魔王様の妹君と侍女と苦悩SIDE魔王様
頑張って書いたけれど、まさかの短さ
魔王は最近不快感と喪失感に襲われている。けれども、それが何故起きるのか分からない。そのような感情を今まで抱いたことなど無かったのに。
「魔王様、エリザベス様はどちらに?」
「魔王様、お早うございます」
何だ、何だと言うのだ。
いつも使用人は魔王を恐れて口も開かずに目も合わせない。しまいには魔王が近づいただけで失神する者もいるというのに。
そう、あの金髪の人と魔が混ざった子供と生意気な人間の女に会ってから何かが違う。直ぐに魔法陣で逃げたが、最後の縋る小さな手を見て心がざわついた。
おかしい、魔王の心は凍っていて何にも心動かされたことなど無いのに。
魔王の苛立ちを感じとったのか、使用人達は魔王に近寄ることなど無くなった。側にいるのは昔からいる宰相でもあるカルシファーと自分より先に生まれたヴァイオレットだけ。
しかし疑問が脳裏を掠める。姉だからと言ってヴァイオレットと此処まで気軽な仲だっただろうか。使用人達が度々口に出すエリザベスとは誰なのだ。それに最近、2人の様子もおかしい。何かに苛立ち焦り、そして何かで発散している。
勿論、その感情も自分が抱えていることが分かる。しかし、その理解できぬ苛立ちを紛らわせようと徘徊するのだが、ふと金色の髪をした女や男を見つけると浮き立つ。性別など構わない、ただ金髪の髪を見るだけで何かを埋めるようにその者で満たす。詰って食んで血を啜って。それでも、この感情は拭えない。ただ金髪の者を見ると安堵する自分がいるのを感じて、それを貪る。
逆に自分の姿を鏡で見ると、酷く不快に感じる。無表情な顔が返してくるが生意気そうな黒い瞳、艶やかな黒い髪、それ以上見ていたくなくて城中の鏡を叩き潰す。自分の顔だというのに、この顔を潰したくなる。
足音を鳴らして部屋に戻ると円らな瞳をした熊が寝室のベッドに腰かけていた。
何故、自分がこのような物を持っているか分からなく熊を握り潰す。しかし何か綿が入っているらしい人形は顔をひしゃげただけで、直ぐに戻る。ふてぶてしい態度に眉が寄るが別に相手は生きている訳でもなく害も無い。何故か壊す気にもならずにそのままベッドに捨て置いた。
エリザベス、その名に何かを思い出しそうになるが何かに邪魔されて霧散する。それが更に魔王を焦らせる。
「何だと言うのだ」
それに対して歯がゆい。この感情を何と言うかも分からない。
ちょw
どんだけサリー嫌われているの?