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魔王様の妹君と侍女とレッスン





 清潔な包帯を巻き終わった後、イシュバリツィーアリツァイは無表情なサリーに向き直る。


「サリー殿、わざわざありがとうございます」


 イシュバリツィーアリツァイがお礼を言うもの、サリーの態度は素っ気ない。


「エリザベス様のためですから」


 腐った肉、それも膿爛れている赤黒い肌を見るのは年頃の乙女には失神ものだが生憎、サリーは年頃なんぞ過ぎている。

 素晴らしい大人の対応が出来るお年頃だ。


「サリー、イシューとのお話は終わった?」


 両腕に溢れんばかりの色とりどりの花を抱えたエリザベスが二人に向かって駆けてきた。

 サリーはそれを受け止めて、ぐるりと回った。


「エリザベス様、転んでしまうでしょう」


「ごめんなさいサリー」


 ちっとも悪びれていないエリザベスにサリーは一緒に笑いながら花を受け取った。


「あらイシュー、包帯が綺麗になったのね」


「ええ、サリー殿に取り替えてもらったのですよ」


「さあ、エリザベス様、その花は少し置いておいて魔法の練習をしましょう」


 サリーが手を叩いてイシュバリツィーアリツァイを見てエリザベスに教えるよう促す。

 イシュバリツィーアリツァイは重たい腰を上げ、エリザベスと視線を合わせるために屈んだ。


「いいですかエリザベス様。この世界は木・火・土・金・水で出来ています」


 地面に五角形を書いてエリザベスに分かるように絵を付け足す。


「人はこの中の一つを持っています」


「絶対に一つなの?」


「いえ、中には二つや三つ持っている人がいました。しかし、それら全ての力を自分の物にするのは難しく、その力に自分が呑まれてしまいます」


 まさしく自分がそうだと自嘲したくなったがエリザベスに聞かせる話ではないし、己の力を過信し過ぎていた自分が悪い。まさしく自業自得だ。


「では今日はエリザベス様がどんな属性を持つか調べましょう」


 そう言って、厨房から拝借してきたグラスに水を入れて懐から出したキラキラとする粉を混ぜた。


「エリザベス様はグラスを持っていて下さるだけで分かります」


 エリザベスは言われた通りにぎゅっとグラスを掴んで水面を見る。


 すると(たちま)ち色が虹色に変わる。

 エリザベスは綺麗と瞳を輝かせて見ているがイシュバリツィーアリツァイは驚きを隠せないでいた。


「なんと、これは」


「イシュー、どうしたの?」


 グラスを傾けながらエリザベスがきょとんとしている。


「今まで125年も生きていたが全ての属性を持つ方を見たのは初めてです」


 興奮が収まらないようで頬が上気している、といっても見えないが。


「それって凄いの?」


「ええ」


 まだ今一分かっていないエリザベスだがイシュバリツィーアリツァイが喜んでいるので自分も喜んだ。


「さすがエリザベス様、精霊にも愛されていますね」


 サリーがさらりと言ってのけた。

 イシュバリツィーアリツァイも気づいていた。

 エリザベスは精霊に愛されている。ここは魔界のため近寄る精霊などいないのだがエリザベスに惹かれて小さな弱々しい精霊が一つまた一つと集まっている。

 力が弱すぎるためエリザベスには感じることしか出来ないが後一年も経たない内に姿も見え、使役することが出来るだろう。

 

 だが何故、人間であるサリーが精霊を見ることが出来るのか、エリザベスと話している若い女性を見る。

 視線を感じたのかサリーが目を上げるとイシュバリツィーアリツァイと目が合った。


「何か」


「いや、サリー殿は自分の属性を知りたくないのかと」


「私には必要ありませんもの」


 はたして自分が仕える属性を知る必要がないか、それとも魔法自体が必要ないかイシュバリツィーアリツァイには寂しげに微笑んでいる顔からは判断出来なかった。







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