バランスを崩す確立は高まる。遅すぎても同じ結果になるが。



 (このペースが丁度いい。これなら外さない!!!)

 サーマルに突っ込む。恐れは無い。

 サーマルに乗った気分は最高。

 自分が空のずっと先まで行ける気がした。

 けれどそれは突然止まることであって。


 反動。


 リアはメフェの右の翼を軽く引く。重心は後ろから前へ。バランスに支障は全く無かった。

 ところがゴールまであと150メートル。フォアはゴールに着地。ふわりと蝶のように軽く。


 けれどまだ自分は終わっていない。気を引き締めて下降。もうサーマルはないから速度を残り50メートルのあたりまで付けて50メートルの辺りから速度を落とす。

 スピードを付けて下降。

 スピードを落として下降。

 落ち着いて着地。


初戦が終わった。




          *


「お疲れ」

 リアの頭にタオルが置かれた。不思議と苛立ちはなかった。かけられた相手に負けたと言うのに。

「………強いですね」

 心のそこで思ったことを単純に口に出す。

「敬語」

「え?」

「別に敬語はいらないよ。敬語使われるの苦手。使うのもだけど」

「ン・・・分かった」

 素直に頷く。その時メフェとステラはイロイロと語り合っていた。当然2人には分からなかったが。


「そろそろリシア国に行かないと。ステラ、お話は終わりにして」

 ステラはメフェから離れて少し体勢をおとす。

もう一度だけ、滑空をして、リシアへ。


          


「待ってて。上に伝えてくる」

 そう言うとフォアは城門の中へと進んだ。扉が閉まった。

「キュー」

 やたら可愛らしい声をステラが出して、手招き(?)をする。ついてきて欲しいようだ。


          


「ヶフッ・・・・・・」

 そこはほこりだらけ・・・土埃とわらがある所だった。

 近くには人の家が1軒。その人の敷地内だろうか?

「すてら〜!!!!!!!!!」

 60代ぐらいの男性が出てきた。・・・妙にでかい腹だった。チャームポイントというのだろうか。

「キュー」

「ん?そこにいるのは誰だぁ???」

 嫌味っぽいセリフにも聞こえたが実際にはそんなものは含んでいなかった。

「うぉ?!!!!!白竜じゃねェ〜ヵ!!!!!!!!!!!」

 途端に60代男性の目が輝いた。

 リアは少したじろぐ。変な人には見えないけど・・・



「レゼ爺。残念ながら今日は両方女の子じゃないよ」

フォアが敷地内へ。

「おぉ!!!フォアじゃあないかぁ!!!!!!」

 レゼ爺はフォアに向かってダイブ・・・・顔に足跡。

「相変わらず冷たいのぉ〜」

「これからそのメフェっていう白竜をお願い。任せた」

「おぅよ!!!任せろ!」

 そのコトバには自信が満ちていた。

「待って・・・メフェを預ける・・・ワケ?!!!!」

 リアの目は真ん丸に見開かれていた。




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