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魔王様の妹君の侍女は普通じゃない





 とある魔王様の執務室、周りが見たら一目で分かるように魔王様が苛立たしげにしている。


「魔王様、そんなにいらいらしてますとエリザベス様に嫌われてしまいますよ」


 額に青筋をたてて人指し指を机で早いリズムを刻んでいるため、机が悲鳴を上げている。


「遅いっ!」


 只今は休憩タイムだが一向にエリザベスが現れない。

 サリーが来る前は必ず来て笑顔でお茶を淹れてくれたのに最近ではサリーと遊ぶのに夢中で(たま)に忘れるのだった。


「いよいよ兄離れですね」


 魔王様に堂々と言い張るのは魔王様の昔からの友、カルシファーであった。


 カルシファーは紺色の髪と真っ赤な瞳を持っている。

 実は彼、前魔王様の息子とメデューサの子であるため彼は眼鏡をして周りに被害が及ばないようにしている。


「くっ、少し行ってくる」


「あと2分15秒ですよ」


 魔王様は返事をすることなく瞬間移動をして消えた。















 魔王様が見たものとは笑いながらお菓子をほうばるエリザベスと侍女でありながらエリザベスと同席してお茶を淹れてるサリーだった。

 サリーは魔王様に一瞬意識を向けたがすぐにエリザベスと話を再開した。


 気付きながらこの一国の主を、魔王様を無視するとは甚だしい。


「・・・」


 何とも言えない怒りが腹の底から込み上げてくる。

 その殺気に気がついたのかエリザベスが振り向いた。


「お兄様っ!」


 口の中にお菓子を入れながらエリザベスが魔王様へと走っていく。

 魔王様も腕を広げてエリザベスを抱くのを待った。


「エリザベス様、口に物を入れて走るなんてお行儀が悪いですわよ」


 サリーの柔らかい叱責を聞いてエリザベスは止まった。


「ごめんなさい、サリー」


 そして自分の椅子へと下がった。

 あと三歩だったのに、邪魔をしおって。


「魔王様、休憩時間が過ぎますわ。時間を守れない兄君はエリザベス様に示しがつきませんよ。後10秒です」


「だが」


「・・一国の王とあろう方がまさか自分の仕事を放り出してまで休憩したいなどと、まさか仰るわけではございませんよね」


「くっ、ではエリザベス。またな」


「はい、お兄様。お仕事頑張って下さい」


 苦々しい表情をしたまま魔王様は消えた。

 確実にエリザベスがいなかったら不敬罪として魔王様が直々に成敗をして灰も残さぬようにしていただろう。

 だがサリーは普通の侍女では無かった。

















「くそ、サリーめ!我とエリザベスの中を邪魔しおって」


「はいはい、魔王様。仕事しちゃって下さい。仕事が終わったらエリザベス様に構ってもらっていいですから」


 魔王様が怒りに任せて机を叩くと机は見るも無惨に粉砕された。

 カルシファーは溜息をついて机を復元する。

 最近、この机を直してばかりだ。こうなれば毎日もろい机を直すよりは職人に頑丈な机を作ってもらった方が早いかもしれない。

 


 再度、深い溜息をつきながらエリザベスの侍女を思い浮かべる。

 カルシファーはサリーに日に何度も会うが問題など全く見せない。


「あらカルシファー様、おはようございます。私が育てている花が咲いたのですが宜しければどうぞ」


 そう今朝も挨拶して薄紅色の小さな花をくれた。

 魔王様に言っていないが腐らないよう呪文をかけて、それはカルシファーの胸元に入れてある。カルシファーは裏なく接しられたのは初めてで最初の頃は戸惑った。

 皆、自分に近づくのは自分の寵愛を狙っているか、はたまた魔王様に近づくためだったからだ。


 まあ、魔王様に取り入ろうとする者はあまりいなかったが。

 何しろ魔王様はエリザベスに出会う前までは無表情に、何も関心が無いように寝室に勝手に入った女たちを殺していた。



 だから彼女は新鮮だったのだ。

 

 だが魔王様には好戦的だと聞いた。

 たかが人間でありながら命知らずな行為だ。

 だが彼女の魔力は魔王様に劣らない程なので大丈夫だとは思うが。


「あいつらを呼べ」


 あいつらというのは魔王様の姉君と弟君だ。

 二人ともエリザベスを溺愛している。

 そのためサリーを引き離してくれると期待しているのだ。


「・・はい」


 もっと違うことで呼べと出かかったが飲み込んだ。

 やっと嫉妬という感情を覚えたのだ。

 エリザベスが生まれる前は魔界に相応しいほどの残忍さと冷徹さを持っていただけで何の表情も無かったがエリザベスが来てからは初めて愛しいという気持ちが分かり、小さき命を守ることを知った。


 更にサリーが来ると怒りを覚えたがエリザベスのために自制をして、今は嫉妬という感情が芽生えはじめている。

 サリーが来てからは悪い感情ばかり芽生えているのだが何はともあれ何を考えていたか分からない魔王様の感情が増えたことは喜ばしいことだと思い伝書竜の脚に文をくくりつけた。















伝書鳩ならぬ伝書竜・・

きっと鳩くらいの大きさなんでしょうね

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