【イーグルアイ】を持つ男
【イーグルアイ】
鳥が上空から下を俯瞰して見るように、広い範囲の全体像を頭の中で処理し、個々の物の位置やその未来の動きまで一度に把握する能力。
***
俺はイーグルアイを持つ男。俺はこの能力で人生という壮大なゲームに勝利し続けている。
朝、俺は目覚めるとトイレに向かった。廊下の前には姉二人、同じくトイレに向かっている。俺は瞬時に姉たちの動きを把握し、その間を縫い最短距離で一番にトイレに入る。
「あんた!! ちょっと先に入んないでよ!」
「早く出なさいよ!! 毎朝もぉ信じらんないんですけどォ!
え? 大なの? 大なの!? 止めてよねっ!!」
「マジ最悪!」
ふっ...また勝利してしまったようだ。
学校へ向かう途中の駅。
電車が来る。俺は列の合間を的確にすり抜け一番に乗り込む。
残り一席、前をゆくご老人のガードも華麗にかわし、迷わずシートへ滑り込む。
今日も完璧だ。よし寝よう。
学校に到着。
そして1時間目。いきなり数学の小テストだ。でも俺は慌てない。
俺のイーグルアイを以てすれば、他人のペンの動きで何を書いているかは瞬時に分かる。まさに一目瞭然だ。
我孫子...あいつは駄目だ。ペンに迷いがある。
鎌田...流石学年上位の男だ。スラスラ解いてやがる。おそらくあいつのが正解だ。写させてもらおう。
斎藤...お前は寝るな。17秒後に先生が来るぞ。
昼休み。購買で争奪戦を繰り広げる学生諸君を横目に見ながら、苦も無く目当ての惣菜パンをゲットする俺。
俺のイーグルアイにかかればワゴンセールすら稚戯に等しい。狙った獲物は決して逃さない。
昼休み明け。
午後の一発目が体育とは、この学校は何を考えているのだろう。
とはいえ、授業はサッカーの試合。イーグルアイを持つ俺の本領が、最大限に発揮される競技だ。
敵味方、そして教師、全ての動きを把握する。
常に教師の死角に回り、ボールの来ないところをピンポイントに突き、休む。
何なら全員の隙を突き寝転ぶことも可能だ。自分の能力が恐ろしい。
汗一つかくことなく試合終了。他の皆、ご苦労だったな。
そして帰宅。
夕食のカレーは自分でよそう。
お玉で一掬い、嫌いなピーマンは一欠片とて入れない。お玉の動きでルーの中の具の配置がどのように変わるのか。俺に見えない未来は無い。
風呂も一番に入る。
「あんたねぇ...、ほんっといい加減にしなさいよ!!」
「あんたの後に入るの、くっそ嫌なんだけど!!
泡は流してから湯船に浸かれって、何度も言ってるよね!?」
朝に引き続き、残念だったな姉たちよ。
悔しかったら、貴方たちもイーグルアイを身につけるが良い。
そして就寝。
今日も人生に勝利してしまった。
明日も、明後日も、これからもずっと俺の勝利は揺るがない。
俺はこのイーグルアイで、これからも人生に勝利し続けるのだ。
おしまい




