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魔王様の妹君と侍女と苦悩SIDEヴァイオレット

みじかっ!!






 ヴァイオレットは訳も分からない苛立ちを隠せないでいた。

 何かを忘れている、それは確かなのに何を忘れているのが分からない。人間の血で真っ赤に染めた爪を噛み、自分の机に座る。


「ああ、いらいらするわ。いったいどういうこと」


 その苛立ちは魔王様が住む城行った時から続くもの。そもそも何故疎遠である魔王様の所に行ったのか。

 もちろん魔王様はヴァイオレットの弟。しかし弟と言っても魔王様は魔王様なのだ。恐怖の対象でしかない城にどうして行ったのか。




 気分を変えようと服を変える。こういう時は身の回りから変えるのがいいと言っていた。


 ----誰が。

 誰が言っていたのか、ふと首を傾げる。

 衣装棚を開けると色とりどりの服が並んでいる。ヴァイオレットは原色に近い色の服が好きなのでここにピンクや水色の物などない。あるのは青や赤など目に痛い程の色。

 だが数ある服の前にはその色達と同じ小さな服がある。どう見ても自分が着れる品物ではない。ならば何故あるのか。それは子供のサイズでヴァイオレットの服とお揃いのデザインだ。

 ヴァイオレットは容姿の整った執事悪魔を呼び出し、それを問い質す。


「エリザベス様のために造られたのでしょう」


 そう不思議そうに返された。




「何なの、この気持ち」


 椅子にどっかりと座りこんで机の引き出しを開ける。整理された中からコロンと人形が踊り出た。

 質素な侍女の服に身を包んだ黒髪の人形はふてぶてしく笑っている。その顔に更に苛立たしさが募る。だがその人形は薄汚れ、しかも所々切れている。ヴァイオレットは美しい物にしか興味がないのにどうしてこんな薄汚れた物を持っているのか。ヴァイオレットは手にした人形を捨てようと思いゴミ箱に入れようとしたが手が止まる。

 どうして捨てないのか。

 自分の気持ちも表現できず、何に苛立っているのかも分からない。



 だからヴァイオレットは自分の執務室を出て魔王城へと飛び立った。この感情を消し拭ってくれるのはあの魔王様だけだろう。

 恐怖と畏れの対象でしかない魔王様だけど彼は強い、だからこの気持ちも消してくれるだろう。







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