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第1章 プロローグ

…1… 




 そこに居たのは一人の少年と大人の女性。

 少年が大人の女性に言った。

 

「母さん。ボクもいつかドラゴンレース。でる!」


「はい。空で待ってるわ」

 大人の女性―少年の母親は笑顔で笑った。

 これが6歳の少年とその母が最後に交わした言葉。少年の頭にはこれが濃く刻まれていた。

 今、その少年は14歳。

「母さん――――」


 少年が呟く。


「母さん――――」


 母はもういない。


「母さん――――」


 涙は出ない。


「母さん――――」


 声は虚空に響く。


 

「ボクはソラの上に行くよ」

少年は決意するように呟く。その呟きは脆くて危ないけれど、どこか頑丈な呟きだった。




 少し前の砂のお城のような儚げな感じはもう無かった。

 あるのは決意に満ちた顔。

「メフェと一緒に。ソラの上に」

 

 メフェと呼ばれた竜は小さく『ギャォ〜』と啼いた。

 少年――――『リア』は返すように軽く笑った。

 




ここは空の上とは程遠い。


奈落の底。


           *


 今、リアとメフェは竜の谷に居た。詳しくはもう主が居ない廃墟。廃墟ではないが。

 此処にいたのは『赤竜』。一番多い種類でドラゴンレースに出るのには主にこれが多い。絶対に乗らないのは『黒竜』。頭がいいせいで、よく暴れる。制御に耐えられないワケだ。

 一番珍しいのはメフェの種。『白竜』だ。かなり貴重な種類で、世界に30匹もいないと言われているし、事実、白竜に乗ってレースに出たのはリアの母親、『アイリ』だけだ。乗ったのは当然メフェ。


「メフェ。スリアに行こう」

 スリアというのはリアが育った場所。詳細としては7才まで育ったトコロ。

「ギャォ〜」

 リアは白竜にまたがる。跳ぶ。跳ねるように。

 ツバサを広げる。

 仰ぐ。

 風。

 「何度味わってもいい風だ」

 

 風は少し強くなる。

 陸に近づくと共に。

 奈落を出た。

 最初に見えるのは

 ヒカリ。

 太陽のヒカリ。

 「眩しい」

 奈落の底は暗くて

 こわい

 メフェがいたから耐えられただけ。

 一人なら崩落している。

 

 「人間は脆い」


 リアが常に口にしていたコトバ。

 別の言い方をすれば常に述べていた文。高度は上がり続ける。


 「ギャォ〜・・・・」

 歯切れの悪いようなメフェの声。リアは感じ取る。

 「やっぱり太陽はまぶしいね。日陰に行こうか」

 方向転換。

 大きい木の下。そこにいたのは赤竜と少女と女性の間の彼女。

 「あ・・・先客。ちがうとこ探そ・・・・」

 タイミングばっちり。彼女は目を覚ました。

 目を見張る。

「白い瞳・・・?白竜??????」

 彼女の視線はメフェを向いていた。が・もう、リアとメフェは逃げられない。



「白い瞳………『アイリ』の竜??」

 『彼女』はメフェを凝視。視線は少し宙を浮いて―…リアへと。

「紅い瞳………?『アイリ』の息………子??」

「うん。そう」

 リアは答えた。率直に。それは今すぐこの場から逃げたい。当然叶わないが。

「じゃあ『リア・ウェイル』?」

「うん。そう」

 リアの答えは変わらない。変えようがないのは事実。

 

「そう…リア。僕は『フォア・シェル』。スリアの竜騎士」

「えあ?」

 リアは声を上げた。その妙な声にリアとフォア。2人とも驚く。ついでに1匹も。

「ちょっと待って………君、え〜とフォアは男なの?女なの?」

「女でしょ。当然」

「それじゃおかしいって。さっきフォアは『僕』って言ったじゃん。『僕』は男の一人称だよ」

「仕方ないって。親に男として育てられたんだし」


『男として育てられた』

 そのコトバはリアに少なからず影響を与えた。男として育てられた。親に好き勝手にされていたということ。

 当然。驚く。


「スリアに、入国希望?」

突然の質問。当然「うん。入国希望」と答える。

「じゃあ、その竜に乗って行くの?」

「うん。そのつもり」

「じゃあ少しは腕が立つってこと?」

「少しはそう思うけど」

歯切れの悪い返事。それもそうだ。レースとかやったことなどない。


「じゃあ少し力試ししよ。国境までは少し無理があるから・・・あそこに見える旗が見える?あれはスリアまであと500メートルの場所。そこがゴール」

「分かった。あそこまで先に行けば勝利ってワケ?」

「勝利・・・って考える考えないは自由だけど。さてと」

 リアはメフェに跨った。メフェも少しだけ引き締まる。

「じゃあ行こうか。『ステラ』」

 フォアは軽く近くにいた赤竜、『ステラ』を叩く。そして跨る。


「じゃあ。スタートしようか」

 軽い力だめしの初戦がスタート。




 

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