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魔王様の妹君の侍女は策略家






 執務室を出たサリーは呼吸を整え髪を直し廊下をしっかりとした足取りで歩く。

 途中、幾つもの扉があったが目もくれず、ある目的地へと向かう。


 長い廊下を終えて色とりどりの花が咲く庭園へと出た。

 この庭園はエリザベスの物でありサリーが綺麗にし、魔物を庭師として使っているためいつも綺麗なままである。


 そんな中にサリーは目を細め遠くを見る。

 ふと花とは違うものが動いた。

 ちらりと見ると金色の頭だ。


 確実にエリザベスだと分かった。エリザベスもサリーを見つけたのか、動くのを止めてじっと息を潜めている。


 サリーは声を出した。


「見つけましたわ。魔王様、姉君様」


 途端に盛大な舌打ちと共にエリザベスの脇から魔王様とヴァイオレットが姿を表した。


「何故分かった?」


「信じられないわ」


「・・・」

 

 だってエリザベス様の後を陰湿にまるでストーカーのようにつけまわしているじゃありませんか、なんて言えず心の内にしまっておく。


「あら、エリザベス様はどこかしら?全く見つかりませんね」


 その言葉を瞬時に理解した二人は溜め息をつきながらサリーについて行きながらちらちらと何度もエリザベスが隠れている場所を見た。

 二人は執務室に入れられ、魔王様は自分の椅子に大きな音を立てて座った。


「ちっ、エリザベスを近くで見ていたのに。どうしてくれる!」


「本当よ。あんなに必死に隠れてるエリザベスを間近で見ていたかったのに」


「それより仕事なさって下さい」


 サリーは呆れながら魔王様とヴァイオレットを見つめる。




「おや魔王様、もう見つかったんですか」


 カルシファーが軽く冷やかしながら書類を渡した。


「何故分かったんだ」


「エリザベス様の近くにへばりついているのが魔王様でございましょう」


 まるで虫のような言い方にカチンとくる。


「我は虫ではない」


「分かっておりますよ、魔王様」


 ただの変態でございましょう。

 そんな言葉がサリーの口から発せられることは無かったが目が物語っている。


「・・もう良い」


「では、もう一仕事宜しいでしょうか?」


「なんだ」


「弟君様を連れてきて下さりませんか?」


 お願いというよりは命令口調なのが気になるが今は置いておこう。


「なぜ我が」


「私、こんな広い城を探すなんて嫌でございますもの」


 だからって何故、魔王様を使うのか。そこで優雅に紅茶を飲んでいる宰相か、サリーの作ったお菓子が気にいったのか魔王様の分のお菓子をつまんでいるヴァイオレットを使えばいいものを、何故わざわざ魔王様に尋ねるのか視線を送った。


「だって姉君様や宰相殿でしたら、やる代わりに何か求めてくるでしょう。私、何もお渡しできませんもの」


 それに比べて魔王様でしたら使いやすいですし何もお求めにならないでしょう。


「では、頼みましたよ。見事お見つけになられましたら今日は魔王様にエリザベス様の子守歌の役を譲りましょう。もちろんサリーはその間邪魔を致しませぬ。では」


 と言って扉を出ようとしたが一度振り返り、とんでもない爆弾を落とした。


「あ、魔王様は魔力をお使いにならないでお探し下さいね」


 魔力を使わなかったら、どうやって見つけられるんだ。こんな広い城中を全部探すなんて無謀もいいところだ。

 魔王様の言い分を聞かずに先程の庭園へと向かう。



 だが花に混じって金色の頭が見つからない。


「デフィー」


 サリーは一つ目の庭師を呼んでエリザベスの居場所を聞く。


「おやサリー殿、エリザベス様でしたらガボゼにいらっしゃいますよ」


 その言葉にサリーは庭にある休憩所へと向かった。

 そこには眠っているエリザベスがいた。


 サリーは優しい顔になり起こさないようサリーを抱きかかえ執務室へと戻った。



 執務室にはカルシファーと姉君しかいない。


「あら、魔王様は?」


 エリザベスを起こさないよう小声で話す。


「まだ探してますよ」


 何と言うか、律儀な魔王様だ。

 

 サリーは呆れて苦笑しながら天井へと顔を向ける。


「・・弟君様、いらっしゃるのでしょう」


 その言葉を待っていたように天井から声がする。


「あれ、バレてた?」


「ええ」


 上から降ってきた天井と同化していたヴァリエートは姿を現し、サリーの横に降り立ってエリザベスを受け取った。


「俺が運んでおくよ」


「ありがとうございます」


「何で分かったの」


 エリザベスを優しく抱きながらサリーに尋ねる。


「だって弟君様は獲物を後ろから狙う方でございましょう」


 だから最初から執務室にいてサリーを後ろからつけていたのだ。

 全く、人が悪い。


 「ちぇー、残念・・でもカルシファーに押し倒されてた君は可愛かったよ」


 サリーの耳に息を吹きかけ、真っ赤になるサリーを尻目にヴァイオレットとどちらがエリザベスを運ぶか小声で言い争いながら出ていった。










 




 さて、魔王様だが夜になり誰も探しに来ないことに気づき執務室に戻ると山のような書類が待っていた。

 そしてサリーからの手紙が置いてあった。


『いつもエリザベス様の寝顔を見に来ていらっしゃるのに今日は来れませんね。あ、そうそうエリザベス様が起きてしまうので怒鳴るのは朝にして下さいまし サリー』


 魔王様は怒りにまかせ怒鳴ろうとしたがエリザベスが起きてしまう。

 そのため翌朝まで書類を片づけながら我慢した。


「サリー!!」


 翌朝、いつものように魔王様が叫び、城の者たちが起き出す。

 それが魔界での日課だ。












ガボゼは東屋みたいなものです

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