魔王様の妹君と侍女と古語
サリーは別に手を払われたくらいで何とも思わないのだが周りは違う。
「サリー、大丈夫?」
「サリー殿、怪我はないか」
「ちっ、そのまま殺されれば良かったのに」
エリザベスとカルシファーからは心配の言葉をもらったのにヴァイオレットからは恨み言を言われた。
「大丈夫ですわ。私、ヴァイオレット様よりは長生きしたいですから」
エリザベスを安心させるように言ってヴァイオレットに反撃する。大人しくやられるのは性に合わないのだ。
「ふん」
ヴァイオレットはそっぽを向いて、今にも零れ落ちそうな胸の下で腕を組んだ。そのたわわな胸は何で出来ている、あ、脂肪ですね。
そんなことを考えていると般若の顔で見られる。なぜ自分の思考は分かってしまうのだろう、そこが疑問だ。
以前にも似たようなことがあった気がするが気のせいだろう。
「まあ、取り敢えず出てきたらどうです?その籠が好きと言うのなら構いませんが」
「人間に指図される覚えはない」
「指図ではなく提案ですが」
意外に低い声の女にサリーは籠の扉を開けて待つ。
すると女はゆっくりと四つん這いで這ってきた。どうやら、ずっと同じ体勢だったため筋肉が強張っているらしい。
なんて強情だろう、とサリーは思いながらエリザベスをイシュバリツィーアリツァイの近くにいるようにさせる。
この女が何かをしたとしても人間界で最強だった魔法使いの隣は安心だろう。
そして一人でサリーは女と向き合う。灰色の髪は顎で整っていて、細い身体がより幼さを醸し出す。
「名前は何と言うのです?」
「・・・」
「では、名無しの権兵衛助太郎と呼びましょう」
「アッシュ」
さすがに名無しの権兵衛太郎は嫌だったのか自らの名前を述べた。
周りの人々は皆、サリーの提示した名前にセンスがないと思ったが口にはしなかった。
「ではアッシュ、これから身体を洗いましょう」
だがアッシュは馬鹿にしたように唇の端を上げると、籠から出て背中から生えた黒い翼を羽ばたかせ、一気に空へと舞い上がった。
そして何かの詞を低い声で言っている。
「まさか古語?」
カルシファーが驚いて強い風が吹く中、眼鏡を押さえながら上を見る。古語はとっくの昔に廃れた呪術であったはずだ。
まさか使える者がいようとは。しかも相手はこんなにも小さい。
「魔王様」
サリーは魔王様を見るが魔王様は自分に呪文をかけるアッシュを見ているだけだ。
「魔王様、自分がいくらお強いからと言っても、わざわざ自分から呪いを受ける方がおられますか」
サリーが髪を押さえながら、腕を組んでいる魔王様を叱咤するが魔王様は口元を歪めて笑っているだけだ。
「さては、あの商人。臣が仕向けた者だな」
そして部屋が一面、光ったと思ったら風が止んでいた。
GW♪
わははーい、お家でひっきーだぁい
姉と弟の名前が近くて間違えた・・・しっかりしようよ自分