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【イーグルアイ】を持つ男

作者: ひろ
掲載日:2026/11/07

【イーグルアイ】


鳥が上空から下を俯瞰して見るように、広い範囲の全体像を頭の中で処理し、個々の物の位置やその未来の動きまで一度に把握する能力。



***


 俺はイーグルアイを持つ男。俺はこの能力で人生という壮大なゲームに勝利し続けている。




 朝、俺は目覚めるとトイレに向かった。廊下の前には姉二人、同じくトイレに向かっている。俺は瞬時に姉たちの動きを把握し、その間を縫い最短距離で一番にトイレに入る。


 「あんた!! ちょっと先に入んないでよ!」


 「早く出なさいよ!! 毎朝もぉ信じらんないんですけどォ!

 え? 大なの? 大なの!? 止めてよねっ!!」


 「マジ最悪!」



 ふっ...また勝利してしまったようだ。




 学校へ向かう途中の駅。


 電車が来る。俺は列の合間を的確にすり抜け一番に乗り込む。

 残り一席、前をゆくご老人のガードも華麗にかわし、迷わずシートへ滑り込む。


 今日も完璧だ。よし寝よう。



 

 学校に到着。

 そして1時間目。いきなり数学の小テストだ。でも俺は慌てない。

 俺のイーグルアイを以てすれば、他人のペンの動きで何を書いているかは瞬時に分かる。まさに一目瞭然だ。


 我孫子...あいつは駄目だ。ペンに迷いがある。

 鎌田...流石学年上位の男だ。スラスラ解いてやがる。おそらくあいつのが正解だ。写させてもらおう。

 斎藤...お前は寝るな。17秒後に先生が来るぞ。




 昼休み。購買で争奪戦を繰り広げる学生諸君を横目に見ながら、苦も無く目当ての惣菜パンをゲットする俺。

 俺のイーグルアイにかかればワゴンセールすら稚戯に等しい。狙った獲物は決して逃さない。




 昼休み明け。

 午後の一発目が体育とは、この学校は何を考えているのだろう。

 とはいえ、授業はサッカーの試合。イーグルアイを持つ俺の本領が、最大限に発揮される競技だ。


 敵味方、そして教師、全ての動きを把握する。

 常に教師の死角に回り、ボールの来ないところをピンポイントに突き、休む。

 何なら全員の隙を突き寝転ぶことも可能だ。自分の能力が恐ろしい。


 汗一つかくことなく試合終了。他の皆、ご苦労だったな。




 そして帰宅。


 夕食のカレーは自分でよそう。

 お玉で一掬い、嫌いなピーマンは一欠片とて入れない。お玉の動きでルーの中の具の配置がどのように変わるのか。俺に見えない未来は無い。




 風呂も一番に入る。


 「あんたねぇ...、ほんっといい加減にしなさいよ!!」


 「あんたの後に入るの、くっそ嫌なんだけど!!

 泡は流してから湯船に浸かれって、何度も言ってるよね!?」


 朝に引き続き、残念だったな姉たちよ。

 悔しかったら、貴方たちもイーグルアイを身につけるが良い。




 そして就寝。


 今日も人生に勝利してしまった。

 明日も、明後日も、これからもずっと俺の勝利は揺るがない。

 俺はこのイーグルアイで、これからも人生に勝利し続けるのだ。




おしまい

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